レム睡眠とノンレム睡眠の違い

レム睡眠とノンレム睡眠の違い

この記事のポイント
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脳の活動状態の違い

レム睡眠は脳が覚醒時に近い活発な状態で、ノンレム睡眠は脳が休息する深い眠り

💪

身体の状態の違い

レム睡眠中は筋肉が弛緩し動きが停止、ノンレム睡眠中は適度な筋緊張で寝返りが可能

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睡眠の役割の違い

レム睡眠は記憶と感情の整理、ノンレム睡眠は身体の修復と成長ホルモンの分泌

レム睡眠とノンレム睡眠の脳活動の違い

睡眠中の脳の活動状態は、レム睡眠とノンレム睡眠で大きく異なります。レム睡眠中の脳は覚醒時に近い状態にあり、脳波を観察すると高速で不規則な波形が確認されます。この時間帯には情報の整理や記憶の定着が行われており、夢を見るのも主にレム睡眠中です。レム睡眠は「急速眼球運動」を伴う睡眠であり、英語のRapid Eye Movementの頭文字を取ってREM睡眠と呼ばれています。

参考)睡眠の質を高めるために~(1)睡眠の質とノンレム睡眠・レム睡…


一方、ノンレム睡眠中の脳は比較的穏やかな休息モードに入ります。特に深いノンレム睡眠の段階では、脳波は低速で大きな波形を示す「徐波睡眠」と呼ばれる状態になります。この時間帯は脳のエネルギー消費が抑えられ、身体の修復や成長に専念する重要な時間となっています。

参考)ノンレム睡眠


ノンレム睡眠は睡眠の深さによってステージN1、N2、N3の3段階に分類されており、N1とN2は浅い眠り、N3は深い眠りとされています。眠りについた後に最初に現れるのはノンレム睡眠で、その後レム睡眠へと移行するサイクルを一晩に何度も繰り返します。

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レム睡眠とノンレム睡眠の身体と筋肉の状態

レム睡眠とノンレム睡眠では、身体の動きと筋肉の状態にも明確な違いがあります。レム睡眠中は「筋緊張抑制」という仕組みにより、骨格筋の動きがほぼ停止します。全身の筋肉が弛緩し、体に力が入らない状態になることで、夢の中での行動が実際の身体の動きとして現れないよう防いでいるのです。ただし、眼球の急速な動きや、呼吸・心拍の変動は見られます。

参考)レム睡眠とは?ノンレム睡眠との違いは? 良質な睡眠には2つの…


ノンレム睡眠中は筋肉が適度に緊張しており、寝返りを打つなどの軽い動きが可能です。この時間帯は副交感神経が優位になり、心拍数や呼吸が安定し、体温が低下して代謝が抑制されることで、身体のエネルギーが節約されます。

参考)レム睡眠とノンレム睡眠って何?


興味深いことに、レム睡眠中に筋肉の弛緩状態で脳だけが突然目覚めると、いわゆる「金縛り」(医学的には睡眠麻痺)が起こります。これは意識があるのに身体を動かせない状態で、レム睡眠の特徴的な現象の一つです。

参考)金縛りが起こる原因は?仕組みや解き方・予防法、睡眠環境と睡眠…

レム睡眠の記憶と夢の関係

レム睡眠は記憶の整理と定着において重要な役割を果たしています。脳はレム睡眠中に覚えるべき内容を様々な事柄と関連付けて、大切な記憶として定着させていると考えられています。覚えるべき情報とそれに関連するエピソードが繋がり、ストーリーとして夢に現れるのです。

参考)https://wakawakamagazine.wakasa.jp/2022/02/19/health20220219/


研究によると、学習課題に関する夢を見ることが記憶の増強と関連することが示されており、夢の内容が記憶定着の指標となる可能性が示唆されています。一方で、レム睡眠中には不要な記憶を消去する機能もあることが明らかになっています。名古屋大学の研究では、レム睡眠中に活動するMCH神経が海馬の神経活動を抑制し、記憶を消去していることが発見されました。

参考)夢で記憶が定着、レム睡眠とノンレム睡眠はどちらが重要?|医師…


レム睡眠中の記憶消去メカニズムの詳細(科学技術振興機構)
夢を覚えていないことが多いのは、レム睡眠中は記憶を固定する神経伝達物質があまり出ないため、夢自体を記憶に残すのが難しいからです。私たちが覚えているのは、起きる直前に見た夢のごく一部に過ぎません。​

ノンレム睡眠と成長ホルモン分泌の関係

ノンレム睡眠は身体の修復や成長に不可欠な時間帯です。成長ホルモンの分泌は、主にノンレム睡眠の深い段階であるステージN3(徐波睡眠)で起こります。このステージは睡眠の最初の3分の1に多く現れ、成長ホルモンの分泌がピークに達します。

参考)成長ホルモンと睡眠の関係【子どもの成長と大人の健康】


重要なポイントは、成長ホルモンの分泌は時間帯によるものではなく、睡眠直後に訪れる徐波睡眠と密接な関係があることです。例えば、深夜2時に寝ても眠り始めに深いノンレム睡眠に入れば成長ホルモンは分泌されますが、逆に22時に寝ても眠りが浅ければあまり分泌されません。つまり「何時に寝るか」ではなく「いかに最初に深いノンレム睡眠に入れるか」が重要なのです。

参考)睡眠のゴールデンタイムとは?成長ホルモン分泌のための睡眠方法…


成長ホルモン分泌と睡眠の関係についての詳細解説
ノンレム睡眠中には成長ホルモンの分泌に加えて、細胞の修復や免疫機能の強化が進行し、脳内の老廃物の除去も行われます。これらのプロセスは脳と身体の健康維持に大きく貢献しています。​

レム睡眠とノンレム睡眠の睡眠周期とバランス

レム睡眠とノンレム睡眠は約90分から120分の周期で交互に繰り返されます。ノンレム睡眠が60~80分にわたって出現し、その後レム睡眠が10~30分ほど続いて1つの睡眠周期が終了します。一晩の睡眠でこのサイクルを4~6回繰り返すのが一般的です。

参考)レム睡眠


睡眠の経過とともにレム睡眠とノンレム睡眠の比率は変化します。睡眠前半は深いノンレム睡眠(N3)が多く出現し、朝方になるにしたがってレム睡眠の持続時間が長くなります。一晩の睡眠全体では、レム睡眠は約20%を占めるのが普通です。​
睡眠時間に占めるレム睡眠の割合は年齢によっても変化し、赤ちゃんや子どもの時期は多く、成長とともに減少していきます。成人ではレム睡眠の割合は2割程度で、高齢期に入ると再びレム睡眠の割合が増えてきます。​
質の高い睡眠を得るためには、レム睡眠とノンレム睡眠のどちらか一方を確保すれば良いのではなく、両方の睡眠段階をバランスよく取る必要があります。そのためには、全体の睡眠時間自体を十分に確保することが重要です。​
睡眠不足になると、まずレム睡眠の割合が低下することが知られています。レム睡眠が減ると記憶の整理作業が不十分になり、感情のコントロールがしにくくなったり、認知機能が低下したりする影響が生じると考えられています。​

比較項目 レム睡眠 ノンレム睡眠
脳の状態 覚醒時に近い活発な状態 休息モード、徐波睡眠
筋肉の状態 弛緩し動きがほぼ停止 適度に緊張、寝返り可能
主な役割 記憶と感情の整理 身体の修復、成長ホルモン分泌
眼球運動 急速眼球運動あり なし
鮮明な夢を見やすい 夢は少ない
睡眠段階 単一段階 N1、N2、N3の3段階
一晩の割合 約20% 約80%