骨盤裂離骨折の症状
骨盤裂離骨折の急性期症状
骨盤裂離骨折の典型的な急性期症状は、ダッシュやキック、ジャンプといった爆発的な筋収縮を伴う運動中に生じる突然の激痛なんです。患者さんは骨盤周囲に「ビリッ」「ビシッ」という鋭い痛みを感じ、その場でプレーを続行できなくなるほどの激痛を伴う場合もありますよ。
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特徴的なのは、「パキッ」という破裂音や感覚を認めることがあり、これは骨端線部に裂離骨折が生じた瞬間の感覚として医療従事者が問診で確認すべき重要なポイントです。痛みは動作の継続で増悪し、安静にすると軽減するのが一般的なんですよ。
上前腸骨棘裂離では股関節前側、下前腸骨棘裂離では階段昇降時、坐骨結節裂離では臀部に痛みが局在しやすく、好発部位によって症状の出方が異なります。受傷直後は腫れや皮下出血が生じ、骨片転位が大きい場合は感覚障害や著しい歩行困難に陥ることもあるため、早期診断が不可欠なんです。
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骨盤裂離骨折の好発部位と付着筋の関係
骨盤裂離骨折の好発部位は上前腸骨棘、下前腸骨棘、坐骨結節の3箇所で全体の約90%を占めており、それぞれ付着する筋肉の急激な牽引力が発症機序となっていますよ。
上前腸骨棘裂離は全体の32%を占め、縫工筋と大腿筋膜張筋の急激な収縮によって生じます。縫工筋は股関節から膝をまたぐ長い筋で、股関節と膝の屈曲を担うため、サッカーやランニング時の股関節伸展位からの急激な屈曲動作で損傷しやすいんです。
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下前腸骨棘裂離は最も頻度が高く46%を占め、大腿直筋の急激な収縮が原因なんですよ。大腿直筋は膝の伸展を担う大腿四頭筋のうち股関節と膝関節の双方に付着する筋で、サッカーのキック動作やランニング、ホッケーで好発します。
坐骨結節裂離は12%を占め、ハムストリング筋群の過度な牽引が誘因です。ダッシュやジャンプ動作が多いバスケットボール、バレーボール、陸上短距離で起こりやすく、痛みが軽微で歩行可能な場合もあるため肉離れと誤認されやすく注意が必要なんですよ。
好発部位別の骨癒合年齢は坐骨結節が20~25歳、上前腸骨棘が16~20歳、下前腸骨棘が25歳と異なり、骨端線閉鎖時期の差が受傷年齢や部位の傾向に影響を与えています。
骨盤裂離骨折の診察手順と理学検査
骨盤裂離骨折の診断では、まず問診で痛みの部位、発症状況、スポーツ経験、受傷時の音の有無を詳しく聴取することが重要なんです。どのような動作で痛みが走ったかという受傷機転の確認は、診断の重要な手がかりとなりますよ。
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視診では患者の姿勢や歩行を観察し、痛みの原因と影響を評価します。触診では骨折部位に対応する筋群のストレッチや収縮で痛みが誘発されれば、該当骨端の裂離骨折を強く疑うことができるんですよ。
具体的な理学検査としては、上前腸骨棘裂離では股関節伸展・外転位からの屈曲抵抗テスト、下前腸骨棘裂離では股関節屈曲・膝伸展位での大腿直筋ストレッチテスト、坐骨結節裂離ではハムストリング収縮テストが有用なんです。痛む部位を押して判断する場合もありますが、触診だけでは確定診断が難しいケースも少なくないため、画像検査との組み合わせが必須となりますよ。
歩行時の疼痛評価も重要で、脚を上げる動作や足を前方に振り出す動作で違和感や痛みが強くなる場合は裂離骨折を強く疑い、長時間の立ち仕事や歩行も困難になる程度を評価します。
骨盤裂離骨折の画像診断と鑑別
骨盤裂離骨折の画像診断では、単純X線撮影が初期スクリーニングとして最も重要で、裂離した骨片を確認できますよ。ただし骨片が小さい場合や骨盤の構造上の重なりで映りにくい場合もあり、レントゲンだけでは見落としが生じる可能性があるため注意が必要なんです。
CT検査は骨構造の詳細を3次元的に把握でき、レントゲンで不明瞭な場合に有用なんですよ。骨片の転位量や骨折線の走行を正確に評価でき、手術適応の判断にも役立ちます。
MRI検査は軟部組織の損傷を含めより詳しい情報を得られ、骨髄浮腫の有無なども確認可能です。特にハムストリングスの肉離れとの鑑別に有用で、坐骨結節裂離では痛みが軽微で歩行可能な場合もあるため、MRIによる詳細評価が重要となりますよ。
超音波検査は筋・腱の状態を動的に観察できる利点がありますが、骨折の確定診断よりも補助的な評価として利用されます。損傷した筋・腱の状態把握や骨片との位置関係を把握するのに役立つんですよ。
鑑別診断として、ハムストリング肉離れ、股関節唇損傷、腸腰筋付着部炎、骨端症などを考慮し、病歴と画像所見を総合的に判断することが臨床現場では求められます。
医療従事者向けの診断アルゴリズムとして、大垣中央病院整形外科の資料が詳細な検査手順と評価基準を提示しており参考になります。
骨盤裂離骨折の保存療法と手術適応
骨盤裂離骨折の治療は保存療法が基本で、痛みが和らぐ肢位で安静を保ち、アイシングを約1週間徹底することから開始しますよ。受傷後2~3週で歩行時の痛みがなくなったら歩行を許可しますが、この時点ではスポーツは禁止なんです。
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軽度の骨盤裂離骨折では、通常の生活に戻れるまでに6~8週間程度かかり、骨が自然に治癒するのを待つ方法が選択されます。松葉杖を使って体重がかからないようにし、痛みと腫れを軽減するために骨折部位を冷やすアイシング処置が大切なんですよ。
X線で骨の癒合が確認された場合、ランニングを許可し、受傷後2~3ヵ月でスポーツ復帰が可能となります。成長期の障害であるため、骨の癒合が完了し十分な時間が経過すれば、スポーツ活動に支障が出ることは少なく予後は比較的良好なんです。
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手術適応については一律のガイドラインは存在せず議論がありますが、骨片の転位が15~20mm以上、骨片が大きく偽関節リスクが高い場合、ハイレベルで競技をやっている場合などが手術の選択肢となりますよ。金属スクリューやプレートで骨片を元の位置に固定し、術後は患部を安静に保ち医師の判断に応じて少しずつ可動域訓練を行います。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/nishiseisai/63/3/63_479/_pdf
保存療法では転位が大きい例で半数近くに偽関節が生じた報告があり、骨癒合の過程で異常な骨増生が起こる可能性があってインピンジメント症状を呈する場合があるため、経過観察が重要なんですよ。
骨盤裂離骨折のリハビリテーションとスポーツ復帰基準
骨盤裂離骨折のリハビリテーションは、受傷後1~2週間の安静とアイシングから開始し、松葉杖を使って体重がかからないようにします。通常3週目くらいから歩行が可能になり、その後柔軟性を高めるためのストレッチや関節の動きを伴わないアイソメトリックエクササイズを開始するんですよ。
4~6週目で水中運動やエアロバイク、軽いジョギングを始めます。水中運動は浮力により体重が軽減され、エアロバイクは座位で行うため体重が直接かからず、これらの運動から始めて徐々に体重が負荷となるジョギングに移行していくんです。
急性期では安静を中心に筋肉の軽いストレッチやアイソメトリック筋トレを痛みを引き起こさない範囲で実施し、亜急性期ではウォーキングや軽い荷重運動を取り入れ徐々に可動域を広げていきますよ。回復期ではジョギングや自転車こぎなど骨盤周辺に適度な負荷をかける運動を導入し本格的に筋力強化を図り、復帰期ではスポーツ動作や生活動作を実践的に行い再発予防のためのフォーム指導などを受けます。
スポーツ復帰基準としては、ランニングでは急激なスピードアップやストップは避け徐々にスピードを上げ、サッカーのキック動作も最初は止まったボールを軽く蹴り徐々に強く蹴るようにします。軽いものであれば2~3ヶ月で復帰できるようサポートし、保存療法でのスポーツ復帰は2.5~4か月程度、手術が必要な重症例では6ヶ月程度を要するのが一般的なんですよ。
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再発予防のためには医師の診断をしっかりと受けた上で競技に復帰し、最初の一定期間の安静を維持しないと完全回復の遅れ、再損傷、または慢性症状の発症につながるリスクがあるため注意が必要なんです。
理学療法士による段階的リハビリプログラムの詳細は、剥離骨折専門サイトに部位別・時期別の運動メニューが掲載されていますよ。
時期 | リハビリ内容 | 期間の目安 |
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急性期 | 安静・アイシング・松葉杖歩行 | 1~2週間 |
亜急性期 | ストレッチ・アイソメトリック運動・歩行訓練 | 3~4週間 |
回復期 | 水中運動・エアロバイク・軽いジョギング | 4~6週間 |
復帰期 | スポーツ動作訓練・フォーム指導 | 2~4ヶ月 |
日本整形外科学会の公式資料には、成長期骨盤裂離骨折の基本的な症状と治療方針がまとめられており、医療従事者の初期対応の参考になります。