腰椎分離症の症状と診断
腰椎分離症の特徴的な症状と痛みの出方
腰椎分離症の最も代表的な症状は腰痛であり、スポーツ後や腰を反ったり捻ったりした際に痛みが生じます。安静時には痛みがなく、腰を曲げたり捻ったり、長時間立ち続けたりした際に痛みを感じることが多く、初期症状がみられにくく骨折していても気づきにくい特徴があります。腰痛だけでなく臀部痛や大腿外側の痛みが起こることもあり、長時間の運動のみならず長時間の立位、座位、中腰姿勢でも症状が起こりやすいです。
参考)腰椎分離症とは?原因や治療・予防について解説|症状別コラム|…
分離した骨端には偽関節とよばれる癒合不全な状態や、骨棘とよばれる骨の出っ張りが生じることがあります。偽関節が生じると、偽関節周囲の炎症による腰痛や、むくみ・腫れが神経を圧迫し、神経由来の足の痛みを生じることもあります。腰痛とともに筋肉の張り、臀部や太ももの後ろにかけて広がる痛み、スポーツをすると増悪して休むと改善するというサイクルを繰り返すといった症状が出ます。
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腰椎分離症とは?原因や治療・予防について解説 – なかだ整形外科クリニック
腰椎分離症の運動時の痛みや長時間姿勢保持後の腰痛について詳細な解説があります。
腰椎分離症の診断方法とレントゲン・CT・MRIの役割
腰椎分離症の診断には、レントゲン・CT・MRIが多く用いられています。レントゲン検査は骨の状態を評価するうえで基本的な検査であり、「スコッチテリアの首輪」という首輪をつけている犬のスコッチテリアのように見える特徴的な所見が認められることがあります。しかし、腰椎分離症患者の単純X線写真では終末期の分離症は100%診断可能でしたが、進行期で79%、初期ではわずか23%にとどまり早期診断には単純X線写真のみでは不十分です。
参考)腰椎分離症・分離すべり症|疾患別治療・リハビリテーション|丸…
MRI検査はレントゲンではっきりと見えない筋肉や靭帯、神経などの軟部組織の状態を詳しく調べられる検査です。腰椎分離症においては初期の腰椎分離症を見落としにくいMRIのSTIRという撮影法が重要であり、分離しているところ(椎弓根)の内出血や骨の浮腫などを捉えて早期発見・早期治療を行っていくことが望ましいです。MR Bone ImagingはCTをgolden standardとして検証した結果、陽性的中率と特異度が高い検査であることがわかり、STIRを併用することで感度を補完し、診断精度を向上させることができることが判明しました。
参考)【セルフチェック】腰椎分離症の症状と自己診断ポイント – も…
CT検査はレントゲンと同様に骨の状態を詳しく調べられる検査であり、レントゲンよりも詳細な情報を得られるため、分離した骨の大きさや形、周囲の骨への影響をより正確に把握できます。腰椎分離症の治療方針を決定するためには分離の程度を評価して装具の選択や安静期間を決める必要があり、CTの矢状断像をもとに初期(Ia型、Ib型)、進行期(Ⅱ型)、終末期(Ⅲ型)の4段階の病期に分類して治療方針を決定します。
参考)成長期腰椎分離症におけるMR Bone Imagingの臨床…
成長期腰椎分離症におけるMR Bone Imagingの臨床活用 – キヤノンメディカルシステムズ
MR Bone ImagingとCTの診断精度の比較や病期分類についての詳細なデータが掲載されています。
腰椎分離症の身体検査と診断に有用な検査法
腰椎分離症の身体検査では、以下の2つのテストが重要かつ有用です。Kemp’s testは座位または立位で腰椎を斜め後方に倒し、そのまま回旋を加える検査で、骨折初期の段階ではほぼ全例が陽性となり腰痛が誘発されます。Extension stress testは腰椎伸展動作での疼痛を見る検査です。腰椎伸展・回旋動作で増強する腰痛、棘突起の圧痛があれば分離症を強く疑います。
参考)腰椎分離症、分離すべり症
医療機関での診断では、問診や身体診察、画像検査を行うことで正確な診断を行います。検査の結果が腰椎分離症の場合、痛みの程度や発症時期、患者のライフスタイルに応じて治療の方針を決定します。痛みが強いときにはコルセットを用いて腰を安定させたり、理学療法で筋力を補強したりする方法があり、症状が軽度なら日常生活の姿勢指導や運動療法を中心に進めることもあります。
参考)腰椎分離症の症状チェック|年齢別の特徴と診断 – 足立慶友整…
自己診断だけで対処してしまうリスクとして、本来の原因を見落とし別の疾患が進行する、痛みをこらえて運動を続けることで状態が悪化する、誤ったケアやマッサージで症状が長引くといったことが挙げられます。
診断方法 | 目的 | 特徴 |
---|---|---|
レントゲン撮影 | 骨の形状や亀裂の有無を把握 | 最初に行われる基本的な画像診断で終末期は100%診断可能だが初期は23% |
MRI検査 | 椎間板や軟部組織への影響を詳細に確認 | STIRで早期発見が可能で骨髄浮腫を評価できる |
CT検査 | 骨の細部構造を3次元的に把握 | 病期分類に必須で微細な骨折や変形を立体的にとらえやすい |
徒手検査 | 痛みの部位や動きによる影響を確認し患部を特定 | Kemp’s testとExtension stress testが有用 |
腰椎分離症の鑑別診断と椎間板ヘルニアとの違い
腰椎分離症の鑑別診断としては腰痛を呈する疾患はすべて鑑別の対象となり、分離症と椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などが合併している症例も多くみられます。椎間板ヘルニアは腰痛と、坐骨神経痛と呼ばれる大腿後面から下腿にかけての鋭い痛みで、片側下肢の知覚障害、運動麻痺が起こることがあります。子どもは基本的に腰痛は起こしても神経痛は起こしにくいという特徴があります。
参考)腰椎分離症
腰椎分離症では基本的に椎間板ヘルニアのような足のしびれなどの神経症状を伴うことはありませんが、もししびれなどがあった場合は腰椎分離症ではなく他の疾患を疑います。腰椎分離症をもっていても症状がでないことは多くありレントゲンをとってたまたま見つかったということも多いです。レントゲンやMRI検査で腰椎分離症と診断されても、それが足腰の痛みやシビレの原因になる事は少なく、その多く(約80~90%)は仙腸関節を主とした関節の機能障害が原因です。
腰椎椎間板ヘルニアのおよそ80-85%は自然経過で軽快するといわれており、治療は安静、コルセットの装着、牽引や腰部マッサージなどがあります。痛みが強い場合は鎮痛薬の使用も検討されます。腰椎分離症は腰を反る動作をすると腰の付け根のあたりに痛みが生じるのが特徴的で、圧痛や熱感を伴うこともあります。
参考)腰の症状|羽柴整形外科
椎間板ヘルニアとの鑑別点や神経症状の有無について詳しく解説されています。
腰椎分離症における神経症状と分離すべり症への進行リスク
腰椎分離症の多くは10歳代で起こりますが、両側(左右)分離症の場合は特に、それが原因となって将来的に腰椎が前にずれる「腰椎分離すべり症」に進行していく場合がありますのでさらなる注意が必要です。分離すべり症が脊髄に干渉した場合、足の痛み、足のしびれ、間欠性跛行といった症状が見られる場合があります。これらは脊柱管狭窄症という症状であり、重症化すると激しい痛みを生じたり、排尿や排便に支障が出る場合もあります(馬尾症候群)。
分離した部分の神経が圧迫されると、腰椎分離症(ようついぶんりしょう) │ 村山医療センター
腰椎分離症は大きく初期・進行期・終末期の3つの病期に分類されており、初期と進行期は骨癒合が得られる可能性がありますが、終末期では非常に低いとされています。病期、年齢、患者さんのニーズを十分に話し合い治療方針を決めていきます。重症化してからでは治療が難しくなってしまうため、腰の痛みに加えて足のしびれや痛みなどが見られた場合には、早めに医師へ相談することが重要です。
腰椎分離症の保存療法と骨癒合を目指す治療戦略
腰椎分離症の治療として第一選択となるのが保存療法であり、初期・進行期においては保存療法による骨癒合が期待できます。3ヶ月間の保存療法にて初期の分離症であれば87%の骨癒合を認めたという報告があり、この期間は学校の体育を含めたスポーツ活動の禁止と、作成したコルセットを就寝時以外着用して腰椎を固定します。また適切なリハビリテーションを受ける事が必要となります。
参考)腰椎分離症の原因と治し方|コルセットの着用が必要?|Nクリニ…
安静とコルセットの着用が基本となり、コルセットはおおよそ3カ月ほど使用します。骨癒合の状況を考慮して、適切なタイミングでリハビリテーションを導入します。保存療法3ヶ月の時点で骨癒合の画像評価を行い、骨癒合が不十分であれば安静期間をさらに延長し骨癒合を待つ事もあります。痛みが引いたからといって安静を保たずに運動を再開してしまうと、骨がなかなか治らず時間がかかってしまったり、骨癒合自体が得られなくなってしまうこともあります。
参考)腰椎分離症について
状態にもよりますが、分離部の安静・固定のため硬性コルセットを着用し、体育や部活動などのスポーツを原則休止する必要があります。これらの期間は約3~6ヶ月になることが多く、定期的にMRIやCT撮影をして経過をみていきながらリハビリ等を実施します。子どもが2週間腰痛を訴える場合は、打ち身や捻挫だと思わずにMRIを撮っていただきたいです。
参考)腰椎分離症のリハビリテーション|北戸田ナノ整形外科泌尿器科ク…
初期分離症における87%の骨癒合率や保存療法の具体的な期間について詳細なデータが掲載されています。
腰椎分離症のリハビリテーションとスポーツ復帰プロトコル
リハビリテーションでは、単に腰痛を改善するだけでなく、なぜ腰部への負荷が増大してしまったのかを評価し、患者さん一人一人の問題点を解決できるよう、身体機能(体の硬さや筋力の低下)、不良なスポーツ動作の改善を行っていきます。それにより、分離症発症前よりも高い競技レベルへの復帰を目指していきます。機能改善を図りながら競技復帰を目指す場合においては、脊柱や股関節の可動性の改善、体幹深部筋の強化、体幹深部を意識した動作の獲得を目的にリハビリを行います。
参考)リハビリ室コラム / href=”https://www.yspc-ysmc.jp/column/rehabilitation/rehabili-column-201202.html” target=”_blank”>https://www.yspc-ysmc.jp/column/rehabilitation/rehabili-column-201202.htmllt;span class=href=”https://www.yspc-ysmc.jp/column/rehabilitation/rehabili-column-201202.html” target=”_blank”>https://www.yspc-ysmc.jp/column/rehabilitation/rehabili-column-201202.htmlquot;smallt…
コルセットをして運動休止している間もリハビリは必要であり、できるだけ筋力・体力の低下を抑えるため、分離部に負担のかからない身体作りをして安全にスポーツ復帰するためリハビリはとても重要な役割を果たします。MRIやCTの所見を定期的にチェックしながら、医師と理学療法士で相談し、患者様一人一人の状態にあったリハビリメニューを決めていきます。基本的に治療開始から4週間はスポーツは休止し、少しずつ体育や軽い練習に参加していく方針になります。
骨癒合を目指さないプランでは、脊柱中間位での体幹トレーニング、疼痛が出現する動きを回避、股関節機能の強化、肩甲骨周囲の機能の強化、柔軟性の強化、マニュアルセラピー(必要に応じて)、鎮痛薬(控えめに)といった内容が実施されます。スポーツ復帰後の再発率は26%とされており、長期のコルセットや安静を強いることを防ぐためにも段階的なリハビリテーションが必要になります。
参考)https://www.kikugawa-hosp.jp/wp/wp-content/uploads/2022/12/yobu_rehabilitation_protocol_221228.pdf
保存療法後も骨癒合が得られなかった場合や、診断時点で骨癒合が期待できない場合、あるいは中学、高校の最終学年の最後の試合を控えている場合などでは、患者さんの希望を踏まえて疼痛に応じてリハビリを行い順次スポーツ復帰を目指していきます。保存療法による骨癒合が見込めない場合、神経症状が出て日常生活に支障をきたしている場合には手術を検討し、椎間板変性症やすべり症を合併している場合には椎体固定術を、合併していない場合には分離部修復術を行うのが一般的です。
腰椎分離症の競技復帰までの道のり – 菊川市立総合病院
骨癒合を目指すプランと目指さないプランの詳細なリハビリテーションプロトコルが記載されています。