網膜裂孔・網膜剥離の症状
網膜裂孔における飛蚊症と光視症の特徴
網膜裂孔の初期症状として最も頻繁に見られるのが網膜裂孔・網膜剥離の症状・原因と違い|高須眼科
光視症は、実際には光が存在しない状況でも視界の端に光が一瞬走ったように見える症状です。暗い場所で視線を動かしたときに起こりやすく、稲妻のようにチカチカと見えたり、ピカッと光ったように感じたりします。この症状は硝子体が網膜を引っ張る刺激によって起こるもので、網膜が誤って光と感知するために生じるんですよ。
注目すべき点として、飛蚊症の多くは生理的な加齢現象として発生することもあるため、すべての飛蚊症が網膜裂孔を意味するわけではありません。しかし、急に数が増えたり頻度が高くなったりした場合は、裂孔や網膜剥離の前兆である可能性が高いため、速やかな眼科受診が必要です。
飛蚊症と光視症の両方が同時に現れている場合は特に要注意で、網膜裂孔から網膜剥離への進展リスクが高まっている可能性を示唆しています。
網膜剥離の視野欠損と視力低下の進行パターン
網膜剥離が進行すると、飛蚊症や光視症に加えて視野欠損という重大な症状が現れます。視野の一部が黒く欠け、それが次第に広がってくる様子は、患者さんからは「雲のようなものが見える」「カーテンがかかったように視野全体が暗くなる」と表現されることが多いですね。
参考)網膜裂孔・網膜剥離
網膜はカメラのフィルムに相当する役割を担っているため、網膜剥離が起きると物の見え方が大きく変化します。剥がれた部分では光を感じにくくなり、視野の欠損として自覚されるんです。特に黄斑部まで剥がれると視力が急激に低下し、中心視力に重大な影響を及ぼしますよ。
参考)飛蚊症(網膜剥離の前兆?初期症状?)|藤沢市辻堂の辻堂神台眼…
網膜剥離の進行速度は個人差がありますが、高齢になるほど網膜裂孔から網膜剥離へ進行する時間は短くなる傾向があります。場合によっては、裂孔が生じてから数日で網膜が全部剥がれてしまうこともあるため、早期発見と迅速な対応が極めて重要なんです。
参考)網膜裂孔・網膜剥離の違い・原因は?|福本眼科クリニック
また、網膜が破れる際に血管も損傷し、硝子体出血を引き起こすこともあります。硝子体出血が起こると、突然視界が見えにくくなることがあり、急激な視力低下として患者さんに認識されますね。
参考)網膜剥離の前兆(初期症状)と治療法(治し方)|相模原なかの眼…
網膜裂孔と網膜剥離の症状の違い
網膜裂孔と網膜剥離は連続した病態ですが、症状の現れ方には明確な違いがあります。網膜裂孔の段階では主に飛蚊症と光視症が症状の中心で、視野欠損はまだ認められません。網膜には痛覚がないため痛みはなく、裂孔が開くだけでは自覚症状がほとんどないこともあるんです。
参考)https://www.nichigan.or.jp/public/disease/name.html?pdid=37
一方、網膜剥離まで進行すると、飛蚊症や光視症に加えて視野欠損が出現し、視力低下や見えづらさといった症状が顕著になります。視野の一部が欠けて見えなくなる状態は、網膜剥離の特徴的な症状といえますね。
両者を区別するポイントとして、網膜に孔や裂け目ができている段階に留まるものを「網膜裂孔」、網膜が部分的にでも剥がれているものを「網膜剥離」と区別します。網膜剥離の方が重症度が高く、剥がれた部分では光を感じにくくなるため、より深刻な視覚障害を引き起こすんですよ。
緊急度でいえば網膜剥離の方が高いものの、網膜裂孔を放置していると網膜剥離へと進展するため、いずれも決して放置してはいけない病態です。早期に適切な治療を受ければ、網膜剥離へと進展する前に食い止めることも可能なため、初期症状の段階での診断が極めて重要になります。
網膜裂孔の原因と後部硝子体剥離の関係
網膜裂孔の発生には後部硝子体剥離が深く関与しています。加齢による硝子体の変性が最も多い原因で、年齢を重ねると硝子体が液化してサラサラとした液体に変化し、容積が減少して網膜から剥がれようとするんです。
通常、硝子体は無色透明のゼリー状物質で満たされていますが、加齢とともに徐々に液化が進行します。硝子体の液化が進むと、硝子体があった場所に隙間が生まれ、空洞を作るようになりますよ。この際に硝子体と網膜が癒着していたり、網膜が弱くなっていたりすると、収縮する硝子体に引っ張られて網膜に亀裂ができたり、穴が空くことがあるんです。
参考)網膜剥離-症状や原因、手術について|大阪市港区 よしだ眼科ク…
この現象を後部硝子体剥離といい、加齢変化による生理的なものとされています。一般的には60代前後の方によく見られますが、50歳以降に後部硝子体剥離を起こす人が増える傾向があります。剥がれた硝子体の後部にある「グリア環」などの濁りが飛蚊症として認識されるわけですね。
強度近視も重要な原因因子です。近視が強い場合、眼球が前後に長く、網膜が薄く引き伸ばされている状態のため、通常よりも網膜が脆弱で網膜裂孔を起こしやすくなります。近視が強い目では硝子体の液化現象が早まり、30代や40代といった比較的若い年齢で後部硝子体剥離を起こす人が多いんです。
参考)近視が強い方の網膜剥離対策 – 近視(近眼)や近視進行抑制治…
その他の原因として、眼球への打撲などの外傷、眼科手術後の合併症、ぶどう膜炎などの炎症性疾患も網膜裂孔の原因となることがあります。
参考)網膜裂孔とは
医療従事者が知っておくべき網膜剥離の初期サインと鑑別診断
医療従事者として押さえておくべき網膜剥離の初期サインには、いくつかの重要なポイントがあります。まず、患者さんが「最近、飛蚊症が急に増えた」「光が走って見える」と訴えた場合、網膜裂孔や網膜剥離の可能性を念頭に置く必要があります。
診断には散瞳薬を点眼して瞳孔を広げ、眼底検査を行うことが基本です。散瞳薬の効果が現れるまで30分程度かかり、検査後約5~6時間は散瞳効果が持続するため、患者さんには車の運転ができないことを事前に説明しておく必要がありますよ。
参考)飛蚊症の症状チェック|網膜剥離の違いは?飛蚊症の原因を医師が…
眼底検査では網膜や網膜の血管、視神経乳頭、硝子体などの状態を確認し、原因となった網膜裂孔の位置や数、網膜剥離の範囲などを確認します。必要に応じて眼底写真やOCT(光干渉断層計)などの検査を追加で行うこともあります。
参考)網膜剥離・網膜裂孔|立川市玉川上水駅の眼科|上水眼科クリニッ…
鑑別診断として、裂孔原性網膜剥離と非裂孔原性網膜剥離(牽引性網膜剥離や滲出性網膜剥離)を区別することが重要です。裂孔原性網膜剥離は網膜に孔や裂け目ができることが原因ですが、非裂孔原性網膜剥離は原因や経過が大きく異なり、治療アプローチも変わってきます。
参考)https://www.nichigan.or.jp/public/disease/name.html?pdid=50
また、網膜裂孔が見つかった場合、レーザー治療による予防的処置が可能な段階かどうかを判断することが大切です。網膜裂孔や網膜円孔の段階であればレーザー治療が可能で、約90~97%は網膜剥離の発生を予防できるとされています。
参考)網膜剥離レーザー治療 – ルクスアイクリニック代々木上原
患者さんには、眼を強く押さえたり、こすったり、激しい運動を避けるよう指導し、定期的な経過観察の重要性を説明することが必要です。レーザー治療を行っても、硝子体牽引が強い場合は網膜剥離へ進行してしまうこともあるため、継続的なフォローアップが欠かせません。
参考)http://ueda-clinic-yamashina.jp/ganka/laser-02.shtml
網膜剥離は医学の進歩により予後が改善していますが、発症後数週以内に手術を行えば矯正視力が1.0近くまで改善することもある一方、時間が経過した網膜剥離は再発しやすく視力予後が不良になる傾向があります。そのため、初期症状の段階での早期発見と迅速な対応が患者さんの視力予後を大きく左右するんです。
参考となる眼科関連の情報として、日本眼科学会による網膜裂孔と網膜剥離の詳しい解説があります。網膜裂孔については日本眼科学会 網膜裂孔の解説、網膜剥離については日本眼科学会 網膜剥離の解説で、診断基準や病態の詳細を確認できますよ。
また、日本網膜硝子体学会が提供する裂孔原性網膜剥離のガイドラインでは、診断から治療まで網羅的な情報が得られ、医療従事者にとって有用なリソースとなっています。