慢性硬膜下血腫の症状と時間経過

慢性硬膜下血腫の症状と時間

この記事のポイント
⏱️

発症までの時間

受傷から早い人で2週間、遅い人だと数ヶ月経過してから症状が出現します

🧠

初期症状

眠りがちになる、活気がない、頭痛などの症状から始まることが多いです

予後

穿頭血腫除去術により約90%の方が1回の手術で完治する予後良好な疾患です

慢性硬膜下血腫の症状が現れるまでの時間経過

慢性硬膜下血腫は、頭部外傷後に脳の表面にある細い静脈が切れて、少しずつ硬膜の下に血液が溜まっていく疾患なんです。受傷直後は出血量が少ないため、頭部CTなどの検査でも異常が見つからないことがほとんどですよ。

参考)慢性硬膜下血腫|一之瀬脳神経外科病院


症状が出現するまでの時間には個人差があって、早い人では受傷から2週間程度、遅い人だと数ヶ月経過してから症状が現れます。この時間差は、血腫が徐々に形成されて脳を圧迫するまでに時間がかかるためなんです。頭をぶつけたことを本人が忘れてしまっているケースも少なくないため、診断が遅れることもあります。

参考)慢性硬膜下血腫とは ~治る認知症って?~


一之瀬脳神経外科病院の解説によると、頭部打撲後の慢性硬膜下血腫の発症時期について詳しい情報が記載されています。​

慢性硬膜下血腫の初期症状と進行パターン

血腫が小さい段階では無症状のことがほとんどですが、血腫が大きくなって脳を圧迫するようになると徐々に症状が出現してきます。多くの場合、最初は眠りがちになる、活気がないといった症状から始まるんです。​
代表的な症状としては、頭痛、歩行障害、物忘れなどの認知機能障害が挙げられます。特に高齢者では認知症によく似た症状を呈するため、「治る認知症」とも呼ばれています。その他にも、片半身の麻痺やしびれ、めまい、不安定性、けいれん発作、言語障害などが現れることもありますよ。

参考)慢性硬膜下血腫とは?その特徴と治療について


症状が急速に進行すると、混乱、頭痛、意識レベルの低下で救急搬送されることもあります。実際に「数日前からよく転ぶようになって、とうとう今日動けなくなった」という患者さんもいらっしゃるそうです。​

慢性硬膜下血腫の診断と手術までの時間

慢性硬膜下血腫の診断は、頭部CT検査やMRI検査によって行われます。画像検査では、血腫は頭蓋骨と脳の間に三日月状に描出されるのが特徴なんです。両側に発症することも珍しくないため、注意深い観察が必要ですよ。

参考)慢性硬膜下血腫 | 秋田県立循環器・脳脊髄センター


症状が重い場合、つまり意識障害がある時などは緊急手術が行われますが、それ以外の場合は症状に応じて通常は数日以内に手術が実施されます。ただし、血液をサラサラにする薬を飲んでいた場合は、その薬の効果が切れるまで手術を待機することもあるんです。

参考)慢性硬膜下血腫 静岡市【水谷脳神経外科クリニック】駿河区


診断がついたら当日または翌日に手術を行うのが理想的とされていますが、患者さんの全身状態や術前の準備状況によって手術のタイミングは調整されます。​

慢性硬膜下血腫の手術時間と術後経過

穿頭血腫除去術は局所麻酔で行われ、頭皮を約3センチメートル切開し、頭蓋骨に直径約1センチメートルの穴を開けます。硬膜を切り開いて溜まった血液を流出させ、その内部に細いチューブを入れて手術を終了するんです。

参考)http://hbs.o.oo7.jp/mannseikoumakuka.htm


手術時間は片側だけの場合は大体15分から30分程度で、両側に血腫がある場合でも1時間くらいです。術後、留置したドレーンから血腫が排液され、通常は翌日の頭部CT写真を見て血液が流れ出ているのを確認してからチューブを抜きます。

参考)慢性硬膜下血腫


一般に手術直後から麻痺や頭痛、認知症などの症状が回復してきて、早い方であれば手術直後に症状が良くなる方もいらっしゃいます。経過が順調ならば、手術後1~2週間以内で退院できることがほとんどですよ。

参考)慢性硬膜下血腫を放置するとどうなる?認知症や後遺症について解…

慢性硬膜下血腫の再発率と長期予後

穿頭術は血腫を抜くことができますが止血を行わないため、再発率は約8~10%とされています。再発する場合も再手術が必要になりますが、10人中9人は1回の手術で完治するため、初めから大きく開頭することはほとんどないんです。

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcns/22/2/22_125/_pdf


日本臨床神経外科学会誌の研究によると、70歳以上の高齢者は脳の萎縮があり手術で血腫を除去しても脳の戻りが不良であるため、再発の危険因子と考えられています。また、外傷から手術までの期間が70日以上になると統計学的に有意に再発が多いという報告もありますよ。​
ヘルニアの症状が現れるほど進行している場合を除き、予後は良好で、ほとんどは社会復帰が可能です。ただし、発見が遅れると廃用による筋力低下や身体機能低下によって以前のような状態に戻ることが難しくなる方もいらっしゃるため、早期発見が重要なんです。治る病気と言われますが、意外と半年~1年後の良好な経過をたどる方は70%程度になることも知っておく必要があります。​

慢性硬膜下血腫の発症リスクが高い患者群

発症リスクが高い方として、まず高齢者が挙げられます。高齢になると脳が萎縮して頭蓋骨と脳の間にスペースができるため、軽微な外傷でも血腫が溜まりやすくなるんです。​
血液をサラサラにする薬を飲んでいる方も要注意ですよ。バイアスピリン、プラビックス、プレタール、ワーファリンイグザレルトエリキュースリクシアナなど、脳梗塞心筋梗塞心房細動などに対して処方される抗血栓薬を服用している方は、出血が起こりやすく止まりにくい状態にあります。​
お酒をよく飲む方も発症リスクが高いとされています。アルコールの過剰摂取は出血傾向を高めるだけでなく、転倒のリスクも増加させるため注意が必要なんです。​
年間発生頻度は人口10万人に対して1~2人とされていますが、高齢化社会の中で慢性硬膜下血腫は増加傾向にあります。

参考)脳神経外科領域の主な疾患