ドライアイ症状と原因・診断・治療

ドライアイの症状と原因

ドライアイの主な症状と特徴
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多彩な自覚症状

目の乾燥感だけでなく疲れ・ゴロゴロ感・痛み・かすみなど様々な不快感が出現します

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涙液の質と量の異常

涙の分泌低下や蒸発亢進により目の表面を潤す力が低下します

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視機能への影響

涙液の不安定性により視界のかすみや視力低下を引き起こす可能性があります

ドライアイの代表的な症状

ドライアイの症状は「乾く」という感覚だけではなく、目が疲れる、目が重たい感じがする、目がゴロゴロする、目に不快感がある、目がヒリヒリ痛い、目が赤くなりやすい、目がかゆい、朝目が開けにくい、光をまぶしく感じやすいなど、多彩な不定愁訴として現れます。さらに、白っぽい目ヤニが出る、なんとなく見えづらい、時々かすんで見える、最近少し視力が低下したようだという症状も、ドライアイから起きることがあるんです。

参考)ドライアイの症状チェック-ドライアイ研究会


近年の研究では、ドライアイで視力が低下することが明らかになってきました。涙の量や質が不足していると、角膜の表面が滑らかに保たれず、光の屈折が乱れてしまうため、「視界がかすむ」「文字がにじんで見える」「焦点が合いにくい」などの症状が現れるのです。特にパソコンやスマートフォンの使用中は、瞬きの回数が減ると涙が蒸発しやすくなり、見え方の悪化を感じやすくなります。

参考)よく目が乾く、ドライアイである


ドライアイ研究会では、12項目のチェック項目のうち5項目以上あてはまるとドライアイの可能性が強いと提言しています。目が疲れる、目がしょぼしょぼする、目が乾いた感じがする、ものがかすんで見える、目に不快感がある、目が痛い・ごろごろする、目が赤い・充血、目が重たい感じがする、涙が出る、目がかゆい・表面がパサパサするといった症状に心当たりがある方は、眼科での診察を受けることをおすすめします。

参考)ひたちの眼科

ドライアイの主な原因

年齢とともに涙を分泌する機能が衰えるため、加齢にともなってドライアイのリスクは高くなります。しかし、現代社会はドライアイを引き起こしたり、悪化させたりする原因に満ち溢れているため、ドライアイは年齢に関係なく起こるんです。

参考)ドライアイについて


主な原因の1つが、パソコンやスマートフォン、ゲーム機の使用です。画面を長時間見続けることでまばたきが減ると、涙が不足します。デジタル機器を使用する作業者の58.5%がドライアイと診断されているという調査結果もあり、VDT(Visual Display Terminal)作業者およびコンタクトレンズ装用者におけるドライアイ患者の割合は、その他の患者と比べ有意に高率でした。

参考)コンタクトレンズとドライアイの関係:症状・リスク・根本的解決…


そのほか、エアコンによる乾燥、精神的なストレス、コンタクトレンズの長期・長時間の装用、夜型の生活、運動不足なども原因とされています。コンタクトレンズの使用はドライアイ発症リスクを男性で3.84倍、女性で3.61倍に高めることがわかっており、コンタクトレンズ使用者の約50%が何らかのドライアイ症状を経験しているんです。​

ドライアイと涙液層の関係

ドライアイでは、涙の量や質が不足しているため、角膜の表面が滑らかに保たれず、光の屈折が乱れてしまいます。涙液は目の表面を潤すだけでなく、たんぱく質やビタミン等の重要な成分を含んでおり、人工涙液では補うことができない栄養素を供給しているのです。

参考)ドライアイの原因と治療|北浦和眼科|さいたま市浦和区


「涙の質」はドライアイにとってとても重要な要素で、その質を左右する要素の一つである「油」を出すのが、まぶたの裏側にあるマイボーム腺と呼ばれる部分です。コンタクトレンズを装着すると、涙液層の薄化・不安定化、脂質層の拡散遅延、レンズ表面の濡れ性低下などの変化が起こり、涙が目の表面から蒸発するまでの時間(涙液破壊時間)が短くなります。

参考)ドライアイの検査・治療|仙台で最新検査装置 idra/アイド…


現在、ドライアイの治療には、水分とともに粘膜を保護する「ムチン」という成分を補う目薬や、油を増やす目薬がよく使われており、いずれも高い効果が期待できます。涙の補充のための点眼や涙の水分や粘液を増やす点眼を使って、涙の量と質をあげることで、ドライアイを治療していくんです。

参考)ドライアイがひどくなるとどうなる?治し方や対策方法について医…

ドライアイとシェーグレン症候群

涙液の量が低下するタイプのドライアイの典型的な疾患として、シェーグレン症候群が注目されています。この疾患は、涙腺、唾液腺などの外分泌腺に対する自己免疫疾患で、中年過ぎの女性が大半を占めます。組織学的に外分泌腺にリンパ球などの炎症細胞の浸潤を認め、リウマチとの合併も高率にみられるんです。

参考)http://www.tdc-eye.com/disease/disease10.html


シェーグレン症候群では、悲しいときや痛いときでも涙が出ず、角結膜上皮は乾燥と炎症によってびまん性の障害が見られます。涙腺が破壊されているために反射性分泌が低下しており、強い角結膜上皮障害をきたすため、患者さんは、目が開けにくい、ごろごろする、まぶしい、などの慢性の眼不快感を自覚し、本を読む、運転をするなどの日常生活が制限される例も少なくありません。​
シェーグレン症候群は、涙や唾液を作り出す臓器を中心に炎症を起こす「膠原病」の一つで、もっとも代表的な症状はドライマウス(口の渇き)とドライアイ(目の乾き)です。膠原病(慢性関節リウマチ全身性エリテマトーデス、強皮症、皮膚筋炎、混合性結合組織疾患)に合併する二次性シェーグレン症候群と、これらの合併のない原発性シェーグレン症候群に分類されます。また、悪性リンパ腫(MALTリンパ腫、B細胞リンパ腫)が発症する可能性が3〜5%程度あるといわれており、早期発見に努めることが重要です。

参考)シェーグレン症候群(ドライアイ)

ドライアイの疫学と患者数

近年、ドライアイの患者さんが増えており、日本での患者数は2,200万人ともいわれています。オフィスワーカーを対象とした研究では、全体の60%以上がドライアイかその疑いがあることがわかりました。​
ドライアイに悩む人は女性のほうが男性に比べて多く、加齢とともにドライアイが起こりやすくなることもわかっています。国内で行われた40歳以上を対象とした疫学調査(Koumi Study)では有病率は男性は12.5%、女性は21.6%で、中年以降の女性のほうがドライアイの有病率が非常に高いということがいわれているんです。​
ドライアイは目が乾くだけではなく、表面に傷ができたり、ゴロゴロ感、痛みなどを感じたり、視力が低下することもあります。現在、日本には推定800万人の患者さんがいるといわれていますが、生活環境の変化に伴ってさらに増えています。

参考)あなたのその症状、ドライアイかも…|大塚製薬


大塚製薬によるドライアイの詳しい解説では、ドライアイの症状や原因、予防法について詳しく紹介されています。

ドライアイの診断と検査

ドライアイの診断基準

2016年に10年ぶりにドライアイの定義と診断基準が改訂されました。以前の2006年の診断基準では①自覚症状、②涙液異常、③角結膜上皮障害の3つを満たした場合ドライアイの確定診断としていましたが、2016年の新しい診断基準では③の角結膜上皮障害が必須では無くなり、①と②の二つでドライアイの確定診断として良くなったのです。

参考)ドライアイの診断基準が改訂されました href=”https://www.hirataganka.com/news/%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%81%AE%E8%A8%BA%E6%96%AD%E5%9F%BA%E6%BA%96%E3%81%8C%E6%94%B9%E8%A8%82%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F/” target=”_blank”>https://www.hirataganka.com/news/%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%81%AE%E8%A8%BA%E6%96%AD%E5%9F%BA%E6%BA%96%E3%81%8C%E6%94%B9%E8%A8%82%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F/amp;#8211; 春…


この改訂の意味するところは、ドライアイは明らかな角結膜上皮障害(目の表面の乾燥による傷)が認められなくても、実際にはドライアイ症状を訴える患者さんが多数おられることが診断基準に反映されたものです。2016年の新しい診断基準は「BUT5秒以下かつ自覚症状(眼不快感または視機能異常)を有する」となっています。​
ドライアイの診断は、いくつかの検査を組み合わせて行われます。主な基準としては、「自覚症状」、「涙液の安定性」、「涙の量」、「角結膜上皮障害」の4つが挙げられるんです。自覚症状には目の乾き、疲れ、かすみなどがあり、問診で確認されます。

参考)ドライアイの診断基準を教えてください。 |ドライアイ

ドライアイのBUT検査

BUT(Tear Break Up Time)検査とは、涙の安定性を評価する検査です。フルオレセインという染色液を点眼し、10秒間まばたきをせずに目を開けたまま、涙の膜が破壊されるまでの時間を測定します。正常値は10秒以上で、5秒以下の場合はドライアイが疑われます。

参考)BUT(涙液層破壊時間)検査


BUT検査は、目の表面の涙がどの程度の時間で乾燥するかを調べる検査で、フルオレセインとよばれる色素を点眼し、細隙灯顕微鏡で目の表面を観察します。患者さんには、まばたきを止めて、真っすぐ正面を見ていただき、すると次第に目の表面が乾いて、色素が消える部分が出現するんです。​
10秒以上であれば正常と判断し、もし5秒以下であればドライアイが疑われます。またドライアイが疑われる場合、その乾燥の仕方(ブレイクアップパターン)をみることで、涙が少ないタイプなのか涙の蒸発が早いタイプなのかの判別をすることができるんです。涙の質的異常を調べる重要な検査の一つとして、医療現場で広く活用されています。​

ドライアイのシルマー試験

ドライアイを診断するために以前は「涙の量を測る検査(シルマー試験)」と「涙が乾き始めるまでの時間(涙液層破壊時間 BUT)」の2つが必須でしたが、最新のドライアイ診療ガイドラインでは後者を測定し、涙が乾き始めるパターンをみることで診断が可能になっています。​
現在では必須ではありませんが、ドライアイが疑われる場合、シルマーテスト(シルマー試験)とよばれる、涙の分泌量を調べる検査を行うことがあります(涙液分泌検査)。細長い試験紙を下まぶたに挟み、5分程度置いてどれほど試験紙に染み込むかを確認し、所要時間も10分以内で終わりますので、簡単に検査することができるんです。​
涙の量は「シルマー試験」で調べ、5mm以下ならドライアイの可能性があります。さらに、フルオレセイン染色によって目の表面の傷(角結膜上皮障害)を確認し、これらの結果を総合的に評価して診断されます。​
日本眼科学会によるドライアイの病気解説では、ドライアイの症状や検査について詳しく説明されています。

ドライアイの診断における注意点

ドライアイは眼科専門医の診断と治療が必要な疾患です。ドライアイは、角膜表面に傷がつくため、感染症を引き起こす恐れがあり、市販薬でもドライアイ用の目薬が市販されていますが、適切な診断を受けることが重要なんです。​
ドライアイは、様々な要因による涙や目の表面の慢性疾患で、目の不快感や視機能の異常を伴う疾患の総称です。ドライアイの原因には様々あり、その原因に応じた治療をする必要があるため、自己判断せずに眼科の診察を受けることが推奨されます。​
上記の症状には、べつの病気の初期症状の可能性もありますので、ドライアイかどうかは自己判断せずに眼科の診察を受けましょう。視力検査で異常がなくても見えづらさを感じるときは、ドライアイの可能性を疑って眼科で相談することが大切です。​

ドライアイの治療法

ドライアイの点眼治療

軽症の場合には、目の潤いを維持する点眼薬(目薬)により症状の緩和が可能です。人工涙液やヒアルロン酸製剤、ムチンや水分を分泌促進する点眼薬(ジクアホソルナトリウム)などが使用されます。

参考)ドライアイの治し方は?症状・原因・検査・治療│大阪市旭区のう…


涙の成分に近い水分を補給する人工涙液、水分を保つ効果のあるヒアルロン酸ナトリウムを含む角結膜上皮障害治療薬、ムチンや水分を分泌させる効果が期待できるジクアホソルナトリウム薬を使用して改善します。いろんな種類の点眼がありますので、病態に合わせて使い分けたり、併用したりするんです。​
ドライアイの治療法には点眼療法があり、症状が軽い場合に用いられます。うるおいを持たせる点眼液で症状を緩和させ、人口涙液、ヒアルロン酸製剤、ジクアホソルナトリウム、レパミピドなどが用いられ、重症の場合はステロイド点眼液を併用することがあります。

参考)ドライアイとは?主な症状から治療法まで詳しくご紹介 |高崎タ…

ドライアイの涙点プラグ治療

涙が排出される排出口を涙点と言い、この涙点にシリコン製のプラグ(栓)を挿入して、涙の排出を軽減します。涙の量を保てるようにし、自分の涙で眼を潤すことでドライアイを改善していくのです。​
まぶたの鼻側に、涙点と呼ばれる涙の排水口があり、涙点から、涙が鼻に抜けて、涙を排出しています。この涙点に涙点プラグという、小さなゴムやプラスチックでできたものを挿入することで、涙点を閉じ、涙を目にためて、治療をします。この方法は、特に水分が不足しているタイプやシェーグレン症候群に合併したドライアイに対して行うんです。​
外来処置で行い、点眼で麻酔した後に涙点プラグを挿入します。涙点は左右、上下計4つありますが、病態によって、挿入する数や場所は変わり、涙点プラグ挿入する時間は数分で、痛みもわずかです。涙点プラグは手術なので大がかりな治療のように思えますが、実際は点眼麻酔をして数分で終了するためあまり身体への負荷は大きくありません。​

ドライアイのマイボーム腺治療

リッドハイジーン(眼瞼清拭)とは、まぶたを洗浄することで、マイボーム腺脂質の排出を促進させる治療法です。先に温罨法を行うことでより、効果が期待できるんです。

参考)ドライアイの原因と治療方法|千代田区の飯田橋藤原眼科


加齢や炎症などによりマイボーム腺(まぶたの中にある目の表面をおおう脂を出す腺)の機能が低下して詰まっている場合、IPL治療(IPLという光線を照射して詰まった脂を溶かし炎症を予防する治療法)が行われることがあります。ただし、IPL治療は保険適用外なので自費治療となります。​
ドライアイでは「涙の質」がとても重要な要素で、その質を左右する要素の一つである「油」を出すのが、まぶたの裏側にあるマイボーム腺と呼ばれる部分です。マイボーム腺の機能が低下すると、涙の蒸発が促進されてドライアイの症状が悪化するため、適切な治療が必要になります。​

ドライアイの予防法と生活習慣

ドライアイの症状改善には目薬の使用がおすすめですが、日常的に目に負担をかけないよう意識したりマッサージをしたりして予防することもできます。効果的な予防方法として、長時間パソコンを使用するときは1時間ごとに約15分は目を休める、画面と目の距離は、パソコンでは40cm以上、テレビでは1m以上離す、読書をするときは室内を明るくし、パソコン使用時は逆にやや暗くする、乾燥する時期などは、加湿器や濡れタオルを干すなどして、室内の湿度を適度に調節する、パソコン使用時やゲームなどをしているときなどは、意識的にまばたきの回数を多くして涙の分泌を増やすといった対策があります。

参考)目のかわき(ドライアイ)の目薬、どうやって選べば良い? 症状…


ドライアイを治療せずにそのままにすると、目に様々なリスクが起こりえますので、早期に適切な治療を受けることが大切です。ドライアイは、目がかわくだけでなく、目がかすむ、まぶしい、目が疲れる、目が痛い、目がゴロゴロする、目が赤い、涙が出る、目ヤニが出るなど、多彩な症状を引き起こすため、これらの症状がみられる場合には眼科を受診してください。

参考)https://www.nichigan.or.jp/public/disease/name.html?pdid=9


ドライアイ研究会によるドライアイの症状チェックでは、ドライアイのセルフチェックや詳しい症状について解説されています。

ドライアイ治療における個別化医療

ドライアイの治療法には、主に点眼療法、涙点プラグ、IPL治療の3種類がありますが、それぞれの対象や概要が異なります。​

治療法の種類 対象 概要
点眼療法 症状が軽い場合 うるおいを持たせる点眼液で症状を緩和、人口涙液・ヒアルロン酸製剤・ジクアホソルナトリウム・レパミピドなどを使用、重症の場合ステロイド点眼液を併用
涙点プラグ 点眼療法だけでは症状が改善しない場合 涙の排出口である涙点に栓をして涙の排出をおさえ涙を目の表面にためる治療法(保険適用)
IPL治療 マイボーム腺の機能が低下している場合 IPL光線を照射して詰まった脂を溶かし炎症を予防する治療法(保険適用外の自費治療)

ドライアイの原因には様々あり、その原因に応じた治療をする必要があります。各治療法は患者さんの症状の重症度や原因によって選択され、場合によっては複数の治療法を組み合わせることで、より効果的な症状改善が期待できるんです。​
まれではありますが、涙点プラグが何度も抜けるような場合は、外科的に涙点を閉塞させる場合もあります。このように、ドライアイの治療は患者さん一人ひとりの状態に合わせた個別化医療が重要となっています。​