腸管出血性大腸菌感染症の感染経路
腸管出血性大腸菌感染症の食品を介した感染経路
腸管出血性大腸菌感染症の主な感染経路は、病原体に汚染された食品を摂取することによる経口感染なんです。国内では井戸水、牛肉、牛レバー刺し、ハンバーグ、牛角切りステーキ、サラダ、貝割れ大根、キャベツ、メロン、白菜漬けなどが原因食品として特定または推定されていますよ。
食肉類の表面は腸管出血性大腸菌やサルモネラ属菌等に汚染されている場合が多く、特にミンチ(挽肉)は汚染箇所も含めて加工されているため、まんべんなく汚染されているんです。肉の内部への処理が行われた製品は、中心部まで汚染されているため、中心部まで十分に加熱しないと殺菌できません。
参考)腸管出血性大腸菌O157等による食中毒予防対策|公益社団法人…
海外では、ハンバーガー、ローストビーフ、アップルジュース、レタス、ホウレンソウなどが原因として報告されています。米国で発生した生のホウレンソウによる食中毒事例では、菌を持つイノシシが農場に入り、農場を汚染したことが推測されているんですよ。
腸管出血性大腸菌の二次感染経路とその予防
ヒトからヒトへの糞口感染による二次感染も重要な感染経路なんです。腸管出血性大腸菌は100個程度の菌数でも感染が成立すると言われており、感染力が非常に強いのが特徴ですよ。
参考)腸管出血性大腸菌感染症|国立健康危機管理研究機構 感染症情報…
保育施設や高齢者施設における集団感染も多数報告されています。老人施設、小児精神保健施設、小児デイケアセンター、保育園などの施設で、腸管出血性大腸菌による二次感染の集団発生が報告されているんです。
参考)腸管出血性大腸菌感染症に注意しましょう – 福岡県庁ホームペ…
感染者が使用したタオルや糞便で汚れたトイレなどを介して感染が広がります。水洗トイレの取っ手やドアのノブなど、菌の汚染されやすい場所を逆性石鹸や消毒用アルコールなどを使って消毒することが重要ですよ。
参考)https://www.city.maebashi.gunma.jp/material/files/group/45/tyoukan.pdf
二次感染予防の詳しい情報は、厚生労働省の腸管出血性大腸菌感染症治療の手引きに医療機関向けの具体的な対策が記載されています。
医療機関における腸管出血性大腸菌の感染経路と対策
医療機関においては、日常的な給食管理により腸管出血性大腸菌による集団感染の一次発生を防止すると同時に、腸管出血性大腸菌感染症例の受け入れ時に病棟における他の患者や医療従事者への伝播による二次感染を予防することが必要なんです。
参考)Y’s Square:病院感染、院内感染対策学術情報 | 腸…
腸管出血性大腸菌は患者の汚染糞便を感染源として手指などを経由して経口摂取され、家庭内や施設内の近接者・介護者に二次感染することがあります。医療機関においては腸管出血性大腸菌感染症例に対して標準予防策に加えて、糞便を中心とした接触予防策を行う必要がありますよ。
EHECは非常に少量の菌で感染する可能性があるため、標準予防策の徹底が求められるんです。医療従事者は診察・診断過程において適切な感染予防対策を実施することが重要ですよ。
参考)腸管出血性大腸菌感染症(EHEC)(Enterohemorr…
患者が入院している医療機関では、二次感染予防の指導を行い、手洗いの励行等の指導を徹底することが必要です。医療従事者向けの詳細な対策については、Y’s Letter 腸管出血性大腸菌についてに医療機関における予防策が詳しく記載されています。
参考)https://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/attachment/227446.pdf
保菌動物との接触による腸管出血性大腸菌の感染経路
動物との接触による感染経路も重要な感染経路として認識されているんです。ふれあい動物イベント、搾乳体験等を原因とする感染事例が報告されていますよ。
牛等の反芻動物では、O157をはじめとする腸管出血性大腸菌を保菌していることがあるんです。また、反芻動物の糞便に汚染されたウサギ等の小動物の体表から二次的にヒトが感染した事例もありますよ。
秋田県で発生した「ふれあい動物イベント」による集団感染事例では、ヤギの便からEHEC O157が分離され、当該株のDNAパターンが患者由来株のパターンと一致することが確認されました。本事例は「動物との接触」がEHEC集団感染事例の発生要因となり得ることを示す貴重な事例となったんです。
参考)https://www.pref.akita.lg.jp/uploads/public/archive_0000088072_00/kk2006_02_3_08.pdf
動物とふれあった後には、必ず石けんを使用して十分に手洗いをすることが重要ですよ。動物の糞便には触れないようにし、動物とふれあう場所では飲食や喫煙等をしないようにする必要があります。動物由来感染症の予防対策については、厚生労働省のガイドラインに詳細が記載されています。
腸管出血性大腸菌感染症の交差汚染による感染経路
交差汚染による感染経路の拡大は、医療機関や給食施設において特に注意が必要なんです。腸管出血性大腸菌食中毒は、加熱不足や殺菌不足の食品だけでなく、調理器具や調理従事者により汚染された食品が原因で発生することもありますよ。
平成29年8月に総菜専門店で発生した腸管出血性大腸菌食中毒事件では、客が使用する取分け用トングが汚染を拡大させた可能性があると指摘されているんです。また、無症状保菌者が知らずに汚染してしまった食品が原因で発生することもあります。
複数の施設で同じ流通経路の原材料を使用していた事例では、きゅうりの殺菌を行っていた施設では食中毒の発生はなく、流水洗浄のみで殺菌を行っていなかった施設で食中毒が発生しました。このことから、食材の適切な殺菌処理が交差汚染の防止に重要であることがわかりますね。
生肉を扱った後に十分な手洗いをせずに他の食品を触ることで菌が広がるため、調理過程での交差汚染にも注意が必要です。調理器具はよく洗い、生肉専用の箸やトングを使い、食べる箸と使い分けることが推奨されていますよ。
感染経路の種類 | 具体的な経路 | 主な予防策 | 医療機関での対応 |
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食品媒介感染 | 加熱不十分な食肉、汚染野菜 | 75℃1分以上の加熱 | 給食管理の徹底 |
二次感染 | 患者の糞便、汚染物品 | 手洗い励行、消毒 | 接触予防策実施 |
動物接触感染 | 保菌動物との接触 | 接触後の手洗い | 感染歴の確認 |
交差汚染 | 調理器具、調理従事者 | 器具の使い分け | 標準予防策徹底 |
腸管出血性大腸菌感染症の感染経路は多岐にわたりますが、適切な予防策を講じることで感染リスクを大幅に低減できるんです。医療従事者は各感染経路の特徴を理解し、患者や施設利用者への適切な指導を行うことが求められますよ。
参考)https://www.mhlw.go.jp/www1/houdou/0908/h0821-1.html