MMTのやり方と判断基準の評価方法

MMTのやり方と判断基準

MMTの基本情報
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MMTとは

Manual Muscle Testingの略称で、徒手筋力検査法のこと

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評価段階

0から5までの6段階で筋力を評価

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主な使用場面

整形外科、脳神経外科、リハビリテーション科など

MMTの基本的な実施手順と注意点

MMT(Manual Muscle Testingの略。徒手筋力テスト)を正確に実施するためには、以下の手順を守ることが重要です。

  1. 患者の姿勢を適切に調整する
  2. 検査する筋肉や関節の動きを説明する
  3. 患者に動作を行ってもらう
  4. 必要に応じて抵抗を加える
  5. 筋力を評価し、段階を判定する

注意点としては、以下の点に気をつける必要があります。

  • 患者の体調や痛みの有無を確認する
  • 代償動作に注意を払う
  • 検査者の力加減を一定に保つ
  • 左右差がある場合は必ず両側を評価する

MMTの判断基準と各段階の特徴

MMTの判断基準は0から5までの6段階で評価されます。各段階の特徴は以下の通りです。

段階 評価 特徴
5 Normal 強い抵抗に対して全可動域を動かせる
4 Good 中等度の抵抗に対して全可動域を動かせる
3 Fair 重力に抗して全可動域を動かせる
2 Poor 重力を除いた状態で全可動域を動かせる
1 Trace わずかな筋収縮を認める
0 Zero 筋収縮を全く認めない

これらの判断基準を適切に理解し、正確に評価することが重要です。

MMTの上肢・下肢における具体的な評価方法

上肢と下肢のMMT評価方法には、それぞれ特徴があります。以下に代表的な筋肉の評価方法を紹介します。

上肢の評価:

  • 三角筋:腕を90度挙上させ、そこから更に上げようとする動きに抵抗を加える
  • 上腕二頭筋:肘を90度に曲げた状態から、さらに曲げようとする動きに抵抗を加える
  • 手関節屈筋群:手首を掌屈させ、その状態を保持させる

下肢の評価:

  • 腸腰筋:仰臥位で股関節を屈曲させ、その状態を保持させる
  • 大腿四頭筋:座位で膝を伸展させ、その状態を保持させる
  • 前脛骨筋:足関節を背屈させ、その状態を保持させる

これらの評価方法を正確に実施することで、患者の筋力状態を適切に把握することができます。

MMTの結果解釈とリハビリテーション計画への活用

MMTの結果は、患者のリハビリテーション計画を立てる上で重要な指標となります。以下のように結果を解釈し、活用することができます。

  1. 筋力低下の程度と範囲の把握
  2. 経時的な筋力変化の評価
  3. リハビリテーションの目標設定
  4. 治療効果の判定
  5. ADL(日常生活動作)能力の予測

例えば、MMTが3の場合は重力に抗して動作が可能であるため、基本的なADLは自立できる可能性が高いですが、MMTが2以下の場合は日常生活に介助が必要となる可能性が高くなります。

このような解釈を基に、患者個々の状態に合わせたリハビリテーション計画を立案することが重要です。

MMTの限界と補完的評価法の必要性

MMTは簡便で広く使用されている評価法ですが、いくつかの限界があります。

  1. 主観的評価であるため、評価者間で差が生じる可能性がある
  2. 筋力が強い場合(MMT4〜5)の詳細な差別化が難しい
  3. 痛みや関節可動域制限がある場合、正確な評価が困難
  4. 筋持久力や協調性の評価には適していない

これらの限界を補うため、以下のような補完的評価法を併用することが推奨されます。

  • 徒手筋力計(ハンドヘルドダイナモメーター)による定量的評価
  • 関節可動域(ROM)測定
  • 筋電図検査
  • 機能的動作評価(FMA)

これらの評価法を組み合わせることで、より包括的な患者評価が可能となります。

ハンドヘルドダイナモメーターを用いた徒手筋力測定の信頼性と妥当性

MMTのやり方における代償動作の見分け方と対処法

MMTを正確に実施するためには、代償動作を適切に見分け、対処することが重要です。代償動作とは、目的とする筋肉以外の筋肉を使って動作を補助することを指します。

代表的な代償動作とその見分け方:

1. 肩関節外転時の体幹の側屈

  • 見分け方:患者の体幹が検査側に傾いていないか観察する
  • 対処法:反対側の肩を固定し、体幹の動きを制限する

2. 股関節屈曲時の腰椎の前弯増強

  • 見分け方:腰部が浮き上がっていないか確認する
  • 対処法:骨盤を固定し、腰部の動きを制限する

3. 膝関節伸展時の大腿四頭筋以外の筋の使用

  • 見分け方:大腿後面や下腿の筋の緊張を観察する
  • 対処法:大腿後面を支持し、他の筋の関与を最小限に抑える

代償動作を防ぐためのポイント:

  • 正確な開始肢位を取らせる
  • 患者に動作の説明を十分に行う
  • 必要に応じて徒手的に動きを誘導する
  • 評価中も常に患者の全身の動きを観察する

代償動作を適切に制御することで、より正確なMMT評価が可能となり、患者の真の筋力を把握することができます。

MMTと関連する最新の研究動向と臨床応用

MMTは長年にわたり使用されてきた評価法ですが、近年も様々な研究や臨床応用が進められています。以下に最新の動向をいくつか紹介します。

1. 筋力評価の客観性向上

  • 筋力計との併用による定量的評価の標準化
  • AI技術を用いた動作解析システムの開発

2. 神経筋疾患の早期診断への応用

  • 微細な筋力低下を検出するための高感度MMT法の研究
  • 筋電図との組み合わせによる神経筋接合部疾患の評価

3. スポーツ医学分野での活用

  • 競技特性に応じたMMT評価法の開発
  • 傷害予防のためのスクリーニングツールとしての応用

4. 高齢者の転倒リスク評価への応用

  • 下肢筋力とバランス能力の関連性の研究
  • 簡易版MMTを用いた地域在住高齢者のスクリーニング

5. リハビリテーションロボットとの連携

  • MMT結果に基づいた個別化されたロボットアシスト訓練の開発
  • 継続的なMMT評価によるロボット訓練の効果検証

これらの研究動向は、MMTの臨床的価値をさらに高め、より精密な患者評価と効果的なリハビリテーション介入につながる可能性があります。