C型慢性肝炎ガイドラインの概要と治療戦略
C型慢性肝炎の治療ガイドラインは、日本肝臓学会によって定期的に更新されており、2025年4月に第8.4版が発表されました 。このガイドラインは、C型肝炎ウイルス(HCV)感染による慢性肝疾患の長期予後改善を目指し、肝発癌および肝疾患関連死の抑制を最終目標としています 。
参考)C型肝炎治療ガイドライン|日本肝臓学会ガイドライン|ガイドラ…
現在の治療方針では、非代償性肝硬変を含むすべてのC型肝炎症例が抗ウイルス治療の対象となり、年齢、ALT値、血小板数にかかわらず治療を検討することが推奨されています 。特に、ALT値上昇例(ALT 30 U/L超)または血小板数低下例(血小板数15万/μL未満)は、抗ウイルス治療の良い適応とされています 。
参考)https://www.jsh.or.jp/lib/files/medical/guidelines/jsh_guidlines/C_v8.2_k_20230711.pdf
C型慢性肝炎の診断プロセス
C型慢性肝炎の診断は、血液検査による肝機能異常の確認から始まります 。C型肝炎ウイルス抗体(HCV抗体)の検査により感染の可能性を判定し、陽性の場合はHCV RNA検査でウイルス感染の持続を確認します 。さらに、治療方針決定のためにウイルス量とHCV遺伝子型の測定が行われ、肝線維化の程度や肝癌の有無を評価して病期の進展度を予測します 。
参考)http://www.med.nagoya-cu.ac.jp/kanen/kensyu/05_haihu/2_Ckanen.pdf
肝機能が正常であっても、将来的に慢性肝炎になる危険性を持つ無症候性キャリアが存在するため、感染の可能性がある場合は専門医への相談が推奨されています 。
参考)C型慢性肝炎の診断と治療 – 関連疾患 l 肝機能の数値・肝…
直接作用型抗ウイルス薬(DAA)による治療成績
現在のC型慢性肝炎治療の主流となっているのは、直接作用型抗ウイルス薬(DAA)を用いたインターフェロンフリー治療です 。DAAは、C型肝炎ウイルスの複製を直接阻害してウイルスの複製を強力に抑制する飲み薬として開発されました 。
参考)そのほかの治療方法
最新の治療薬であるグレカプレビル/ピブレンタスビル配合錠では、初回投与例でのウイルス排除率が約99%という極めて高い有効性が示されています 。また、ダクラタスビル・アスナプレビル併用療法では、インターフェロン治療不適格の未治療/不耐容患者で87.4%のSVR24達成率を記録し、65歳以上の高齢患者では91.9%と更に高い成績を示しています 。
参考)C型慢性肝炎に対する経口薬のみによる治療薬を世界に先駆けて日…
C型慢性肝炎における肝線維化評価の重要性
肝線維化の評価は、C型慢性肝炎の治療方針決定において極めて重要です。C型肝炎ウイルスは、感染が持続することで肝線維化を進行させ、最終的に肝硬変や肝がんに進展するメカニズムが解明されています 。
参考)C型肝炎ウイルス(HCV)が肝線維化を進行させるメカニズムを…
研究によると、HCVのNS3プロテアーゼが宿主のTGF-βと同じ役割を果たし、肝線維化シグナルを活性化することが明らかになっています 。この発見は、肝線維症の発症メカニズムの理解を深め、新しい診断法や治療・予防法の開発につながる重要な知見となっています 。
SVR(持続的ウイルス学的著効)達成後の管理
DAA治療により高いSVR達成率が得られるようになりましたが、SVR達成後も肝発癌リスクは完全には消失しません。特に肝癌治療後のC型肝炎患者において、DAA治療によるウイルス排除が肝がんの進行リスクを大きく低下させることが明らかになっています 。
参考)C型肝炎の経口治療薬が肝がん治療後のがんの進行リスクを低下さ…
研究結果では、DAA治療により肝がんの再発リスクは低下しなかったものの、がんの進行リスクが72%も低下し、肝臓病による死亡リスクは88%も低下したことが報告されています 。さらに、1年あたりの治療頻度も0.83回から0.24回に大幅に減少しました 。
治療における薬物相互作用と安全性管理
DAA治療において最も重要な注意点の一つは、併用薬による相互作用です 。他の疾患で使用している薬剤や健康食品がC型肝炎の薬剤の効果に影響を与える場合があり、逆にC型肝炎の薬剤が他疾患の治療薬の効果に影響することもあります 。
治療中に見られる主な副作用として、手足のむくみや肝機能異常(ALT上昇)があります 。薬剤の飲み忘れが続くと血中薬剤濃度が低下し、C型肝炎ウイルスが再び増殖する危険性があるため、医師の指導に従った正確な服用が重要です 。
国内試験における安全性データでは、DCV/ASV併用療法の有害事象による中止率は5.0%と低く、重篤な有害事象の発現率も5.9%と良好な忍容性を示しています 。