遺伝子治療薬の一覧と承認状況
遺伝子治療薬の日本における承認製品一覧
日本で承認されている遺伝子治療薬は2025年現在、合計9製品となっている 。これらはin vivo遺伝子治療製品とex vivo遺伝子治療製品に大別される。
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In vivo遺伝子治療製品(4製品)
- ゾルゲンスマ(オナセムノゲン アベパルボベク):脊髄性筋萎縮症治療薬
- ルクスターナ(ボレチゲン ネパルボベク):遺伝性網膜ジストロフィー治療薬
- コラテジェン(ベペルミノゲン ペルプラスミド):慢性動脈閉塞症治療薬
- エレビジス(デランジストロゲンモキセパルボベク):デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬
Ex vivo遺伝子治療製品(5製品)
これらの製品は、いずれも2019年以降に承認されており、今後も遺伝子治療製品の実用化例は増加していくと予想される 。
遺伝子治療薬のベクター別分類と特徴
遺伝子治療薬は使用するベクター(遺伝子の運び屋)によって大きく分類される。各ベクターには独自の特徴と適応疾患がある。
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター 🔬
AAVベクターは病原性を示さないことから比較的安全性が高く、様々な組織指向性を持つため、現在最も活発に研究開発に使用されている 。ゲノムに組み込まれるリスクが非常に小さく、がん化などの副作用のリスクを低減できると考えられている 。
参考)AAV
プラスミドDNA製品 💉
コラテジェンに代表されるプラスミドDNA製品は、HGF(肝細胞増殖因子)遺伝子を組み込んだプラスミドを直接患部に注射する治療法である 。世界初のHGF実用化製品として注目されている。
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レトロウイルスベクター ⚠️
CAR-T療法などに使用されるが、ゲノムへの挿入変異によるがん化リスクが指摘されており、安全性向上に向けた改良が続けられている 。
遺伝子治療薬の開発動向と世界の承認状況
世界的に見ると、日米欧で承認された遺伝子治療製品は急速に増加している。2025年現在の主要な承認済み製品を見ると、血友病B治療薬のHemgenixやBeqvezなど、希少疾患を対象とした画期的な治療薬が続々と登場している 。
血友病B治療薬の革新 🩸
2022年にFDAが承認したHEMGENIXは、世界初の血友病Bに対する遺伝子治療薬として注目されている 。一度の治療で体内で持続的に第IX因子を産生できるようになり、生涯にわたる補充療法からの解放が期待される。
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ゲノム編集治療薬の登場 ✂️
2023年には世界初のゲノム編集治療薬CASGEVYが英国で承認された 。CRISPR/Cas9技術を用いて患者の造血幹細胞を体外で編集し、鎌状赤血球症やβサラセミアの治療を可能にしている。
参考)ゲノム編集
mRNA医薬の進歩 📈
COVID-19ワクチンで注目されたmRNA技術は、治療用医薬品としても期待されている 。ゲノムに挿入されるリスクがなく、より安全な遺伝子治療の選択肢として研究が進んでいる 。
参考)mRNA医薬とは
遺伝子治療薬の安全性と副作用プロファイル
遺伝子治療薬の安全性は従来の医薬品とは異なる特殊なリスクを伴う。医療従事者は、これらのリスクを十分に理解し、患者への適切な説明と管理を行う必要がある。
挿入変異によるがん化リスク ⚠️
2000年頃の重症免疫不全症に対する造血幹細胞遺伝子治療では、レトロウイルスベクターによる挿入変異が白血病の発症を引き起こした事例がある 。この経験から、より安全なベクターの開発が進められている。
免疫反応 🔥
mRNAを含む遺伝子治療薬は、自然免疫機構を刺激して強い炎症反応を引き起こす可能性がある 。適切な修飾技術により、この問題は大幅に改善されているが、投与時の注意深い観察が必要である。
ベクター特異的な副作用 🧪
各ベクターには固有の副作用プロファイルがある。AAVベクターは比較的安全だが、アデノウイルスベクターは強い炎症反応を起こす可能性があり 、プラスミドDNA製品は局所の炎症反応が主な副作用となる 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/dds/34/2/34_99/_pdf
遺伝子治療薬の臨床応用における医療従事者の役割
遺伝子治療薬の臨床応用において、医療従事者は従来の薬剤管理とは異なる専門的な知識と技術が求められる。特に投与前の患者選択から長期フォローアップまで、包括的な管理が必要となる。
患者選択と事前評価 📋
遺伝子治療薬は多くが希少疾患を対象としており、適応基準が厳格に設定されている。血友病B治療薬HEMGENIXの場合、「第IX因子の予防的投与を受けている」「現在もしくは過去に命に関わる出血を経験した」「重篤な自然出血を繰り返している」のいずれかに該当する成人患者が対象となる 。
長期フォローアップの重要性 📊
遺伝子治療薬は一回の投与で長期間効果が持続するため、数年から数十年にわたる継続的な観察が必要である。特に、遅発性の副作用や治療効果の減弱について注意深く監視する必要がある 。
multidisciplinaryアプローチ 👥
遺伝子治療薬の管理には、医師、薬剤師、看護師、遺伝カウンセラーなど多職種の連携が不可欠である。各専門職が持つ知識を統合し、患者中心の治療を提供することが求められる。