筋弛緩モニタフクダ電子テトラグラフの臨床応用と使用法

筋弛緩モニタフクダ電子テトラグラフの概要と機能

筋弛緩モニタフクダ電子テトラグラフの特徴
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高精度な筋弛緩状態監視

筋電図式による正確な筋弛緩測定を実現し、手術の安全性を向上

簡単な電極装着システム

刺激電極と測定電極が一体型で迅速かつ確実な装着が可能

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リアルタイム波形表示

筋電図波形をリアルタイムで表示し、筋弛緩の変化を視覚的に確認


フクダ電子の筋弛緩モニタ「テトラグラフFTG2001」は、手術室における麻酔管理において筋弛緩状態を正確にモニタリングする医療機器です 。本装置は、患者の末梢神経に電気的な刺激を与えて筋電図を検出することで、筋弛緩の程度を把握します 。

参考)303 See Other

筋電図式を採用しているため、従来の加速度測定法と比較して、患者の腕を固定しなくても安定した測定が可能です 。刺激電極部と筋電図測定電極部が一体化した専用センサーにより、医療従事者は迷わず短時間で電極装着を行うことができます 。

参考)https://drew.jp/jsnacc2020-exhibition/13.html

フクダ電子は1939年に国産第一号となる心電計を開発した医療機器専門メーカーで、現在では生体情報モニタ、血圧脈波検査装置、超音波画像診断装置などの医療機器を製造・販売しています 。全国220拠点を超えるサービスネットワークを通じて、予防・検査から治療、在宅医療まで幅広いソリューションを提供しています 。

参考)フクダ電子 – Wikipedia

筋弛緩モニタフクダ電子の基本動作原理

テトラグラフFTG2001の動作原理は、神経刺激により誘発された活動電位(筋電図)を記録することにあります 。本装置の設定によって出力した刺激電流は、患者の末梢神経に沿った部位に貼り付けた電極の刺激電極部を介して患者に流れます 。

参考)https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/bookSearch/01/04538612229169

刺激電流によって誘発される筋電図を、電極の筋電図測定電極部から検出し、装置内部で解析処理した後、電気的な刺激に対する反応の程度として表示・保存します 。この刺激に対する反応の程度を観察することで、筋弛緩の程度を正確に把握することが可能になります。
本装置には3種類の刺激モードが搭載されており、STモード(Single Twitch:単発刺激)では単発刺激を10秒間隔(0.1Hz)で繰り返し、刺激に対する反応は振幅値(単位:mV)で表示されます 。

筋弛緩モニタの4連刺激(TOF)評価システム

筋弛緩モニタリングにおいて最も重要な機能の一つが、4連刺激(TOF:Train of Four)評価システムです 。TOFは1970年にAliらによって提唱された概念で、2Hz(0.5秒ごと)の刺激を4回連続で行う四連刺激として知られています 。

参考)https://www.msdconnect.jp/wp-content/uploads/sites/5/2022/01/anesthesia_20211106_flash_report.pdf

TOF評価には四連反応比(TOF比)と四連反応数(TOFカウント)の2つの方法があります 。TOF比は1回目(T1)と4回目(T4)の反応比(T4/T1)で筋弛緩状態からの回復指標として有用性が示されており、現在では筋弛緩モニタリングに欠かせない指標となっています 。

参考)Q:TOF とは? どう評価するのか?: 麻酔科勤務医のお勉…

筋弛緩が深くなるにつれて、T4反応から順次消失し、最終的にはT1反応も消失します 。一般的にTOF比が0.9以上で抜管時の筋弛緩回復が十分であると判断され、咽頭機能が正常化し、胃内容の逆流や誤嚥の危険性が低下します 。

参考)https://www.kochi-u.ac.jp/kms/fm_ansth/member/morpdf/20110623.pdf

筋弛緩モニタの電極装着と測定部位の選択

筋弛緩モニタリングでは、通常、前腕の尺骨神経を刺激し、母指内転筋の収縮程度を定量的に評価します 。電極装着時にはアルコール綿で清拭脱脂し、黒電極は末梢、白電極は中枢側に接続することが重要です 。

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/36/1/36_63/_pdf

上肢に装着できない場合は、後脛骨神経を使用し、短母趾屈筋からの反応を測定することができます 。また、皺眉筋や咬筋なども測定部位として使用可能です 。

参考)https://www.medicalexpo.com/ja/prod/senzime/product-121141-1068495.html

フクダ電子のテトラグラフFTG2001では、刺激電極と測定電極が一体型になっているため、従来の筋弛緩モニタで2~3分かかっていた電極装着が20~30秒程度に短縮され、時間効率が大幅に改善されています 。これにより看護師への業務委託も可能となり、麻酔科医はキャリブレーション確認に集中できます。

参考)https://nihonkohden.meclib.jp/library/books/SP71-0030_hp/book/data/SP71-0030.pdf

筋弛緩モニタフクダ電子の術中管理における独自の活用法

テトラグラフFTG2001の独自の活用法として、手術用ドレープで覆われた状態での測定サポート機能があります 。これは他の筋弛緩モニタにはない特徴的な機能で、術野の清潔性を保ちながらモニタリングを継続できる利点があります。

参考)https://medical.nihonkohden.co.jp/iryo/products/monitor/01_bedside/af201p.html

筋電図式の測定方式により、患者の腕の固定が不要であることから、体位変換が必要な手術や長時間手術においても安定したモニタリングが可能です 。このため、整形外科手術や脳神経外科手術など、様々な術式に対応できる汎用性の高い装置として評価されています。
また、本装置は小児から成人まで幅広い年齢層に対応しており 、特に小児の母指内転筋と短母趾屈筋の筋弛緩回復過程の比較研究にも活用されています。温度変化に対する影響を最小限に抑える設計により、低体温症例でも正確な測定が維持できる特徴があります 。

参考)hajime IWASAKI – 電位感知型筋弛緩モニタを用…

筋弛緩モニタの安全性向上と残存筋弛緩予防効果

術後残存筋弛緩(RNMB)は重篤な合併症を引き起こす可能性があり、適切な筋弛緩モニタリングによる予防が重要です 。世界的にも筋弛緩状態のモニタリングの重要性が認識されており、日本でも麻酔科学会から筋弛緩状態のモニタリングが推奨されています 。

参考)筋弛緩のお話 – MERA 泉工医科工業株式会社 —医療と共…

フクダ電子のテトラグラフFTG2001は、筋電図波形のリアルタイム表示により、筋弛緩の変化を視覚的に確認できるため、麻酔科医の臨床判断をサポートします 。キャリブレーションを必要としない設計により、起動時間が短く、緊急手術にも迅速に対応できます 。

参考)https://www.medicalexpo.com/ja/prod/senzime/product-121141-1005730.html

筋弛緩薬の適切な管理により、気道確保の安全性向上と術野環境の最適化が実現されます。特にスガマデクスなどの筋弛緩拮抗薬の投与タイミングの決定において、正確なTOFカウントの測定が重要な役割を果たしています 。医療従事者が開発に関わった装置として、臨床現場のニーズに応えた実用的な機能が搭載されています 。