腰痛症の種類と原因別分類から症状・治療法まで

腰痛症の種類と原因別分類

腰痛症の主要分類

急性・慢性分類

発症からの期間による分類(急性:4週間未満、慢性:3ヶ月以上)

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原因明確性分類

特異的腰痛(原因明確)と非特異的腰痛(原因不明)の区別

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病因部位分類

脊椎由来、神経由来、内臓由来、心因性などの病因別分類

腰痛症の発症期間による分類

腰痛症は発症からの経過期間によって3つのタイプに分類されます 。急性腰痛は発症から4週間未満の腰痛で、多くは自然軽快する傾向があります 。亜急性腰痛は4週間以上3ヶ月未満の期間続く腰痛で、急性期と慢性期の中間段階に位置します 。慢性腰痛は発症から3ヶ月以上継続している腰痛で、自然経過による改善は急性腰痛に比べて少ないことが特徴です 。

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急性腰痛の代表例である「ぎっくり腰」は、不意の動作により突然激しい痛みに襲われ、7~10日ほどで自然に症状が消失するため急性腰痛症と呼ばれています 。痛みの特徴として「ピキッと音がするような感じ」や「ビリっと電気が走ったような痛み」を感じ、重症例では動けなくなるほどの激痛を伴います 。

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腰痛症の原因による特異的・非特異的分類

腰痛症は原因が特定できるかどうかで特異的腰痛非特異的腰痛に大別されます 。特異的腰痛は椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症など明確な所見から病名がつけられる腰痛です 。一方、非特異的腰痛は医師の診察や画像検査で腰痛の原因が特定できない腰痛で、全体の85%を占めるとされています 。

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非特異的腰痛には椎間関節性腰痛、椎間板性腰痛、仙腸関節性腰痛、筋筋膜性腰痛の4種類があり、痛みが生じる部位によって名前が付けられています 。これらは普段の姿勢などの生活習慣に関連が考えられるものの、はっきりとした骨や関節の病変、神経症状がみられず、痛みの原因が特定しづらいという特徴があります 。

腰痛症の病因部位による分類システム

『腰痛診療ガイドライン2019(改訂第2版)』によると、腰痛の種類は原因別に脊椎由来神経由来内臓由来、血液由来、心因性、その他に分類できます 。脊椎由来の腰痛には腰椎椎間板ヘルニア、腰椎分離すべり症、腰部脊柱管狭窄症などが含まれ、いわゆる背骨の構造的問題によって引き起こされる腰痛です 。
神経由来の腰痛は脊髄腫瘍や馬尾腫瘍などの病気が原因となり、神経組織そのものの病変によって生じます 。内臓由来の腰痛には腎結石や尿路結石腎盂腎炎、女性では子宮内膜症などが原因となる場合があり、腰以外の内臓疾患が腰痛として現れる興味深い病態です 。

腰痛症の主要疾患別症状の特徴

腰椎椎間板ヘルニアでは腰痛に加えて、太ももの後ろからふくらはぎ、すねの外側などに広がる痛みが特徴的です 。多くの場合片側の足に症状がみられ、咳やくしゃみで痛みが増強することもあります 。L4・L5椎間板ヘルニアでは、お尻から大腿の外側、膝下、すねの外側にかけてしびれを感じ、足指や足首の筋力低下も生じることがあります 。

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腰部脊柱管狭窄症の最も典型的な症状は間欠跛行で、歩いていると下肢のしびれや痛みが出現し、前かがみになって休憩すると症状が軽快するという特徴があります 。「姿勢を変えると楽になる」「自転車には乗り続けられる」というのがこの疾患の特徴的な所見です 。重症例では排尿・排便障害を伴う急性馬尾症候群に進行することもあります 。

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腰痛症における心因性・ストレス関連要因の影響

近年の研究では心理的ストレスが腰痛発症や慢性化に重要な役割を果たすことが明らかになっています 。ストレスによる腰痛のメカニズムには、身体化による血流不足、脳の痛みを感じる機能の不具合、心理的ストレスによる姿勢バランスの崩れの3つが考えられています 。

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身体化により腰の筋肉で血流が不足すると、酸素欠乏や老廃物の蓄積が起こり、痛みを発する物質が産生されて腰痛を発症します 。また、心理的ストレスを抱えた状態で持ち上げ作業をすると、作業時の姿勢バランスが微妙に乱れて椎間板への負担が高まり、「ぎっくり腰」の発生リスクが増加します 。このため、医療従事者は腰痛患者の身体的症状だけでなく、心理社会的要因も包括的に評価する必要があります。

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日本脊椎脊髄病学会による腰痛の種類に関する詳細な分類と解説
厚生労働省による職業性腰痛対策ガイドライン(PDF)