大腿骨頭壊死と障害者手帳
大腿骨頭壊死症における障害者手帳の取得基準
特発性大腿骨頭壊死症により、身体に一定以上の障害があると認められた場合、身体障害者手帳を取得できる可能性があります 。厚生労働省の「難病患者等に対する認定マニュアル」によると、特発性大腿骨頭壊死症では46.6%の方が身体障害者手帳を取得しているというデータがあります 。
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身体障害者手帳の交付対象となるのは、主に下肢機能障害として認定される場合です 。障害等級は1級から6級まで存在し、7級に該当する障害は単独では交付対象とならず、7級に該当する障害が2つ以上ある場合に交付対象となります 。大腿骨頭壊死症の場合、人工骨頭を挿入していない状態でも、杖歩行に頼るなどの障害があれば3級に認定されることもあり、歩行に著しい制限を受ける場合は2級、1級に認定される可能性があります 。
参考)http://www.shougaiv.com/d07-09.html
症状の進行度合いによって等級が決まるため、股関節の可動域制限や歩行困難の程度が重要な判断材料となります 。また、壊死の範囲や関節の破綻の程度も評価の対象となります。
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大腿骨頭壊死症の病態と診断基準
特発性大腿骨頭壊死症は、明らかな原因がないにもかかわらず、大腿骨の先端にある「骨頭」への血流が途絶えて壊死に陥る疾患です 。一度壊死した骨頭は元には戻らず、壊死した骨が骨折したり骨頭が潰れたりすることで、股関節が痛くなったり歩けなくなったりします 。
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診断には厚生労働省特発性大腿骨頭壊死症調査研究班が定めた「JIC診断基準」が使用され、X線所見、MRI、骨シンチグラム、骨生検標本の5項目中2項目以上を満たす場合に確定診断とされます 。診断基準の主要項目には、骨頭圧潰や「crescent sign」と呼ばれる骨頭軟骨下骨折線像、MRIでの骨頭内帯状低信号域の確認などがあります 。
参考)特発性大腿骨頭壊死症
病気の進行は段階的で、Stage 1では X線で異常がなくMRIやシンチグラムで異常が見られ、Stage 2では X線で帯状硬化像が見られるが骨頭圧潰はなく、Stage 3で骨頭が圧潰し関節裂隙が保たれる状態となります 。新規発生患者数は年間2,000人~3,000人程度で、指定難病対象疾病に指定されています 。
障害者手帳申請の具体的な手続き方法
身体障害者手帳の申請は、お住まいの福祉事務所または町村障害者福祉担当課で手続きを行います 。申請の流れは以下のとおりです:
参考)身体障がい者手帳申請の流れ/大阪府(おおさかふ)ホームページ…
- 福祉事務所または町村障害者福祉担当課に手帳申請のための相談
- 申請に必要な書類(交付申請書・診断書用紙)を受け取り
- 指定医師の診察を受診
- 指定医師から診断書を受け取り
- 福祉事務所または町村障害者福祉担当課に申請
申請には、指定医による診断書が必要で、本人確認ができる書類(住民基本台帳カード、パスポート、個人番号カードなど)、申請する本人の縦4cm横3cmの写真が必要です 。代理人による申請も可能ですが、代理権の確認書類と代理人の身元確認書類が必要となります 。申請から約1ヶ月程度で発行され、基準に該当しないため手帳が交付されない場合もあります 。
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大腿骨頭壊死症の治療選択肢と手術適応
大腿骨頭壊死症の治療には保存療法と手術療法があります。保存療法では、リハビリテーションを中心として股関節の可動域維持と筋力強化を行います 。具体的には、股関節の屈曲・外転・外旋運動、ストレッチ、筋力トレーニングなどを実施し、一般的に医療保険でのリハビリが可能な150日を目安に行われます 。
参考)大腿骨頭壊死のリハビリ内容や期間・やってはいけないことを現役…
手術療法には主に2つの選択肢があります。関節を温存する「骨切り術」では、壊死していない健康な部分を体重がかかる位置に移動させ、入院期間は約1〜2カ月、費用は80万円ほどかかります 。人工関節置換術では、壊死した骨の部分を人工の部品に置き換え、入院期間は約2〜4週間、費用は60〜80万円ほどです 。
参考)大腿骨頭壊死の手術内容や入院期間・費用を現役医師が解説
人工骨頭・人工股関節を挿入した場合、障害年金では原則として3級に該当し、手術日が障害認定日の特例として適用される場合もあります 。手術による機能改善の程度によって、障害者手帳の等級にも影響する可能性があります。
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障害者手帳取得による生活サポートと経済的メリット
身体障害者手帳を取得することで、多様な支援制度を利用できるようになります。交通機関の運賃割引では、JRや私鉄、バス、航空機などで料金の減免が受けられ、通院にかかる交通費負担を軽減できます 。医療費助成制度では、自治体によって医療費の一部助成や自己負担上限額の設定があり、継続的な治療が必要な大腿骨頭壊死症患者にとって経済的負担の軽減につながります。
税制面では、所得税・住民税の障害者控除、自動車税・軽自動車税の減免、相続税の軽減措置などがあります。また、公営住宅の優先入居や民間賃貸住宅での保証料減免制度を利用できる場合もあります。就労支援では、障害者雇用制度による就職支援や職場での配慮を受けやすくなり、福祉用具の購入やレンタルでも助成を受けられることがあります。
これらのメリットは自治体によって内容が異なるため、詳しくはお住まいの自治体の福祉担当窓口で確認することが重要です 。また、判定された等級に不服がある場合は、通知が届いてから60日以内または3か月以内に審査請求の手続きを行うことが可能です 。