家族性地中海熱の遺伝子検査と費用

家族性地中海熱の遺伝子検査と費用

家族性地中海熱の遺伝子検査について
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検査費用の詳細

保険適用時の検査料は3,880点(38,800円)で、3割負担の場合は約11,640円

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MEFV遺伝子解析の意義

家族性地中海熱の確定診断に重要な役割を果たすが、限界も存在

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日本人患者の特徴

地中海沿岸地域とは異なる遺伝子変異パターンを示す

家族性地中海熱における遺伝子検査の保険適用と費用構造

家族性地中海熱(FMF)の遺伝子検査は、平成27年4月から保険適用となっており、検査料は3,880点と定められています 。これは38,800円に相当し、患者の自己負担割合によって実際の費用が決まります。3割負担の場合は約11,640円、2割負担では約7,760円、1割負担では約3,880円となります 。

参考)家族性地中海熱の遺伝子検査をする場合、費用はどのくらいですか…

MEFV遺伝子解析は、診療報酬コードD006-4(01オ)として分類され、家族性地中海熱遺伝子関連・染色体検査判断料100点が別途算定されます 。遺伝学的検査は遺伝子疾患が疑われる場合に行うもので、原則として患者1人につき1回限り算定できますが、2回以上実施する場合は医療上の必要性について診療報酬明細書に記載することが求められます 。

参考)MEFV遺伝子解析 (家族性地中海熱)

一部の医療機関では、遺伝カウンセリングと組み合わせて実施される場合があり、初回遺伝カウンセリングには約1万円程度の費用がかかることがあります 。しかし、遺伝学的検査自体の費用以外に、初診料や再診料、その他の検査費用が別途必要となる場合があるため、正確な総費用は受診予定の医療機関に直接確認することが重要です 。

参考)301 Moved Permanently

家族性地中海熱のMEFV遺伝子変異解析の診断的意義

MEFV遺伝子解析は家族性地中海熱の診断において重要な補助的役割を果たしますが、診断の基本は依然として臨床的判断に基づいています 。遺伝子変異があっても必ず発症するわけではなく、変異がない家族性地中海熱の患者も存在するため、遺伝子検査の結果は総合的に判断する必要があります 。

参考)家族性地中海熱(指定難病266) href=”https://www.nanbyou.or.jp/entry/4449″ target=”_blank”>https://www.nanbyou.or.jp/entry/4449amp;#8211; 難病情報セ…

MEFV遺伝子は16番染色体上の16p13.3領域に位置し、パイリンと呼ばれるタンパク質をコードしています 。このタンパク質は白血球に存在し、インフラマソームというタンパク質複合体の一部として炎症反応の制御に関与しています 。遺伝子変異によりパイリンタンパク質の機能が損なわれると、炎症反応の制御に異常が生じ、家族性地中海熱の症状が引き起こされると考えられています 。

参考)家族性地中海熱 – 遺伝性疾患プラス

興味深いことに、典型的な家族性地中海熱の症状があってもMEFV遺伝子に変異が認められない症例や、遺伝子変異があっても病気の症状が見られない症例も報告されており、この疾患の発症にはMEFV遺伝子以外の要因も関連している可能性が示唆されています 。このため、遺伝子検査は診断の一つの指標として活用し、臨床症状やコルヒチンの治療反応性などと組み合わせて総合的に診断することが重要です 。

参考)自己炎症性疾患(autoinflammatory disor…

家族性地中海熱遺伝子検査の精度と技術的限界

MEFV遺伝子検査の精度については、使用する検査方法により違いがあります。現在、多くの施設では次世代シーケンサーを用いた解析が行われていますが、短鎖リード型の次世代シーケンサーでは構造変化の検出が困難な場合があることが知られています 。

参考)https://www.genetest.jp/documents/tests/insured/K010-34_v6.pdf

家族性地中海熱の遺伝子検査では、MEFV遺伝子の全エクソン領域とその近傍のイントロン領域を対象として、点変異、小さな挿入・欠失変異の検出が行われます 。しかし、大きな欠失や重複、複雑な構造変化については検出が困難な場合があり、これが検査の技術的限界として認識されています 。
また、機能性遺伝子多型とされているE148Q変異は、単独のヘテロ接合体では家族性地中海熱を起こさず、ホモ接合体でも半数以上が無症状であることが知られています 。日本人では20~30%の頻度でE148Q変異のヘテロ接合体が見られるため、遺伝子解析でE148Qのみが見出された場合は慎重な判断が必要です 。このような遺伝子変異の解釈には専門的な知識が必要で、遺伝カウンセリングと合わせた総合的な評価が重要となります。

参考)https://www.jspid.jp/wp-content/uploads/pdf/02201/022010043.pdf

日本人における家族性地中海熱患者の遺伝子変異パターン

日本人の家族性地中海熱患者では、地中海沿岸地域の患者とは異なる遺伝子変異パターンが観察されています 。本邦では、M694I/M694IとM694I/E148Qが大部分を占めており、これは地中海沿岸地域で頻繁に見られるM694V変異とは明らかに異なる特徴です 。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4201677/

日本人家族性地中海熱患者75例を対象とした研究では、M694I/E148Qが14名(18.7%)、M694I/M694Iが5名(6.7%)と、M694I変異を含む複合ヘテロ接合体や同型接合体が高い頻度で認められました 。さらに、L110P/E148Q変異の組み合わせも複数例で確認されており、これらの変異パターンは日本人特有の分布を示しています 。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6148168/

特筆すべきことは、健常な日本人においてE148Q変異が40%以上という高頻度で認められることです 。これは家族性地中海熱の有病率が低い日本人集団における特異的な現象で、E148Q変異の病的意義の判定を困難にしている要因の一つです 。このような遺伝的背景の違いにより、日本人患者の診断や治療方針の決定には、欧米のガイドラインをそのまま適用するのではなく、日本人特有の遺伝子変異パターンを考慮した個別化医療が必要となります 。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3953057/

家族性地中海熱遺伝子検査における遺伝カウンセリングの重要性

家族性地中海熱の遺伝子検査を実施する際には、適切な遺伝カウンセリングの提供が不可欠です 。遺伝カウンセリングでは、家族歴の詳細な聴取、既往歴や症状について出生時からの状況確認、遺伝学的検査の適否に関する最終判断、遺伝学的検査に関する十分な情報提供が行われます 。

参考)https://tmdu-berc.jp/wp/wp-content/uploads/2022/06/e7c0a0dc2c1800f85e7517208c15fc8d.pdf

家族性地中海熱は常染色体劣性遺伝形式で遺伝するため、両親から引き継いだ2つのMEFV遺伝子の両方に変異がある場合に発症します 。しかし、まれに常染色体優性遺伝で遺伝する場合があるという報告もあり、遺伝形式の正確な判定には専門的な知識が必要です 。
遺伝カウンセリングでは、検査結果が陽性の場合の家族への影響、将来の妊娠・出産における意思決定への影響、生命保険加入への潜在的な影響なども含めて説明が行われます 。特に、自己炎症疾患の多くは遺伝性の疾患であるため、保険のプランによっては遺伝性疾患という理由で保険会社の規定により加入が制限される場合があることも説明されます 。このように、遺伝子検査は単なる診断ツールではなく、患者や家族の将来にわたる生活設計に影響を与える可能性があるため、十分な説明と同意に基づいて実施されることが重要です 。

参考)みんなの疑問