介護者と介助者の違い
介護者とは何か:定義と役割
介護者とは、要介護者が満足した生活を送れることを目標とした援助全般を行う人のことです 。厚生労働省の定義では、高齢者や病人、障がい者などの身の回りを世話したり生活を手助けしたりする人を指します 。
参考)介護者とは?
介護者の役割は多岐にわたり、身体的・精神的・社会的なサポートを総合的に提供することです 。具体的には、要介護者の日常生活にかかわるサポートだけでなく、専門家との関係構築や様々な行政手続き業務のサポートなども担います 。
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介護者は「専門介護者」と「非専門介護者」に大きく分けられます。専門介護者には看護師など看護の資格を持つ専門家とケアマネージャーやホームヘルパーなど介護専門の資格を持つ人がいます。一方、非専門介護者の多くは要介護者の家族です 。
平成13年の国民生活基礎調査によれば、主な介護者の71.1%が要介護者と同居している家族等介護者、7.5%が別居している家族等介護者、9.3%が事業者となっています 。
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介助者の定義と専門性
介助者とは、高齢者や障がいなどにより身体が不自由な方に対し、日常生活の動作における支援やサポートを行う行為のことです 。1974年発刊の『社会福祉辞典』によると、「1人で動作出来ない人に対する食事、排便、寝起きなど、起居動作の手助けを『介助』」と定義されています 。
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介助者の大きな目的は、支援を受ける方の生活の質の向上を目指すことです。介助者は、生活全般をサポートするのではなく、できないことに焦点を当てて支援し、可能な限り自分で生活できるように見守りつつ介助を行います 。
介助の種類には三大介助と呼ばれる「食事介助」「入浴介助」「排泄介助」があります 。食事介助では誤嚥を防ぐために食べる姿勢を整えたり、飲み込みを助ける声かけや水分補給を行います 。
参考)https://job.kiracare.jp/note/article/1961/
医療現場では、介助者に高度な専門知識とスキルが求められます。例えば、同行援護従業者養成研修は視覚障がいがある方の同行援護を行うために必要な資格で、移動時の補助、必要な情報の代読や代筆、移動に伴う食事や排泄などの介助を行えるようになります 。
参考)https://job.kiracare.jp/note/article/368/
介護者と介助者の支援範囲と目的の違い
介護と介助には目的にも違いがあり、介助は一つの行動が完了すると目的達成ですが、介護は多岐にわたる支援を通して「自立した生活への回復、または現状維持」を目指します 。
介護の定義は「身の回りの世話全般を行う生活援助(家事援助)家事などの生活支援」となります。一方、介助の定義は、日常生活動作(ADL)をサポートする「行為」のことで、つまり介護の中に介助の意味も含まれているのです 。
介助は一時的な支援をおもな目的とし、日常生活の「できないこと」だけをサポートするものです。一方で介護は、長期間にわたり介助が必要で、要介助者の身体機能の低下を防ぎ、自立した生活を維持・回復することを目的としています 。
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介助は日常生活動作の1つのサポートが終われば役割は終わりますが、介護は日常生活全体のなかから介助を組み合わせることで目的を達成できるものです 。そのため、介助は介護の一部として捉えられ、介護は日常生活全般を手助けする行為だといえるでしょう。
介護者のストレス管理とバーンアウト対策
介護者が直面する心理的、身体的な負担は深刻で、長時間のケア、感情的なストレス、経済的な負担などが主な課題として挙げられています 。介護生活が長期化すると、介護者は孤独感や不安、ストレスを抱えやすくなります 。
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介護バーンアウト(燃え尽き症候群)は、介護疲れが極度に進行した状態です。情緒的な消耗感、脱人格化(思いやりのない対応)、個人的達成感の低下が主な特徴です 。バーンアウトの主な兆候として、以前は楽しめていたことに興味が湧かない、介護対象者に対して無関心になったり冷たい態度をとってしまう、どれだけ頑張っても達成感が得られないなどがあります 。
対処法としては、まず休息を確保することが最優先です。介護から一時的に離れる時間を作り、心身を休ませる必要があります。訪問診療やレスパイトケアなどのサービスを利用し、介護負担を軽減することも有効な手段です 。
燃え尽き症候群を防ぐためには、ご利用者様と一定の距離を保つこと、適度な休息をとることが重要です。「傾聴」「受容」「共感」はコミュニケーションの基本姿勢ですが、共感しすぎると心身ともに疲れ果ててしまう恐れがあるため、冷静な判断ができるように一定の距離を保つことが求められます 。
参考)介護・福祉・医療の現場で多い「燃え尽き症候群(バーンアウト)…
医療現場における介助技術と支援システム
医療現場での介助には、高度な技術と専門知識が必要です。車椅子移乗介助動作では、介助者の足位置の違いによる動作の分析や、患者と介助者の身長差を考慮した技術が研究されています 。移乗補助具の使用、種類、使用姿位の違いが移乗介助動作時の腰部負担に与える影響も重要な研究テーマです 。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/cbe7be622b11d40f9572621c99f7ee2eeee655ae
現代の医療現場では、ロボット技術の導入が進んでいます。リハビリ支援ロボットは、脳卒中や脊髄損傷による麻痺の改善のサポートを行い、装着型ロボット「HAL」を使用すれば、重度の麻痺がある患者さんでも腕や歩行のリハビリテーションが可能になります 。
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また、音声やタッチパネルで患者の話し相手になるロボットや、AIや温度測定技術、顔認証データベースなどと連動させたバイタル管理やカウンセリングを行うシステムも実用化されています 。これらの技術により、医療従事者の身体的負担を減らすだけでなく、最適なリハビリテーション計画を立てることができ、患者さんはより効果的なリハビリテーションを受けられます 。
コミュニケーションスキルも重要な介助技術の一つです。「傾聴」「共感」「受容」の3つの基本スキルや、ラポール法による信頼関係の構築、利用者の言葉や感情をそのまま受け入れる受容的な対応が、質の高い介助を提供する上で不可欠です 。
参考)高齢者介護におけるコミュニケーションの目標や重要性を解説!役…
厚生労働省公式サイト – 介護保険制度や介護者支援に関する最新の政策情報
J-STAGE – 介護・介助に関する学術論文や研究データ