ヒアルロニダーゼ種類と効果の医療従事者向け解説

ヒアルロニダーゼの種類と特性

ヒアルロニダーゼの基本分類
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人由来製剤

遺伝子組み換え技術により製造、アレルギーリスクが最小

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動物由来製剤

羊・牛由来の酵素、高濃度だがアレルギー反応のリスクあり

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精製レベル

不純物の除去回数により安全性が大きく変わる

ヒアルロニダーゼ人由来製剤の特性

人由来のヒアルロニダーゼは、遺伝子組み換え技術を用いて製造された最も安全性の高い製剤です 。体内の自然な酵素に近い構造を持ち、動物由来成分や不純物が含まれていないため、アレルギー反応が起こりにくいという大きな利点があります 。

参考)ヒアルロン酸の溶解・修正・不自然さリセットならヒアルロニダー…

代表的な人由来製剤である「ヒレネックス」は、FDA(Food and Drug Administration)の厳格な審査基準をクリアしており、高い安全性が証明されています 。1バイアル当たり150単位のヒアルロニダーゼが含有されており、美容医療の分野で広く使用されています 。

参考)ヒレネックス(人由来ヒアルロニダーゼ)

しかし、人由来製剤の欠点として、1バイアル中の有効量が少ないため、費用対効果の観点から制限がある点が挙げられます 。広範囲の施術や大量溶解が必要な場合、複数バイアルの使用により高額な費用がかかることもあります 。

参考)ヒアルロニダーゼの広範囲・大量使用について

ヒアルロニダーゼ動物由来製剤の特徴

動物由来のヒアルロニダーゼは、主に羊や牛の精巣から抽出されて製造されます 。最大の利点は、1バイアル当たりの単位数が多く(通常1500単位)、大量使用に適していることです 。また、人由来製剤と比較して価格が圧倒的に安いため、経済的な選択肢として重要です 。

参考)【設備技術紹介】ヒトリコンビナントヒアルロニダーゼについて

しかし、動物由来製剤の主な問題点は不純物の多さです。動物タンパク質が含まれるため、アレルギー反応やアナフィラキシーショックのリスクが高くなります 。特に過去にアレルギー歴のある患者では、慎重な検討が必要です 。

参考)ヒアルロニダーゼについて【選び方と危険性・リスク・副作用】

近年では、精製技術の向上により「ハイラックス」のような5回精製された高純度の動物由来製剤も登場しており、アレルギーリスクを大幅に軽減しています 。これらの高純度製剤は、人由来製剤に匹敵する安全性を持つとも評価されています 。

参考)ヒアルロン酸溶解注射「HIRAX」

ヒアルロニダーゼ種類別適用量と効果の比較

ヒアルロニダーゼの使用量は、対象となるヒアルロン酸の種類や量によって大きく異なります 。一般的に、ジュビダームシリーズなどの高クロスリンクフィラーでは、0.1ccあたり20-40単位以上が必要とされており、特にボリューマでは45単位以上が推奨されています 。

参考)ヒアルロニターゼ何単位でヒアルロン酸何cc溶けるのか

効果の発現時期について、ヒアルロニダーゼは注射後数時間で作用を開始し、通常2日程度でヒアルロン酸の分解が進行します 。早い場合では24時間以内に目に見える変化が現れ、一般的には数日で元の状態に戻ります 。効果の持続期間は2-3日間で、1週間程度で完全に効果がなくなると考えられています 。

参考)https://kili-clinic.jp/column/1853/

使用量の目安として、通常の製剤であればヒアルロン酸1ccに対してヒアルロニダーゎ1cc(150単位)が基準となります 。硬い製剤(ボリューマ、ボラックス、クレヴィエルなど)では、より多くの単位数が必要となり、場合によっては複数回の注射が必要です 。

参考)ヒアルロン酸注射ならポラリスクリニック|中野にある皮膚科

ヒアルロニダーゼ種類選択の臨床指針

医療従事者がヒアルロニダーゼの種類を選択する際の重要な指針として、患者の安全性を最優先に考慮する必要があります。過去に動物由来製剤でアレルギーが出た患者や、溶解するヒアルロン酸量が少ない場合には、人由来のヒレネックスの使用が推奨されます 。
血流障害が疑われる緊急時には、300単位を小区画に分割注入する必要があり、この場合は高濃度の動物由来製剤が有効です 。一方、通常の美容的修正では、患者の安全性とコストのバランスを考慮し、高純度に精製された動物由来製剤も選択肢となります 。
アレルギーテストの実施については、施設により対応が分かれるところですが、特に羊由来製剤のアレルギーテストで陽性反応が出た場合、2週間程度の発赤と腫れ、かゆみが続くことがあるため、慎重な判断が必要です 。現在多くのクリニックではアレルギーテストを省略している傾向にありますが、患者の既往歴の詳細な聴取は必須です 。

参考)ヒアルロン酸分解注射・溶解注射(ヒアルロニダーゼ)とは?|注…

ヒアルロニダーゼ種類別の独自の安全管理プロトコル

従来の安全管理に加えて、各種ヒアルロニダーゼの特性を活かした独自のプロトコルが重要です。人由来製剤では、単位数の制約を補うため、効果判定を慎重に行い、必要に応じて追加注射のタイミングを適切に設定することが鍵となります 。
動物由来製剤では、アレルギー反応の早期発見システムが重要です。注射後30分間の観察はもちろん、48時間以内の遅発性反応についても患者への十分な説明と連絡体制の確保が必要です 。特に、蕁麻疹呼吸困難などの全身症状への対応準備は欠かせません 。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2831570/

最新の高純度動物由来製剤(ハイラックスなど)では、従来の動物由来製剤と人由来製剤の中間的な位置づけとして、適切な患者選択と使用量の最適化により、安全性と効果の両立が可能です 。これらの製剤では、5回の精製工程により不純物が極限まで除去されているため、従来の動物由来製剤よりも格段に安全性が向上しています 。