酸素吸入の効果と在宅酸素療法の適応基準

酸素吸入の効果

酸素吸入の主要な治療効果
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血中酸素濃度の改善

酸素分圧の正常化により全身組織への酸素供給が安定

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循環系負担の軽減

心拍数増加や心肥大の抑制により心不全予防効果

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身体活動能力の向上

呼吸困難の緩和により日常活動範囲が拡大

酸素吸入による血中酸素濃度の正常化

酸素吸入の最も基本的な効果は、動脈血中の酸素分圧(PaO2)を正常範囲に近づけることです 。肺での酸素取り込み機能が低下している患者では、血液中の酸素濃度が低下し、全身の組織に十分な酸素が届けられません 。酸素吸入によって一定濃度の酸素を継続的に供給すると、血中酸素飽和度(SpO2)が正常に近づき、細胞レベルでの酸素代謝が安定します 。

参考)在宅酸素療法(HOT)の仕組みと効果|治療原理から期待できる…

正常な血中酸素飽和度は96-99%とされており、90%未満では呼吸不全状態と判断されます 。酸素吸入により90%以上を維持することで、通常は充分に組織に酸素が供給されている状態となります 。血中酸素濃度の改善により、組織の低酸素状態が解消され、エネルギー産生が効率化されるため、全身の代謝機能が向上します 。

参考)https://www.atomed.co.jp/openfacemask/column/04/

酸素吸入による心臓への負担軽減効果

慢性的な低酸素状態では、心臓がより多くの血液を全身に送るため心拍数が増加し、心臓への負荷が増大します 。酸素吸入により血中酸素濃度が改善されると、心臓は過度に働く必要がなくなり、心負荷の軽減につながります 。特に肺高血圧症や慢性心不全の患者では、酸素吸入により肺血管が拡張し、右心房の負担が著明に減少します 。

参考)在宅酸素療法とは

心臓への負担軽減により、心不全の進行抑制や不整脈の予防効果が期待できます 。長期的には高血圧や心筋梗塞などの心血管系合併症のリスクを抑制する効果もあります 。また、入院回数の減少により患者の生活の質が向上し、より元気に日々の生活を送ることが可能になります 。

参考)在宅酸素療法~対象疾患・治療の目的・効果について~ – にわ…

酸素吸入による運動能力と生活機能の向上

酸素吸入により呼吸困難が軽減されると、歩行や日常動作が楽に感じられるようになり、身体活動能力が向上します 。慢性的な息切れで家に引きこもりがちだった患者でも、酸素吸入下では明らかに歩行時間が長くなり、身体への負担が軽減します 。この効果により、筋力低下や廃用症候群の予防にもつながります 。
酸素療法により期待できる具体的な改善には以下があります:息切れ・動悸の改善、長距離歩行などの運動能力向上、記憶力・注意力低下の改善、頭痛やイライラなどの症状改善 。睡眠中の低酸素も改善され、睡眠の質が向上することで、精神的なストレスの解消効果も期待されています 。

参考)https://www.picono-te.com/entry17.html

酸素吸入による代謝機能改善と疲労回復効果

酸素吸入は血行を改善し、代謝が上がることによって肉体的な疲労を回復させる効果があります 。体内の酸素が不足していると、効率的なエネルギー産生ができないため、疲労感や倦怠感が持続します 。酸素を十分に供給することで、エネルギーを効率よく産生できるようになり、心臓などの臓器への負担も軽減されます 。

参考)酸素は体にいい?

高濃度酸素では特定の疾患の治療以外にも、疲労軽減・回復の効用が期待されています 。また、細胞組織に十分な酸素を行きわたらせることによって体力の回復を早める効果があるほか、長期的な酸素不足による高血圧や心不全などの合併症を防ぐ効果もあります 。代謝機能の向上により、創傷治癒の促進や感染に対する抵抗力の向上も期待できます 。

参考)酸素は健康に有益か?|ドクターコラム|新百合ヶ丘総合病院

酸素吸入による脳機能と認知機能への効果

低酸素状態が持続すると、脳への酸素供給が不足し、判断力の低下、混迷、記憶力・注意力の低下などの認知機能障害が生じます 。酸素吸入により脳組織への酸素供給が改善されると、これらの症状の改善が期待できます 。特に高齢者では、慢性的な軽度の低酸素が認知機能に与える影響は大きく、適切な酸素療法により日常生活動作の維持につながります。
脳への酸素供給改善により、頭痛の軽減、集中力の向上、意識レベルの改善が認められます 。また、睡眠時無呼吸症候群などで夜間の低酸素が生じている場合、酸素吸入により睡眠の質が改善し、日中の眠気や疲労感の軽減効果も期待できます 。これらの効果により、患者の社会復帰や就労継続が可能となるケースも多く見られます。

参考)在宅酸素療法(COPDの治療)|元住吉くろさき呼吸器内科クリ…