人工関節と障害者手帳の申請条件と手続き

人工関節と障害者手帳の申請

人工関節と障害者手帳の基本情報
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2014年改正による変更

一律4級認定から機能評価による等級判定へ変更

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現在の認定条件

関節可動域や筋力テストによる詳細な機能評価

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申請に必要な書類

医師による診断書・意見書が最重要

人工関節手術後の障害者手帳認定基準の変遷

2014年4月以前は、人工股関節や人工膝関節の手術を受けた患者は一律に身体障害者手帳4級が認定されていました。しかし、医療技術の進歩により人工関節手術の成績が向上したため、身体障害者福祉法の改正が実施されました。

参考)https://www.fg-kshp.jp/patients/department/orthopedics/artificial-joint/column20230210-01.html

現在の認定基準では、人工関節を置換しただけでは自動的に障害者手帳は交付されません。代わりに、術後の関節機能の実際の状態に基づいて等級が判定される仕組みに変更されています。

参考)人工関節で4級/5級の障害者手帳を取得するメリットと認定基準…

この変更により、多くの人工関節手術患者は障害者手帳の認定対象外となったのが現実です。医療従事者としては、この制度変更を正確に理解し、患者に適切な情報提供を行うことが重要です。

人工関節における障害等級の具体的判定条件

現行制度において、人工関節手術後に障害者手帳を取得するためには、以下の厳格な条件を満たす必要があります。

膝関節の場合の等級分類:

  • 4級: 関節可動域10度以下、徒手筋力テスト2以下、高度の動揺関節・関節変形
  • 5級: 関節可動域30度以下、徒手筋力テスト3相当、中等度の動揺関節
  • 7級: 関節可動域90度以下、徒手筋力テスト4相当または2Km以上の歩行不可

股関節についても同様の基準:

股関節においても膝関節とほぼ同様の可動域制限と筋力低下の基準が設定されています。
注意すべき点として、7級単独では身体障害者手帳の交付対象外となっており、実質的に4級または5級の認定が必要です。通常の人工関節手術では、これらの条件を満たすことは極めて困難とされています。

人工関節手術の合併症と障害認定の関係

人工関節手術において最も重篤な合併症は感染で、発症率は0.5〜3.0%と報告されています。感染が発生すると、関節機能の著しい低下や追加手術が必要となり、結果として障害者手帳の認定条件を満たす可能性が生じます。

参考)人工関節の感染性関節炎 – 08. 骨、関節、筋肉の病気 -…

感染の種類と影響:

糖尿病関節リウマチ、ステロイド治療中の患者では感染リスクが高く、これらの患者では術後の機能回復が不良となる場合があります。感染により人工関節の除去や再置換術が必要となったケースでは、障害認定の条件を満たす可能性が高まります。

参考)https://www.fg-kshp.jp/patients/department/orthopedics/artificial-joint/column20230203-02.html

人工関節患者の申請手続きと必要書類

障害者手帳の申請には、以下の書類が必要です:

必須書類:

  • 身体障害手帳交付申請書
  • 身体障害者診断書または意見書(最重要)
  • 印鑑
  • マイナンバーカード

診断書・意見書は都道府県知事指定の医師によって作成される必要があり、関節可動域測定や徒手筋力テストの結果が詳細に記載されます。理学療法士作業療法士の評価も参考にされるため、リハビリテーション部門との連携が重要です。

参考)大阪市:身体障がい者手帳 (…href=”https://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000007734.html” target=”_blank”>https://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000007734.htmlgt;障がいのある方へhref=”https://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000007734.html” target=”_blank”>https://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000007734.htmlgt;各種手帳の…

申請時期に制限はありませんが、術後の経過が安定した時点での評価が求められます。一般的には、術後6ヶ月以降の機能評価が推奨されています。

人工関節手術における医療従事者の役割と患者指導

医療従事者として、患者に対する適切な情報提供と期待値の調整が重要です。現行制度では、通常の人工関節手術後に障害者手帳を取得することは「非常に困難」であることを明確に説明する必要があります。

患者指導のポイント:

  • 制度変更(2014年改正)の背景説明
  • 現実的な認定の可能性(ほぼゼロに近い)
  • 合併症発生時の対応方針
  • 障害年金制度との違いの説明

興味深い点として、人工関節手術では障害年金の受給は比較的容易で、原則として3級認定されます。障害者手帳と障害年金は別制度であることを患者に説明し、経済的支援については障害年金制度の活用を検討することが実践的です。

参考)人工関節をそう入置換されたみなさまへ – 東京中央障害年金・…

医療従事者は、患者の社会復帰と生活の質向上を総合的に支援する観点から、各種制度を適切に案内することが求められます。