ビフィズス菌BB536の効果
ビフィズス菌BB536の整腸作用メカニズム
ビフィズス菌BB536は、1969年に乳児から発見されたBifidobacterium longum種の代表的なプロバイオティクス株です。本菌株の最も基本的かつ重要な機能は整腸作用であり、これは主に短鎖脂肪酸、特に酢酸の産生を通じて発揮されます。
参考)https://www.morinagamilk.co.jp/health/material/bifidobacterium_BB536/
酢酸は強力な抗菌活性を持ち、大腸菌をはじめとする有害菌の増殖を抑制します。また、ビフィズス菌BB536の摂取により腸内のビフィズス菌割合が有意に増加し、便秘気味の女性において排便回数の改善が確認されています。この効果は通常の乳酸菌のみで作製されたヨーグルトよりも高い有効性を示すことが臨床試験で実証されています。
参考)https://www.nyusankin.or.jp/wp/wp-content/uploads/2019/12/Nyusankin_485_a.pdf
森永乳業の研究により、本菌株は他の腸内細菌と協働してビオチンや酪酸の増加も促進することが明らかになっており、これらの代謝産物が腸粘膜の保護や免疫機能の調節に寄与しています。
参考)https://www.rakuten.ne.jp/gold/pycno/special/about_bifidobacteria.html
ビフィズス菌BB536の高齢者便秘症に対する臨床効果
順天堂大学が実施した画期的な臨床研究により、ビフィズス菌BB536の高齢者慢性便秘症に対する有効性が科学的に実証されました。この研究は、65歳以上の慢性便秘症患者80名を対象としたプラセボ対照二重盲検試験として本邦で初めて実施されました。
参考)https://www.juntendo.ac.jp/news/00664.html
研究結果では、ビフィズス菌BB536を500億個含む粉末を4週間摂取した群において、プラセボ群と比較して「排便回数」の有意な改善が認められました。さらに注目すべきは、「排便未完遂回数」や「便秘症状重症度(CSS)スコア」においても改善傾向が確認されたことです。
興味深いことに、本研究では便秘症状の改善に加えて、上腹部症状の顕著な改善も観察されました。具体的には「胸やけ」「嚥下時つかえ」「胃もたれ」「喉違和感」などの症状が有意に軽減し、FSSGスコア(胃食道逆流症問診票)の総合スコアも改善されました。この結果は、ビフィズス菌BB536が腸-胃軸を通じた機能性消化管障害全体に対する治療効果を持つ可能性を示唆しています。
ビフィズス菌BB536の免疫調節機能と感染防御効果
ビフィズス菌BB536の免疫調節作用は、自然免疫と獲得免疫の両方に及びます。高齢者を対象とした臨床研究では、本菌株の継続摂取により自然免疫細胞であるNK(ナチュラルキラー)細胞や好中球の活性が有意に向上することが確認されています。
参考)https://bifidus-fund.jp/meeting/pdf/18th/award_1.pdf
特に感染防御効果については、65歳以上の高齢者27名を対象とした19週間の臨床試験において、ビフィズス菌BB536粉末(1,000億個/日)の摂取により、インフルエンザ発症者数と38℃以上の発熱者数が対照群と比較して有意に減少しました。この効果は、本菌株が誘導する免疫細胞の活性化によるものと考えられています。
さらに、経腸栄養管理を受ける高齢者への12週間の投与試験では、NK活性の維持と血中IgA値の増加傾向が観察され、高齢者の低下した免疫機能を調節する効果が示唆されました。これらの知見は、医療施設や介護施設における感染症対策の補助的手段として、ビフィズス菌BB536の活用可能性を示しています。
ビフィズス菌BB536のアレルギー症状緩和メカニズム
ビフィズス菌BB536の抗アレルギー作用は、Th1/Th2免疫バランスの調節を通じて発揮されます。アレルギー反応の主要な原因であるTh2細胞の過剰な活性化を抑制することで、症状の軽減を図ります。
具体的なメカニズムとして、本菌株はTh2細胞からのIL-4(インターロイキン-4)分泌を抑制し、これによりB細胞からのIgE抗体産生を低下させます。また、TARC(胸腺および活性化調節ケモカイン)やMDC(マクロファージ由来ケモカイン)などのTh2ケモカインの産生も抑制することが示されています。
スギ花粉症患者44名を対象とした13週間の臨床試験では、花粉飛散期の約1ヶ月前からビフィズス菌BB536粉末(1,000億個/日)を継続摂取することで、くしゃみ、鼻づまり、鼻のかゆみなどの自覚症状が有意に緩和されました。さらに、目や喉の不快感の軽減も確認されており、花粉症に伴う多様な症状に対する包括的な改善効果を示しています。
ビフィズス菌BB536の潰瘍性大腸炎に対する治療補助効果
潰瘍性大腸炎は自己免疫異常により大腸粘膜に慢性炎症を来す疾患ですが、ビフィズス菌BB536は本疾患に対しても治療補助効果を示します。14名の潰瘍性大腸炎患者を対象とした24週間の臨床研究では、本菌株の継続摂取により臨床活動指数(CAI)スコアの有意な改善が認められました。
この効果は、ビフィズス菌BB536が産生する酢酸による腸粘膜保護作用と、炎症性サイトカインの産生抑制によるものと考えられています。また、腸内細菌叢の多様性改善により、病原性細菌の定着を阻害し、腸管バリア機能の回復を促進することも示唆されています。
医療現場においては、従来の薬物療法と併用することで、症状の安定化と再燃予防に寄与する可能性があります。ただし、重症例や急性期においては主治医との十分な相談のもとで使用を検討することが重要です。
順天堂大学による高齢者慢性便秘症患者に対するビフィズス菌BB536の有効性を示した臨床研究
森永乳業によるビフィズス菌BB536の包括的な健康効果に関する研究データ