強直性脊椎炎の画像診断まとめ
強直性脊椎炎のX線画像所見の特徴
強直性脊椎炎のX線画像診断においては、特徴的な画像所見を理解することが診断の鍵となる 。最も重要な所見は、両側性の仙腸関節炎で、関節面の硬化像・侵食像が認められ、改訂NewYork基準では両側grade 2以上、または一側grade 3以上の仙腸関節炎が診断基準として定められている 。
椎体病変の初期X線所見として、椎体辺縁のerosionによる欠損像であるRomanus病変が重要で、その周囲には硬化性変化を伴っており「shiny corner」と呼ばれる所見を示す 。これらの変化が進行すると椎体全体が四角に見えるようになり、「squaring」と呼ばれる変化を呈する 。
参考)遠隔画像診断した疾患;強直性脊椎炎(Ankylosing s…
進行した症例では、前後縦靱帯の骨化を反映した「bamboo spine(竹様脊柱)」が認められ、これは椎骨間に余分な骨が形成され、癒合が完全な部位で特徴的な外観を呈する 。bamboo spineは骨折しやすく偽関節となることがあるため、外傷歴のある患者では特に注意深い観察が必要である 。
参考)Image:強直性脊椎炎(竹様脊柱)-MSDマニュアル プロ…
強直性脊椎炎のMRI画像診断のポイント
MRI画像診断では、炎症の存在と構造的変化を的確に評価することが重要である 。撮像にはT1強調像と脂肪抑制T2強調像(STIR)の両方が必須で、通常は矢状断で撮像し、スライス厚は最大4mmが推奨される 。
参考)強直性脊椎炎の画像診断 | さいとう整形外科リウマチ科(名古…
炎症所見の評価では、T1強調像で低信号かつ、STIR画像または脂肪抑制T2強調像で高信号に描出される骨髄浮腫の有無で判断する 。STIR画像は特にFluid-sensitive MRI sequenceとして指定して撮影することで、骨髄浮腫を効果的に描出できる 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/cra/35/1/35_4/_pdf/-char/ja
MRIでは、単純X線では所見がない早期仙腸関節炎を診断することが可能で、骨炎や早期のびらんが示される 。仙腸関節病変のMRI信号として、骨炎・骨髄浮腫はT1低信号・STIR高信号、脂肪変性はT1高信号・STIR低信号、硬化性病変はT1低信号・STIR低信号として描出される 。
参考)強直性脊椎炎 – 06. 筋骨格系疾患と結合組織疾患 – M…
強直性脊椎炎の特異的画像病変の解釈
Anderson病変は、椎体や椎間板が白くなっているびまん性の破壊性病変で、MRIではT2強調像やSTIR画像で高信号を示し、椎体終板を主体とする骨破壊と周囲の骨硬化を特徴とする 。この病変は強直性脊椎炎に特徴的な所見として重要である。
Romanus病変は炎症性脊椎関節炎の早期所見として重要で、椎体隅角にT1強調像で低信号、T2強調像で高信号、造影後増強効果を示すenthesitisをMRIではより早期に指摘できる 。活動性のRomanus病変では椎体の前後縁に侵食と不整が認められる 。
参考)https://radiopaedia.org/cases/andersson-and-romanus-lesions
靱帯組織の骨化によって形成されるsyndesmophyteは、両側対称性に多部位に連続して進展すると竹のような形態となり、bamboo spineを呈する 。さらに、坐骨結節や腸骨稜といった筋肉付着の骨面には新骨形成を認める特徴がある 。
強直性脊椎炎の診断基準と画像評価
現在の診断には、改訂NewYork基準(1984年)とASAS分類基準(2009年)が用いられている 。改訂NewYork基準では、臨床症状(3ヶ月以上続く腰痛、腰椎運動制限、胸郭運動制限)と仙腸関節X線所見を組み合わせて診断する 。
参考)強直性脊椎炎|大阪大学大学院医学系研究科 呼吸器・免疫内科学
ASAS基準では「45歳未満で3ヶ月以上続く慢性腰痛」を対象とし、画像所見陽性(X線またはMRIで活動性の仙腸関節炎)+脊椎関節炎の特徴的所見1項目以上、または HLA-B27陽性+脊椎関節炎の特徴的所見2項目以上のいずれかを満たす場合に軸性脊椎関節炎と分類される 。
参考)強直性脊椎炎(AS)
血液検査では、日本人患者の約75%がHLA-B27を保有し、炎症マーカー(CRP、ESR)の評価も重要である 。ただし、HLA検査は保険適用になっていない点に注意が必要である 。診断には患者の症状経過・画像・血液検査など総合的な評価が重要で、ASASの骨髄浮腫所見では健常者やアスリート、出産後の女性でも偽陽性を示すことがある 。
参考)https://nagabiku-yotu.com/introduction/
強直性脊椎炎画像診断における鑑別診断と注意点
強直性脊椎炎の鑑別診断では、他の脊椎関節炎との区別が重要である 。仙腸関節炎の分類として、感染性(化膿性、肉芽腫性)と非感染性(血清反応陰性脊椎関節症、関節リウマチ、炎症性腸疾患に伴う仙腸関節炎、SAPHO症候群、結晶沈着性関節症)に大別される 。
画像評価における注意点として、X線変化は炎症によってすぐに変化するものではなく、数年の経過が必要である点が挙げられる 。MRIでは構造的変化だけでなく炎症所見も描出可能で、早期診断に有用であるが、ルーチンの診断における役割については前向きのデータが限られている 。
参考)http://www.spondyloarthritis.jp/common/img/axspa.pdf
CTは、単純写真では指摘できない仙腸関節炎による微小なerosionや硬化性変化を捉えることができ、特にレントゲンの変化が軽度である場合の評価に有用である 。また、環軸椎の亜脱臼をきたすことがあるため、頚椎の評価も重要である 。
参考)膠原病・リウマチ内科|脊椎関節炎(特に強直性脊椎炎)|順天堂…
強直性脊椎炎の詳細な診断基準と画像所見について記載されたMSDマニュアル
東京大学病院アレルギーリウマチ内科による強直性脊椎炎の臨床症例と画像所見の解説