筋電図でわかること医療従事者への完全ガイド

筋電図でわかること

筋電図検査で判明する主要な情報
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神経伝導の状態

脊髄から筋肉への神経信号の伝達状況と運動単位の活動度合いを評価

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筋肉の機能状態

筋線維の電気的活動と収縮時の異常な活動電位パターンを検出

疾患の鑑別診断

神経原性と筋原性障害の区別および具体的な疾患の特定に寄与

筋電図検査の基本原理とわかること

筋電図検査は、筋線維から発生する活動電位を記録し、神経と筋肉の機能状態を客観的に評価する重要な診断ツールです。この検査により、筋力低下の原因が筋そのものにあるか、神経経路に障害があるかを判断できます。

参考)(3)筋電図から得られる情報

筋電図は筋力と同等ではなく、筋が収縮し筋力を発揮しているときに筋活動電位がどの程度、どのように発生したかを表現しています。具体的には、運動単位の参加度合いを示しており、徐々に筋力を増加させた場合、筋力の増加とともに筋電図の振幅も大きくなることが確認されています。
筋電図から得られる情報として、脊髄の前角細胞、神経線維、神経筋接合部、筋のいずれかの障害を特定できます。これにより、筋力低下、筋萎縮、線維性攣縮、感覚障害などの病態を評価する際の重要な手がかりとなります。

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/59/1/59_59.79/_pdf

筋電図の種類と各々でわかること

筋電図検査には主に表面筋電図と針筋電図の2種類があり、それぞれ異なる情報を提供します。表面筋電図は皮膚表面に電極を貼付して筋活動を記録し、筋の収縮状態を量的および時間的に解析することで運動単位の活動状況を把握できます。

参考)各検査(筋電図・神経伝道検査など)|川越市のなるかわ内科・脳…

針筋電図では、針電極を筋肉に直接刺入して深部の筋活動を詳細に観察し、神経原性と筋原性の障害を鑑別できます。正常では静止時の筋は電気的に無活動ですが、わずかに収縮すると単一運動単位の活動電位が現れます。

参考)筋電図検査と神経伝導検査 – 07. 神経疾患 – MSDマ…

収縮が増大するにつれて筋活動電位の数が増え、干渉パターンを形成することが確認されています。脱神経が起きた筋線維では、刺入時活動の増大および異常な自発的活動(線維性攣縮、線維束性収縮)が認められ、収縮時には動員される運動単位が減少します。

筋電図異常パターンでわかる疾患の特徴

筋電図の異常パターンにより、特定の疾患を鑑別できます。末梢神経障害では神経伝導速度の低下や振幅の減少が特徴的で、糖尿病やビタミン欠乏、外傷による神経損傷などが原因となります。筋ジストロフィーや筋萎縮症では、筋肉自体に変性が生じるため特徴的な波形パターンを示します。

参考)筋電図検査(筋電図 / Electromyography /…

ALS(筋萎縮性側索硬化症)の診断においては、針筋電図検査が必須とされており、下位運動ニューロンの障害の確認に用いられます。線維束性収縮の増加や針筋電図での神経原性変化が特徴的な所見として観察されます。

参考)筋萎縮性側索硬化症(ALS)を知り多職種連携で支援する

重症筋無力症では反復刺激での漸減現象(伝導ブロック)が認められ、筋疲労しやすい症状と関連します。ギラン・バレー症候群では急激な四肢麻痺を呈し、神経伝導速度の低下と伝導ブロックが特徴的な所見となります。

筋電図検査手順でわかる詳細情報

筋電図検査は段階的に実施され、各段階で異なる情報が得られます。問診では症状の種類や発生状況、既往歴を詳しく聞き取り、身体診察で筋力チェック、反射検査、痛覚・触覚評価を行います。
表面電極による検査では筋肉表面に電極を装着して基本的な筋活動の波形を記録し、続いて針電極を刺入して深部の筋活動を検証します。これにより神経・筋肉の障害部位をより正確に把握できます。
検査中は基線を確認し、アーチファクト(雑音)が混入していないかを慎重にチェックします。モーションアーチファクト、交流電流、心電図などの目的とする筋の筋電図以外の電気信号を除去することで、正確な診断情報を得ることができます。

参考)(1)筋電図の計測

筋電図波形解析でわかる運動単位の異常

筋電図の波形解析により、運動単位活動電位(MUAP)の詳細な特徴を把握できます。正常な筋電図では、脊髄からα運動ニューロンを経由して筋線維に到達する信号が記録されます。上腕二頭筋の場合、約700個の運動単位から構成され、各運動単位に約700本の筋線維が含まれています。

参考)筋肉と筋電計測#1 〜筋電ことはじめ〜|SPORTS SEN…

線維束性収縮(fasciculation potential)は1つの運動単位に属するすべての筋線維もしくはその一部が自発放電することにより生じ、completely irregular(全く不規則)に出現することが特徴です。この所見は神経原性に特異的であり、ALS診断の重要な指標となります。

参考)針筋電図検査 総論│医學事始 いがくことはじめ

複合反復放電(CRD)では筋繊維の1つがペースメーカーとなり、活動電位が隣接する筋繊維へ伝わってサーキットを形成します。一定間隔で放電し突然停止することが特徴で、慢性の筋原性・神経原性変化いずれでも認められます。ミオキミー放電は神経由来の末梢神経興奮性亢進(PNH)により生じ、2-10連、50Hz程度の特徴的な放電パターンを示します。