小柴胡湯の効果と適応症:急性期から慢性疾患まで

小柴胡湯の効果と適応症

小柴胡湯の効果の特徴
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炎症抑制作用

胸脇部の熱証を取り、上半身の炎症を速やかに抑制する

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消化機能調整

胃腸機能を整え、食欲不振や悪心嘔吐を改善する

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気の流れ調整

滞った気の流れを整え、自律神経のバランスを調節する


小柴胡湯は柴胡、黄芩、半夏、人参、甘草、生姜、大棗の7種類の生薬から構成される代表的な漢方処方です 。特に急性熱性疾患、肺炎、気管支炎、感冒、慢性胃腸障害、慢性肝炎における肝機能障害の改善など幅広い疾患に対して保険適応があります 。原典は『傷寒論』と『金匱要略』で、少陽病の代表的な処方として位置づけられています 。

参考)https://www.radionikkei.jp/kampotoday/docs/kampo-090708.pdf

小柴胡湯の急性期感冒に対する効果

小柴胡湯はかぜをこじらせた際に特に有効です 。発症後5日程度経過したかぜに用いられ、口の苦みを感じる方に適しています 。二重盲検ランダム化比較試験では、発病後5日以上経過した感冒患者331例に対して小柴胡湯の効果を評価した結果、有効率は約64%でプラセボ群の43%と比較して有意に優れていました 。

参考)ツムラ漢方小柴胡湯エキス顆粒 – 一般用漢方製剤・一般用医薬…

ウイルスが起こした炎症を抑える働きと、消耗した体の機能を回復させる働きの両方が必要な状況で、小柴胡湯は炎症を抑制するとともに胃腸機能を整え、微熱や吐き気を伴うこじらせたかぜを改善します 。投与3-4日後では咽頭痛、倦怠感、投与終了時には痰の切れ、食欲、関節痛・筋肉痛の項目でプラセボ群と比較し小柴胡湯投与群が有意に優れていました 。

参考)小柴胡湯(しょうさいことう) : 漢方薬のことなら【QLif…

小柴胡湯の胸脇苦満と口苦への効果

小柴胡湯は「半表半裏証」の代表薬として、体内に入り込んだ邪気が胸脇などの身体側面で正気と格闘する状態を改善します 。特に胸脇苦満(胸脇が痛く、詰まった感じ)が現れます 。

参考)https://allabout.co.jp/gm/gc/393396/

急性熱性疾患にかかって五、六日経つと「往来寒熱」や「胸脇苦満」が現れ、食欲不振、腹痛、胃炎、尿量の減少などにも応用できます 。肋骨の下やわきに圧痛があれば、小柴胡湯で病因を解毒し中和する効果があります 。

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主薬である柴胡は滞った気の流れを整え、体内にこもった熱を冷まし、黄芩は柴胡の働きを助けて炎症を抑制します 。

小柴胡湯の炎症性疾患への効果

小柴胡湯は解熱、消炎、止嘔、解毒の効果を持ち、亜急性から慢性炎症性疾患まで広く用いられます 。特に「胸脇の熱証」(臓器的には肺、胃、膵臓、脾臓、肝臓、胆のうなどの熱)を取る作用が強いです 。

参考)副作用で有名な「小柴胡湯」。実は万能な漢方薬です。

現在では抗ウイルス薬などの西洋薬で治療が可能になった肝炎治療に代わり、肺や気管支の炎症、脳血管障害に伴う脳の炎症治療薬として用いられることが多くなりました 。肺炎の急性期では、1週間は少なくとも4時間ごとの投与が必要となり、新型コロナウイルス感染症による肺炎にも用いられています 。
扁桃炎、気管支炎、肺炎、胸膜炎、気管支喘息といった呼吸器疾患や、慢性肝炎、急性胃炎、機能性胃腸症、消化性潰瘍などの上部消化器疾患、ウイルスによる伝染性単核球症やリンパ節炎などの急性から亜急性の炎症性疾患が適応となります 。

参考)https://www.radionikkei.jp/kampotoday/docs/kampo-160210.pdf

小柴胡湯の構成生薬による薬理作用

小柴胡湯の効果は7つの生薬の協調作用によって発揮されます 。柴胡と黄芩の組み合わせで清熱作用・消炎作用に繋がり、半夏は水毒を去る力が強く柴胡と組み合わせて咳(肺の熱水毒)にも使用されます 。
人参には「白人参」と「竹節人参」があり、白人参は体質改善、竹節人参は炎症を取る作用があります 。半夏・生姜は上昇する胃の気を抑えて悪心や嘔吐を解消し、人参・甘草は脾の働きを高めて気の産生を助けて抵抗力を強くします 。

参考)https://pharmacist.m3.com/column/kampo_hukusayo/6673

大棗・生姜は胃の働きを高めて気の産生を助け、柴胡は少陽経の流れをよくし、黄芩は発熱した胆や肝、上半身を冷やし炎症を抑制します 。このように各生薬が消化機能を高めて気を補い、甘草がそれぞれの生薬の調和薬となっています 。

小柴胡湯の現代医学的効果メカニズム

現代の研究では、小柴胡湯の多面的な効果メカニズムが明らかになっています。抗うつ様行動に対する効果では、慢性拘束ストレスラットにおいて海馬神経新生を回復させ、うつ様行動を改善することが報告されています 。また、高脂肪食誘発肥満や慢性炎症に対しても、インターロイキン6や腫瘍壊死因子αなどの炎症性サイトカインを減少させる効果があります 。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9072803/

敗血症モデルマウスでは、TLR4/MyD88/NF-κBシグナル経路を介した抗敗血症効果が確認されており、白血球や血小板数の改善、血清中の一酸化窒素レベルの正常化を示します 。これらの研究結果は、小柴胡湯が単なる症状改善だけでなく、分子レベルでの治療効果を持つことを示しています 。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10907734/