嘔吐中枢の刺激原因と機序

嘔吐中枢の刺激原因と機序

嘔吐中枢の刺激メカニズム
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延髄の反射中枢

延髄外側網様体背側に位置し、複数経路からの刺激を統合

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四大刺激経路

化学受容器引金帯、末梢神経、前庭器官、高次中枢からの入力

神経伝達機構

迷走神経、交感神経、体性運動神経を介した統合反応

嘔吐中枢の解剖学的特徴と機能

嘔吐中枢は延髄外側網様体の背側に位置し、孤束核近傍に存在する神経集合体です 。この中枢は血液脳関門によって保護されているため、血中の化学物質による直接刺激は受けませんが、神経伝達による複数の入力経路を統合して嘔吐反射を調節します 。

参考)https://www.chugaiigaku.jp/upfile/browse/browse2003.pdf

嘔吐中枢は単一の核ではなく、疑核や唾液核などを含む機能的ネットワークとして作用します 📍。この複雑な神経回路により、咽頭、胃、十二指腸の受容器からの求心性刺激を受け取り、適切な運動反応を生成します 。また、嘔吐中枢の近傍に呼吸中枢や唾液分泌中枢が存在するため、嘔吐時には呼吸停止や唾液分泌亢進といった随伴症状も現れます 。

参考)悪心・嘔吐に関するQhref=”https://www.kango-roo.com/learning/7826/” target=”_blank” rel=”noopener”>https://www.kango-roo.com/learning/7826/amp;A

日本緩和医療学会による嘔気・嘔吐の病態生理の詳細な解説

化学受容器引金帯による嘔吐中枢刺激メカニズム

化学受容器引金帯(CTZ: Chemoreceptor Trigger Zone)は第4脳室底部に位置し、嘔吐中枢への主要な入力経路の一つです 。CTZは血液脳関門の外側に存在するため、血中の内因性・外因性催吐物質を直接感知することができます 。

参考)化学受容器引き金帯 – Wikipedia

CTZには複数の受容体が存在し、特にドーパミンD₂受容体、セロトニン5-HT₃受容体、ムスカリンM₁受容体が重要な役割を果たします 🧬 。抗癌剤などの薬物や細菌毒素がこれらの受容体と結合すると、CTZから嘔吐中枢へ刺激が伝達されます 。この経路による嘔吐では、通常は悪心が先行し、刺激が閾値を超えた場合に実際の嘔吐が生じます 。

参考)悪心・嘔吐に関するQhref=”https://www.kango-roo.com/learning/3488/” target=”_blank” rel=”noopener”>https://www.kango-roo.com/learning/3488/amp;A

代謝異常によるケトン体や尿毒症物質なども、CTZを介して嘔吐中枢を刺激する重要な内因性要因です 。

参考)嘔気(吐き気)・嘔吐|台東区 上野御徒町内科クリニック

末梢神経を介した嘔吐中枢刺激の原因

末梢からの刺激は迷走神経、交感神経、舌咽神経を通じて嘔吐中枢に到達します 。消化管における主要な刺激源として、機械的受容体と化学受容体の2つのタイプがあります。

参考)https://www.jspm.ne.jp/files/guideline/gastro_2011/02_01.pdf

機械的刺激では、消化管閉塞や腫瘍による圧迫により消化管が伸展し、機械的受容体が活性化されます 💥 。化学療法や放射線治療によって消化管粘膜に傷害が生じると、セロトニンが腸管クロム親和性細胞から放出され、求心性迷走神経を介して嘔吐中枢に刺激が伝達されます 。

参考)https://www.kitahari-mc.jp/files/41456.pdf

咽頭や心臓、肝臓などの腹部・骨盤臓器からの刺激も、同様の神経経路を通じて嘔吐中枢に到達します 。NSAIDsやアスピリンなどの消化管刺激性薬物も、この経路を介して嘔吐を誘発する重要な原因となります 。

前庭器官による嘔吐中枢刺激の独特な機序

前庭器官からの刺激による嘔吐は、他の経路とは異なる特徴的なメカニズムを持ちます 。内耳の前庭器官が回転運動や病変によって刺激されると、ムスカリン受容体やヒスタミンH₁受容体を介したコリン作動性ニューロンとヒスタミン作動性ニューロンが活性化されます 。

参考)前庭障害に伴う嘔吐の機序

これらの刺激は直接的に嘔吐中枢に到達する経路と、化学受容器引金帯を経由する経路の2つのルートがあります 🌊 。メニエール症候群や前庭炎、頭蓋底への骨転移による前庭刺激が代表的な原因です 。また、オピオイドやアスピリンなどの薬物も前庭系に影響を与えて嘔吐を引き起こすことが知られています 。
前庭性嘔吐の特徴として、平衡機能障害との密接な関連があり、めまいや平衡感覚異常と同時に発症することが多いという点が挙げられます 。

参考)平衡機能障害と嘔吐

高次中枢からの嘔吐中枢刺激による心因性要因

大脳皮質からの高次中枢による嘔吐中枢刺激は、心理的・精神的要因が関与する独特な経路です 。視覚、嗅覚、味覚などの感覚入力や、緊張・不安・恐怖といった情動が大脳皮質を刺激し、その信号が嘔吐中枢に伝達されます。

参考)嘔気・嘔吐が続く方へ|胃腸の不調は早めの診察を|札幌の消化器…

ストレスや過労、過緊張状態では、脳の活動が変化し嘔吐中枢が反応しやすくなります 🧘‍♂️ 。この経路による嘔吐は「心因性嘔吐」と呼ばれ、明らかな器質的異常がないにも関わらず発症する特徴があります。歯科治療時の嘔吐反射なども、この心理的要因が大きく影響する現象の一つです 。

参考)吐き気・嘔吐の原因|海老名胃腸内科内視鏡クリニック|海老名市…

頭蓋内圧亢進を伴う脳腫瘍、脳出血、髄膜炎などの中枢神経疾患では、直接的に嘔吐中枢やその近傍構造が圧迫・刺激されることで、悪心を伴わない突発性嘔吐(projectile vomiting)が生じることもあります 。

参考)吐き気がする、嘔吐した

看護師向けの悪心・嘔吐メカニズムの詳細な解説