舌下錠種類と特徴

舌下錠種類と特徴

舌下錠の主な種類と特徴
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循環器系舌下錠

ニトログリセリン製剤など、狭心症発作時の緊急治療薬

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精神科系舌下錠

アセナピンなど、統合失調症治療に特化した製剤

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免疫療法舌下錠

スギ花粉症・ダニアレルギーの根本治療薬

舌下錠ニトログリセリン製剤の特徴

舌下錠の代表格であるニトロペン舌下錠は、ニトログリセリンを有効成分とし、狭心症発作の緊急治療に使用される。この製剤の最大の特徴は、舌の下に置いて自然に溶かすことで、口腔粘膜から速やかに吸収される点である。従来の経口剤と比較して、作用発現までの時間が著しく短く、通常2~3分程度で効果が現れる。

参考)https://www.kusurinomadoguchi.com/column/articles/xgoms/

ニトロペン舌下錠は服用後約4分で血中濃度が最高値に達し、肝臓での代謝を回避することで高い血中移行性を実現している。狭心症発作時には、座位または安静にして1錠を舌の下に入れ、飲み込んだり噛み砕いたりせずに自然に溶かすことが重要である。5分経っても症状が改善しない場合は、追加で1錠使用することができ、1回の発作につき最大3錠まで使用可能である。

参考)ニトログリセリンの正しい使い方|ふじみ野市の内科・循環器内科…

保管方法については、冷蔵庫保管は結露による湿気の影響があるため推奨されず、室温での保管が適切である。患者には常時携帯し、症状出現時に直ちに使用できる状態を維持するよう指導する必要がある。

参考)ニトロペン舌下錠の保管方法に関する服薬指導不足|リクナビ薬剤…

舌下錠精神科治療薬アセナピンの特性

シクレスト舌下錠(アセナピンマレイン酸塩)は、統合失調症治療専用の第二世代抗精神病薬として開発された特殊な舌下錠である。この薬剤が舌下錠として製剤化された理由は、経口投与時の肝初回通過効果により生体利用率が2%未満という極めて低い値を示すためである。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8442490/

フリーズドライ製法を応用した技術により、口腔粘膜から速やかに吸収される製剤として開発された経緯がある。通常、成人では1回5mgを1日2回舌下投与から開始し、維持用量は1回5mgを1日2回、最高用量は1回10mgを1日2回までとする。

参考)今さらですが、舌下錠って...。 – 平川病院

舌下投与後10分未満の飲水は効果を低下させる可能性があるため、投与後10分間は水分摂取や食物摂取を避ける必要がある。10分経過後はピリピリ感や苦みが気になる場合、歯磨きやマウスウォッシュの使用が推奨される。

舌下錠免疫療法薬の治療機序

シダキュア舌下錠は、スギ花粉症に対するアレルゲン免疫療法薬として、スギ花粉エキスを原料として製造される舌下錠である。治療原理は、少量のアレルゲンを長期間継続投与することで、体を徐々に慣らしてアレルギー症状を軽減させることにある。

参考)スギ花粉免疫療法(シダキュア舌下免疫療法)

治療開始時は2000単位錠を1週間服用し、その後5000単位錠に増量して維持する。舌の下に錠剤を置き、1分間保持した後に飲み込み、その後5分間はうがいや飲食を避ける必要がある。治療期間は通常3~5年と長期にわたり、毎日継続的な服用が必要である。
副作用として、口腔内の浮腫、かゆみ、不快感、喉の刺激感、耳のかゆみなどの局所反応が15%程度の患者に認められる。重篤な副作用としてアナフィラキシーショックの可能性があるため、服用前後2時間の激しい運動、入浴、アルコール摂取は避ける必要がある。

参考)舌下免疫療法外来

舌下錠疼痛管理薬フェンタニルの応用

アブストラル舌下錠は、フェンタニルクエン酸塩を有効成分とする強力な疼痛管理薬で、がん患者の突出痛治療に特化して開発された舌下錠である。この製剤は、定期的にオピオイド治療を受けている患者の急激な痛みに対するレスキュー薬として位置づけられている。

参考)フェンタニルの舌下錠(アブストラルⓇ️)はどう使えばいいです…

使用適応は、1日用量モルヒネ内服60mg、オキシコドン内服40mg、フェンタニル貼付剤2mg以上のオピオイド定期投与を受けている患者に限定される。舌の下の奥の方に錠剤を置き、飲み込んだり噛んだりせずに自然に溶かすことで、約10分程度で効果が得られる。

参考)https://www.kitahari-mc.jp/files/41782.pdf

効果持続時間は約1~2時間と短時間であるため、主に急激で短時間の突出痛に対する頓用薬として使用される。1日の使用回数には制限があり、事前に医師との十分な相談が必要である。

舌下錠種類別保存方法と使用期限

舌下錠の保存方法は、薬剤の種類により異なる特殊な注意点がある。多くの舌下錠は室温保存(1~30℃)が原則であり、湿気、直射日光、高温を避けて保管する必要がある。特にニトロペン舌下錠については、冷蔵庫保管は取り出し時の結露により湿気を帯びる可能性があるため推奨されない。

参考)お薬はどこに保管するのがいいのですか?|その他|よくあるご質…

使用期限については、薬剤包装に明記されている期限を厳守する必要がある。ニトログリセリン製剤は特に揮発性があるため、開封後の使用期限に注意が必要である。シクレスト舌下錠のようなフリーズドライ製剤は、湿気に対して特に敏感であるため、開封後は速やかに使用することが推奨される。
患者指導においては、薬剤を他の容器に移し替えないこと、食品や殺虫剤等と区別して保管すること、小児の手の届かない場所に保管することを徹底する必要がある。また、残薬がある場合は薬剤師に相談し、適切な処方量調整を行うことが重要である。