線維筋痛症と障害者手帳の取得方法

線維筋痛症と障害者手帳の取得

線維筋痛症患者の障害者手帳取得のポイント
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申請対象の手帳

線維筋痛症では身体障害者手帳と精神障害者保健福祉手帳の両方が検討可能

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診断書作成の要件

指定医師による詳細な症状評価と重症度分類の記載が必要

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認定基準と等級

ステージⅢ以上で認定の可能性が高く、日常生活能力の制限度が重要


線維筋痛症は全身の慢性的な疼痛を特徴とする難治性疾患で、患者の生活の質に深刻な影響を及ぼします。この疾患では見た目の変化が少ないため周囲の理解が得られにくく、障害者手帳の取得により社会的支援を受けることが重要になります。線維筋痛症患者における障害者手帳の取得は可能ですが、客観的な所見に基づく診断書の作成が困難であるため、適切な準備と理解が必要です。

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線維筋痛症で取得可能な障害者手帳の種類

線維筋痛症患者が取得可能な障害者手帳は主に身体障害者手帳と精神障害者保健福祉手帳の2種類があります。身体障害者手帳の取得は一般的に困難とされていますが、「肢体の障害」として認定される場合があります。これは線維筋痛症が神経回路の病気であり、激痛により歩行や日常動作が制限される状態が身体障害と同等の機能制限をもたらすためです。

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精神障害者保健福祉手帳については、線維筋痛症に伴う抑うつ状態、不安感、睡眠障害などの精神症状により取得される場合が多く見られます。慢性疼痛による精神的負担や生活機能の低下が評価対象となり、症状の程度によって1級から3級までの区分で交付されます。医療従事者は患者の症状を総合的に評価し、最適な手帳の種類を検討する必要があります。

線維筋痛症における重症度分類と診断書作成

線維筋痛症の障害認定では厚生労働省が定める重症度分類試案による5段階のステージ評価が重要な指標となります。ステージⅠは圧痛点での痛みはあるものの日常生活への影響は少ない軽度の状態、ステージⅡは末端部の痛みと不眠・不安・うつ状態が続き日常生活が困難な状態です。

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ステージⅢ以降が重篤とされ、ステージⅢでは激しい痛みが持続し軽微な刺激でも全身に激痛が広がって自力での生活が困難、ステージⅣは痛みで身体を動かせずほぼ寝たきりの状態、ステージⅤは全身の激痛に加えて膀胱・直腸障害など多臓器症状が出現し通常の日常生活が不可能な状態です。診断書作成時には「肢体の障害用」診断書を使用し、圧痛点に関する書面とともに重症度分類を明記することが求められます。

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一般的にステージⅤが1級、ステージⅣが2級、ステージⅡ~Ⅲが3級相当と判断される可能性が高いとされています。ただし最終的な認定は診断書の記載内容や病歴を総合的に判断して決定されるため、ステージだけで等級が確定するものではありません。

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線維筋痛症における障害者手帳申請の実務的な流れ

障害者手帳の申請には指定医師による診断書が必須となります。身体障害者手帳の場合、身体障害者福祉法第15条に基づく指定医師が作成した診断書・意見書が必要で、自治体により指定医師の確認が可能です。申請書類には診断書のほか、申請書、本人確認書類(住民票、マイナンバーカードなど)、証明写真が必要です。

参考)大阪市:身体障がい者手帳 (…href=”https://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000007734.html” target=”_blank” rel=”noopener”>https://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000007734.htmlgt;障がいのある方へhref=”https://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000007734.html” target=”_blank” rel=”noopener”>https://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000007734.htmlgt;各種手帳の…

診断書の記載では患者の最も困難な症状や実際にできない動作について正確に記録することが重要です。病院受診時は症状が比較的落ち着いている場合が多いため、日常の最悪時の状態を医師に詳しく伝える必要があります。また痛みという主観的症状を客観的な所見として記載してもらうため、症状の詳細な記録や生活への具体的影響を準備しておくことが推奨されます。
申請後の審査には時間を要するため早めの準備が重要で、自治体によって必要書類や手続きが異なることから事前確認が必要です。医療従事者は患者が適切な準備を行えるよう、症状の記録方法や申請のタイミングについて指導することが求められます。

線維筋痛症患者の障害者手帳取得による生活支援効果

障害者手帳の取得により線維筋痛症患者は多様な社会保障制度を利用できるようになります。医療費の減免制度では自治体により医療費が軽減され、頻繁な通院が必要な線維筋痛症患者にとって大きな経済的支援となります。公共交通機関の運賃割引も利用でき、通院や外出時の負担軽減に寄与します。
就労面では障害者枠での就職活動が可能となり、通常の職場環境では負担が大きい場合でも配慮された環境で働く機会が増加します。線維筋痛症は症状の変動が大きく、痛みの程度により労働能力が左右されるため、柔軟な働き方が可能な障害者雇用制度の活用は重要です。
福祉サービスの利用では訪問介護やデイサービスなど必要な支援を受けるための制度が利用可能になります。また障害者総合支援法により対象疾病に線維筋痛症が含まれており、障害者手帳を持たない場合でも必要と認められた支援が受けられる場合があります。税制面での優遇措置も受けられるため、患者の経済的負担軽減に多方面で効果をもたらします。

参考)https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/332-2revised.pdf

線維筋痛症における障害者手帳申請時の医療従事者の役割と注意点

医療従事者は線維筋痛症患者の障害者手帳申請において重要な役割を担います。まず患者の症状を正確に把握し、日常生活への影響度を客観的に評価することが必要です。線維筋痛症は症状の変動が大きく、外見からは分からない痛みが主症状であるため、患者からの詳細な聞き取りと継続的な観察が重要となります。
診断書作成時には厚生労働省が示す重症度分類に基づいた適切なステージ評価を行い、具体的な生活制限の内容を記載する必要があります。特に「肢体の障害用」診断書を使用する場合は、痛みによる機能制限を身体障害の基準に照らして評価し、日常生活動作の制限度を明確に示すことが求められます。
患者への教育指導では、症状の記録方法や申請準備について具体的なアドバイスを提供することが重要です。また線維筋痛症に対する社会的理解不足を考慮し、患者の心理的支援も含めた包括的なケアを提供する必要があります。医療従事者は障害者手帳制度の理解を深め、患者が適切な支援を受けられるよう継続的にサポートすることが求められます。
さらに線維筋痛症は「障害認定困難な疾患」の一つとされているため、診断書の記載では客観性を重視し、検査結果や症状の具体的な記録を詳細に残すことが重要です。患者の生活実態を正確に反映した診断書を作成することで、適切な障害認定につなげることができます。

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