ヒドロモルフォンとモルヒネの違いと特徴

ヒドロモルフォンとモルヒネの違い

ヒドロモルフォンとモルヒネの主要な違い

効力比の違い

ヒドロモルフォンはモルヒネの約5倍の効力を持つ

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代謝経路の違い

グルクロン酸抱合vsCYP代謝の影響差

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臨床使用場面の違い

腎機能障害時の使い分けが重要

ヒドロモルフォンの効力比と薬物動態

ヒドロモルフォンは、モルヒネから半合成されたμオピオイド受容体作動薬で、モルヒネと比較して約5倍の効力を示します 。この効力比により、ヒドロモルフォン経口剤4mgは、モルヒネ経口剤20mgと同等の鎮痛効果が期待できます 。静脈内投与時の典型的な半減期は2.3時間で、経口投与後30~60分で最高血中濃度に達します 。

参考)https://www.homecareclinic.or.jp/zaitakui-study/vol32.html

ヒドロモルフォンの化学修飾により、モルヒネと比較して脂溶性が高まり、血液脳関門を通過する能力が向上し、より迅速で完全な中枢神経系への浸透が起こります 。注射剤から経口剤への換算比は患者間で異なる可能性があり、1:5の換算比で変更した場合、一部の患者では投与量の調整が必要になることが報告されています 。

参考)ヒドロモルフォン注射剤から経口剤への換算についての検討

モルヒネの薬理学的特性

モルヒネは強オピオイドの代表薬で、中等度から重度の痛みを効果的に緩和します 。肺がんの咳や呼吸困難感で、先行してコデインを使用していた場合、その代謝物であるモルヒネへの変更がスムーズだと考えられています 。モルヒネは麻薬の指定を受けており、その鎮痛効果や副作用はヒドロモルフォンやオキシコドンとほぼ同等とされています 。

参考)新しい鎮痛薬ヒドロモルフォンによるがん疼痛治療

モルヒネの代謝物であるM3G、M6Gは腎臓から排泄されるため、腎障害時には代謝物が体内に蓄積し、眠気、意識障害、場合によっては昏睡を起こすことがあります 。呼吸困難症状に対する効果も確認されており、フェンタニルやオキシコドンと比較して優れた効果を示します 。

参考)初めてのオピオイドにはヒドロモルフォンが最適です。その理由を…

ヒドロモルフォン使用時の副作用プロファイル

ヒドロモルフォンの副作用発現頻度は68.2%で、主な副作用は悪心(38.6%)、嘔吐(30.7%)、傾眠(23.9%)、便秘(11.4%)となっています 。どのオピオイド鎮痛薬でも、眠気、吐き気、便秘などの副作用に注意が必要で、これらの症状はオピオイド鎮痛薬以外の原因でも起こるため、症状の原因を見極めた適切な対処が重要です 。

参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00066859.pdf

ヒドロモルフォン開始後・増量後の眠気は通常数日で改善し、使い始めの吐き気も1~2週間でおさまることが多く、その間は制吐剤を併用します 。オピオイド誘発性便秘症(OIC)に対しては、通常の排便調整のほかに、OIC治療薬ナルデメジン(スインプロイク®)も選択肢となります 。

モルヒネの副作用と注意点

モルヒネやオキシコドンと比較して、ヒドロモルフォンの悪心、便秘、眠気などの副作用プロファイルに大きな差はありません 。しかし、腎機能障害時の副作用には注意が必要で、中等度腎機能障害(24hCcr: 40~60 ml/分)患者ではヒドロモルフォンのAUCが2倍に上昇し、中等度腎機能障害では通常の約2倍認知機能障害が多くなることが報告されています 。

参考)https://www.jspm.ne.jp/files/guideline/respira_2023/02_07.pdf

モルヒネの場合、高度な腎機能障害のある患者で代謝産物であるM6G、M3Gの排泄が低下して蓄積し、副作用が出現しやすい可能性があります 。このため腎機能障害時には、モルヒネよりもヒドロモルフォンの方が使いやすいとされています 。

参考)https://www.jspm.ne.jp/files/guideline/pain_2020/02_04.pdf

ヒドロモルフォン選択時のメリットと適応場面

ヒドロモルフォンの最大のメリットは、肝臓でグルクロン酸抱合されるため、CYPによる薬物相互作用がないことです 。これにより、様々な薬を併用しなければならないがん治療中には、オキシコドンやフェンタニルよりもストレスなく使用できます 。また、ヒドロモルフォンの代謝物には活性がないため、体内に蓄積しても眠気、意識障害、昏睡が起こりにくく安全性が高いとされています 。
1日1回の内服で済むため内服負担が少なく、最小用量がモルヒネより少ないため、より少ない量から開始できるメリットがあります 。経口モルヒネでは20mg/日が最低量となりますが、ヒドロモルフォンは2mg(経口モルヒネ10mg換算)から使用可能です 。腎機能障害時の傾眠・せん妄などの副作用がモルヒネより軽度で、オキシコドンと同等の安全性を示します 。