メラノーマと見分け方の診断基準とダーモスコピー検査

メラノーマと見分け方

メラノーマの早期発見ポイント
🔍

ABCDEルール診断

非対称性・境界不整・色調変化・直径・変化の5つの観察ポイント

🔬

ダーモスコピー検査

拡大鏡による母斑との鑑別診断と皮溝・皮丘パターンの評価

📊

病理組織診断

Clarkレベルとブレスロー厚による転移リスクの評価基準

メラノーマのABCDEルール診断基準

メラノーマの見分け方において最も重要とされるのが、国際的に標準化された「ABCDEルール」による診断基準です 。このルールは皮膚科専門医も使用する実用的な指標で、5つのポイントから構成されています。

A:Asymmetry(非対称性)では、良性のほくろが左右対称で円形または楕円形を示すのに対し、メラノーマは左右非対称で不規則な形状を特徴とします 。セルフチェック方法として、ほくろの中心に仮想線を引き、左右の形が明らかに異なる場合は注意が必要です。

参考)https://ic-clinic-ueno.com/column/melanoma-distinction/

B:Border irregularity(境界不整)では、良性のほくろが境界がはっきりした滑らかな輪郭を示すのに対し、メラノーマは境界がギザギザし、色がにじみ出している部分を認めます 。色がぼやけて広がっている部分がないか縁の観察が重要です。

メラノーマのダーモスコピー鑑別診断

ダーモスコピーは無侵襲で色素性皮膚病変を観察する特殊なルーペであり、メラノーマと色素細胞母斑の早期鑑別に役立つ検査法です 。特に日本人に多い掌蹠のメラノーマ診断において、その精度は著しく向上します。

掌蹠における鑑別のポイントは、皮溝優位の色素沈着か皮丘優位の色素沈着かの判定です 。メラノーマでは86%に皮丘優位の色素沈着が見られ(感度)、皮丘優位のパターンが見られれば99%がメラノーマであることが分かっています(特異度)。

参考)https://twmu-amc.jp/department/dermatology/img/nikkei.pdf

ダーモスコピー診断は2段階に分けることで理解しやすくなります 。まずメラノサイト病変かどうかを判断し、続いて色と構造の分布が規則的か不規則かを考慮してメラノーマか母斑かを判定します。足底の良性母斑では皮溝に平行(parallel furrow pattern)、格子状(lattice-like pattern)、線維状(fibrillar pattern)の3つの基本パターンが認められます 。

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjcs/36/4/36_583/_pdf

メラノーマの組織型分類と病理診断

悪性黒色腫は臨床症状と病理所見により、結節型、表在拡大型、末端黒子型、悪性黒子型の4つの病型に分類されます 。実際には、これらの分類のどれにも当てはまらない中間型や分類不能型が少なからず存在します。

どの病型においても、表皮内で水平方向に腫瘍細胞が増殖する水平増殖期(radial growth phase)から始まり、臨床的に濃褐色から黒色の斑として認められます 。その後、皮膚面に対し垂直方向へ増殖を始める垂直増殖期(vertical growth phase)に移行し、斑の一部が盛り上がって黒色結節を形成します。

参考)https://www.derm-hokudai.jp/wp/wp-content/uploads/2021/12/22-43.pdf

病理診断では、Clarkのレベル分類とBreslowの厚さの判定が重要な予後因子となります 。Clarkレベル分類では、レベルI(表皮に限局)からレベルV(皮下脂肪織に浸潤)まで5段階に分けられ、レベルIIとIIIで大きく予後が異なります 。

参考)https://jspk.umin.jp/old_site/files/reg-meetings/2007reg-meet/39th-contents_files/Manabe.pdf

メラノーマの転移経路とセンチネルリンパ節生検

メラノーマの転移には、リンパ行性転移、血行性転移、局所浸潤の3つの経路があります 。リンパ行性転移はリンパ流にのって転移するもので、血行性転移は血流にのって肺、肝臓、骨、脳への転移を来しやすい特徴があります。

センチネルリンパ節生検(SLNB)は、悪性黒色腫細胞がリンパ節に転移しているかどうかを判定するために行われる特殊な検査です 。センチネルリンパ節は、原発巣からのリンパ液の流入が最初に起こるリンパ節であり、転移した場合に悪性黒色腫細胞が存在する可能性が最も高いリンパ節となります。

参考)センチネルリンパ節生検 – メラノーマ財団のAIM

SLNBは通常、メラノーマの深さが1.0mm以上である場合、潰瘍性腫瘍がある場合、生検マージンが陽性である場合、リンパ血管浸潤がある場合に検討されます 。メラノーマは近くにあるリンパ節(所属リンパ節)に転移する可能性が高いことが知られており、センチネルリンパ節生検で検査を行います 。

参考)悪性黒色腫の転移について教えてください

メラノーマの最新治療法と分子標的薬

メラノーマの治療において、外科的切除が適切な場合は手術が行われますが、リンパ節や他の臓器への転移が見られ切除ができない場合には、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬を用いた薬物治療が行われます 。

分子標的薬として主に用いられるのは、ダブラフェニブやトラメチニブなどがあります 。これらの薬剤は特有の遺伝子変異を持つ癌細胞内の特殊な化学経路を阻害する作用を持ちます。特に表在拡大型黒色腫にはBRAF遺伝子V600の活性化変異を認める場合が最も多く 、これらの分子標的薬の適応となります。

参考)黒色腫 – 14. 皮膚疾患 – MSDマニュアル プロフェ…

免疫チェックポイント阻害薬(ICI)としては、ニボルマブオプジーボ)、イピリムマブ(ヤーボイ)、ペムブロリズマブ(Keytruda)が挙げられます 。ICIは免疫チェックポイント分子またはそのリガンドに結合し、免疫チェックポイントの活性化を阻害して免疫細胞を活性化する薬剤です 。

参考)研究室からの報告:免疫チェックポイント阻害剤の新たな標的 -…

ICIは単剤療法よりも併用療法の方が効果的であることが証明されており、特に脳転移したメラノーマの治療において、ニボルマブとイピリムマブの併用療法が有効とされています 。これらの治療法により、進行例においても治療成績は著しく改善しています。
メラノーマ診断の詳細な解説とセルフチェック方法について
がん研有明病院によるメラノーマの専門的診断と治療情報
メラノーマの早期診断と治療方針に関する医療従事者向け詳細資料