ポリスチレンとポリプロピレンの違い
ポリスチレンの分子構造と基本特性
ポリスチレン(PS)は、スチレンモノマー(C8H8)を重合させて得られる熱可塑性プラスチックで、分子式は(C8H8)nで表されます 。分子量は104nとなり、重合度nが物性に大きく影響します。ポリスチレンには透明で剛性に優れる汎用ポリスチレン(GPPS)と、乳白色で衝撃に強い高衝撃ポリスチレン(HIPS)の2種類が存在します 。
比重は1.04-1.05と水よりも重く、透明性に優れるという特徴があります 。引張強さは36-52MPa、破断時伸びは1.2-2.5%と脆い性質を示し、特に耐衝撃性が低いという特性があります 。電気絶縁性が高く、無味無臭で着色しやすく、リサイクルが容易という利点を持ちます 。
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医療分野では、実験器具や食品容器、CDケース、レターケースなど幅広い用途で使用されています 。発泡させることで断熱性を活かした建材ボードやカップ麺容器としても利用されています 。
ポリプロピレンの分子構造と基本特性
ポリプロピレン(PP)は、プロピレンモノマー(C3H6)の重合体で、化学式は(C3H6)nで表され、組成式は(CH2)nとなります 。分子量は42nで、ポリスチレンと比較して軽量な分子構造を持ちます 。
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比重は0.91-0.96と水に浮くほど軽く、汎用樹脂の中で最も軽量です 。無色に近い透明性を持ち、引張降伏応力は29-38MPa、破断ひずみは200-700%と優れた伸びを示します 。特に折り曲げに強いヒンジ特性を持ち、シャンプーや化粧品のキャップに利用される理由となっています 。
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耐薬品性に優れ、酸性やアルカリ性の強い薬品、沸騰した水、鉱物油などにも耐えられるため、医療器具として注射器などに使用されています 。また、薬品に強いため実験器具としても広く活用されています 。
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ポリスチレンの物理的・機械的性質の特徴
ポリスチレンの密度は約1.05g/cm³で、硬くて脆い性質を持ちます 。融点は約240℃、ガラス転移温度は約100℃で、この温度で軟化し始めます 。耐熱温度は70-90℃と比較的低く、高温環境での使用には制限があります 。
機械的性質では、引張弾性率が2300-3300MPa、曲げ強さが69-101MPa、アイゾット衝撃強さが19-24J/mと、剛性は高いものの耐衝撃性に劣ります 。ロックウェル硬度はM60-75を示し、表面硬度が高いという特徴があります 。
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電気的性質では、体積抵抗率が>10^16Ω·cm、絶縁破壊強さが20-23KV/mmと優れた電気絶縁性を示します 。この特性により、電気冷蔵庫の庫内部品や液晶表示パネルの拡散板・導光板などの電子部品に使用されています 。
ポリプロピレンの物理的・機械的性質の特徴
ポリプロピレンの比重は0.96と非常に軽量で、ロックウェル硬度はR85-110を示します 。耐熱温度は連続使用で120-130℃と高く、荷重たわみ温度(0.45MPa)で95-110℃という優れた耐熱性を持ちます 。
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機械的性質では、引張弾性率が1100-1600MPa、曲げ応力が41-55MPa、アイゾット衝撃強さが2.9-7.8kJ/㎡と、ポリスチレンと比較して柔軟性と靭性に優れます 。破壊ひずみは200-700%と非常に大きく、優れた伸び特性を示します 。
電気的性質では、体積抵抗率が>10^18Ω·m、耐電圧が20-26MV/mと優れた絶縁性を持ちます 。熱的性質では、脆化温度が0~-20℃と低温環境でも使用可能で、線膨張率は10-12×10^-5K^-1と寸法安定性も良好です 。
ポリスチレンの耐熱性・耐候性と用途展開
ポリスチレンの耐熱性は比較的低く、耐熱温度が70-90℃と限定的です 。荷重たわみ温度(1.81MPa)は76-94℃で、高温環境での使用には不向きです 。成形温度は射出成形で180-260℃、押出成形で180-260℃と加工時には高温が必要です 。
耐候性については、ポリスチレンは紫外線により劣化しやすく、屋外使用では白化や脆化が進行します 。一方で、耐放射線性はプラスチックの中でも最高位の性能を持ちます 。この特性により、放射線環境下での医療機器や検査機器に適用されています。
用途としては、透明性と剛性を活かして電気冷蔵庫の庫内部品、CDケース、レターケース、液晶表示パネルの拡散板などに使用されます 。発泡体では断熱性を利用した建材ボード、カップ麺容器、魚箱、食品トレーとして広く利用されています 。医療分野では、実験器具や化学容器として優れた耐薬品性を活かした用途があります 。
ポリプロピレンの耐熱性・耐候性と用途展開
ポリプロピレンは優れた耐熱性を持ち、連続使用温度が120-130℃、融点が165℃とポリエチレンの130℃よりも高温に耐えます 。この特性により電子レンジでの使用にも対応でき、食品用タッパーとして広く使用されています 。高温の飽和水蒸気での滅菌処理も可能で、医療器具の滅菌に適しています 。
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しかし、耐候性は低く、直射日光により劣化しやすく、紫外線に弱いという欠点があります 。屋外使用では白化や脆化が進行するため、酸化防止剤などの添加剤による改善が必要です 。低温では脆くなる傾向があり、脆化温度は0~-20℃です 。
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用途は非常に幅広く、自動車部品、家電部品、包装フィルム、食品容器、キャップ、トレイ、コンテナ、パレット、衣装函、繊維、医療器具、日用品に使用されます 。特に薬品に強いため実験器具や注射器などの医療機器に多用され、スピーカーコーンのような音響機器にも採用されています 。