アミラーゼが低い病気の原因と対策

アミラーゼが低い病気の診断と治療

アミラーゼ低値の主要な原因疾患
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慢性膵炎進行期

膵細胞の破壊により酵素分泌能力が低下

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進行膵がん

腫瘍による膵組織の広範囲な破壊

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膵外分泌機能不全

消化酵素の産生能力が著明に低下した状態

アミラーゼ低値を示す慢性膵炎の特徴

慢性膵炎は、膵臓に長期間炎症が繰り返し起こることで、徐々に組織が線維化し機能が低下していく疾患です 。病気の進行に伴い膵臓のアミラーゼを分泌する腺房細胞が破壊されるため、血液中のアミラーゼ値が低下します 。

参考)「アミラーゼが低い」と指摘されました – 広島市で内視鏡検査…

慢性膵炎による低アミラーゼ血症は、膵臓の組織が荒廃した末期状態を示しており 、診断には以下の特徴があります:

慢性膵炎の症状として、腹部の痛み、背中の痛み、体重減少、下痢などが見られ、病状が進行して膵臓の機能が低下すると自覚症状は少なくなりますが、膵機能低下による消化不良症状が顕著になります 。

参考)すい臓の病気(膵炎・膵のう胞・すい臓がんなど)

アミラーゼ低値と膵がんの関連性

進行した膵がんでは、膵臓が広く破壊されることで酵素分泌量が著明に減少し、アミラーゼの低値を示すことがあります 。膵がんでは最も早期に見られる検査値の異常として、閉塞性黄疸による肝機能異常および胆道系酵素の異常、炎症による血中アミラーゼ値の上昇がありますが 、進行例では逆に低値を示すことが特徴的です。

参考)血清アミラーゼ(血液)

膵がんによる低アミラーゼ血症の診断には、以下の検査が重要です。

  • CA19-9やSpan-1抗原などの腫瘍マーカーとの同時測定

    参考)https://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/94.html

  • エラスターゼ1の異常値出現率が最も高く、診断に有用
  • 画像診断(CT、MRI)による膵臓の形態的評価

膵がんは50~70歳、特に高齢の男性に多い悪性腫瘍であり 、「糖尿病の発症」や糖尿病患者における「血糖コントロールの悪化」は膵臓がんを示唆する重要な所見です 。

アミラーゼ低値における膵外分泌機能不全の症状

膵外分泌機能不全は、膵臓から分泌される消化酵素(アミラーゼ、リパーゼ、トリプシンなど)の産生・分泌能力が低下した状態を指します 。アミラーゼが低値を示す膵外分泌機能不全では、以下の特徴的な症状が現れます:

参考)膵外分泌機能不全の検査・診断 – すい臓のはなし

消化器症状:

脂肪便の特徴:

  • 油っぽくて量が多く、淡黄色で悪臭が強い便
  • 水面に浮くこともあり、拭き取りにくい
  • 一回の排便量が200g/日以上

栄養状態への影響:

  • 食事量は足りているのに体重減少・栄養不良が生じる
  • 脂溶性ビタミン(A、D、E、K)の吸収不良
  • アルブミン、総コレステロール、ヘモグロビンの低下

アミラーゼ欠損症と先天性疾患の診断

先天性のアミラーゼ欠損症は、膵アミラーゼ分泌能の成熟遅延が原因とされる稀な疾患です 。この疾患では、多糖類の吸収が阻害されることで発育障害やでんぷん顆粒を混じた発酵性の下痢をきたします 。

参考)アミラーゼ欠損症 概要 – 小児慢性特定疾病情報センター

小児期の症状:

  • 通常、膵アミラーゼ活性は生後3か月まではほとんど認められず
  • 人工乳や離乳食の負荷による消化不良便
  • 体重増加不良(他の膵酵素活性低下を合併する場合)

成人例の特徴:

  • 家族内発生を認めた膵アミラーゼ単独欠損症が報告されており
  • 便秘、軟便(脂肪性下痢)などを認めるが無症状のこともある

    参考)https://www.shouman.jp/archives/print/print_12_1_5_01.pdf

  • 遺伝的要因が関与すると考えられる

診断には血清アミラーゼの測定とともに、糞便検査による未消化のでんぷん顆粒の確認、膵外分泌機能検査(BT-PABA試験)などが重要です。また、リパーゼやトリプシンなど他膵酵素の活性低下を合併するものが多いため 、総合的な膵機能評価が必要です。

アミラーゼ低値と糖尿病の相互関係

糖尿病患者では血清アミラーゼ値の低下がしばしば認められ、これは膵臓の内分泌機能と外分泌機能の密接な関係を示しています 。特に重度の糖尿病や1型糖尿病患者では、膵外分泌機能の低下が顕著に現れます 。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4807301/

糖尿病とアミラーゼ低値の機序:

  • 低血清アミラーゼは肥満、代謝症候群、糖尿病と密接に関連
  • インスリン作用不全(インスリン抵抗性や分泌低下)が共通の病因
  • 膵島から分泌されるインスリンは膵外分泌機能維持に最も重要

    参考)1型糖尿病にみる膵外分泌腺異常

臨床的意義:

糖尿病患者では、膵外分泌機能不全により消化不良症状が現れることがあるため、アミラーゼ値の定期的な監視と、必要に応じて消化酵素補充療法の検討が重要です 。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5198310/