網赤血球血液検査の基準値と異常時の診断

網赤血球血液検査の基準値

網赤血球血液検査の概要
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検査の意義

骨髄での赤血球産生能を間接的に評価する重要な指標

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基準値

男性:2~27‰、女性:2~26‰(4~19‰で記載する場合もある)

測定方法

フローサイトメトリー法と鏡検法による迅速かつ正確な測定

網赤血球の基準値と正常範囲

網赤血球血液検査の基準値は、男性で2~27‰(パーミル)、女性で2~26‰とされており、一般的には赤血球1,000個中に占める網赤血球の割合として表示されます 。一部の検査機関では4~19‰を基準値としており、施設により若干の差があることがあります 。

参考)網状赤血球数|臨床検査項目の検索結果|臨床検査案内|株式会社…

網赤血球とは、赤芽球が熟成して脱核した直後の大型で幼若な赤血球で、骨髄から放出された後、脾臓を通過するうちに網状構造が取れ、約1日で成熟赤血球になります 。正常では赤血球の約1%を占め、骨髄での赤血球産生の指標として重要な役割を果たしています 。

参考)網状赤血球数(レチクロ)|血球計数|血液学検査|WEB総合検…

測定には全血2.0mLが必要で、検体は採血当日中に提出し、凍結保存は避ける必要があります 。検査方法はフローサイトメトリー法及び鏡検法が用いられ、所要日数は1~2日となっています 。

参考)網状赤血球数

網赤血球測定のフローサイトメトリー法

フローサイトメトリーによる網赤血球測定は、赤血球内のリボソームRNAなどの網状顆粒物質をチアゾールオレンジ(TO)やアクリジンオレンジ(AO)などの蛍光色素で染色し、RNA量に比例した蛍光強度で網赤血球と成熟赤血球を識別する方法です 。

参考)血球計数におけるRetic. 測定(1)|ベックマン・コール…

この測定法では、核酸に結合する蛍光色素CD4K530試薬やThiazole orange試薬が使用され、15秒から15分間の短時間反応で測定が可能です 。フローサイトメトリー法の特徴として、迅速性、簡便性、正確性、精密性に優れており、成熟赤血球と網赤血球の蛍光強度差が大きいため、信頼性の高い解析が実現されます 。

参考)https://www.tech.tsukuba.ac.jp/2007/report/11_Sato_Report_2007.pdf

自動血球計数装置UniCel DxHシリーズでは、ニューメチレン青(NMB)染色とVCSnテクノロジーを用いることで、より正確な網赤血球測定が可能となっています 。この方法により、従来の用手法と比較して再現性が大幅に向上し、CV(変動係数)1.1~2.4%という良好な精度が得られています 。

参考)血球計数におけるRetic. 測定(2)|ベックマン・コール…

網赤血球増加時の病態と診断

網赤血球数の増加は、骨髄での赤血球産生亢進または網赤血球寿命の延長を反映しており、絶対数で10万/μL以上が増加の指標とされています 。代表的な疾患として溶血性貧血があり、この場合は赤血球の寿命短縮に対する代償性の産生亢進により網赤血球が著明に増加します 。

参考)網状赤血球(レチクロ)

急性出血時においても、失われた血液成分を補うため骨髄が活発に赤血球を産生し、網赤血球数が一過性に増加します 。また、鉄欠乏性貧血や巨赤芽球性貧血の治療初期には、ヘモグロビン値の改善に先立って網赤血球数が急激に増加するため、治療効果の早期判定指標として重要な意味を持ちます 。

参考)網赤血球数 (medicina 12巻4号)

その他の増加要因として、新生児期における生理的増加(2~6%)、摘脾後の変化、髄外造血時の増加が挙げられ、これらは造血環境の変化や赤血球クリアランスの変化によるものと考えられています 。

網赤血球減少時の診断と鑑別

網赤血球数の減少は、骨髄での赤血球産生低下を示唆する重要な所見です 。再生不良性貧血では、骨髄幹細胞の障害によりエリトロポエチンの作用点である赤血球系造血が著明に低下し、網赤血球数も減少します 。

参考)再生不良性貧血(指定難病60) href=”https://www.nanbyou.or.jp/entry/106″ target=”_blank” rel=”noopener”>https://www.nanbyou.or.jp/entry/106amp;#8211; 難病情報セン…

ビタミンB12、葉酸、鉄欠乏症では、赤芽球から網赤血球への成熟過程に障害が生じ、貧血の程度に見合わない網赤血球数の低値を示します 。腎不全においては、エリトロポエチン産生低下により赤血球産生が抑制され、結果として網赤血球数が減少します 。

参考)https://www.matsuyama.jrc.or.jp/wp-content/uploads/pdfs/kr1_22.pdf

甲状腺機能低下症や慢性炎症性疾患も網赤血球減少の原因となり、これらは造血環境の悪化や炎症性サイトカインによる造血抑制が関与していると考えられています 。鉄芽球性貧血では、鉄代謝異常により正常な赤血球産生が阻害され、網赤血球数の低下がみられます 。

網赤血球血液検査の臨床的応用と注意点

網赤血球血液検査は貧血の鑑別診断において中核的な役割を果たします 。特に溶血性貧血と再生不良性貧血の鑑別では、前者で著明な増加、後者で減少を示すため、決定的な診断根拠となります 。

参考)網赤血球数、好酸球数、単球数、リンパ球数、好中球数の血液学的…

ヘマトクリット値が低い場合、相対的に網赤血球数が高めに見える場合があるため、補正網赤血球数や網赤血球産生指数(RPI)などの補正指標を参照することが重要です 。これらの補正により、真の造血能をより正確に評価することが可能となります 。

参考)貧血の鑑別・・・RI(網状赤血球指数)

検体取り扱いでは、採血後速やかに検査室へ提出することが必須で、血球凝固や完全溶血は測定不能となるため注意が必要です 。また、測定結果の解釈では、血清鉄、フェリチン、血清ビリルビン、LDH、ハプトグロビンなどの関連指標との総合的な評価が求められ、単独での判断は避けるべきです 。

参考)昭和メディカルサイエンス 検査案内

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の診断においては、CD59陰性網赤血球の検出が高感度に行えるため、フローサイトメトリーによる網赤血球解析が特に有用とされています 。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11535552/