薬物相互作用と分類別一覧
薬物相互作用の基本メカニズム
薬物相互作用は、医療従事者が必ず理解しておくべき重要な概念です 。薬物動態学的相互作用と薬力学的相互作用に大別され、前者は薬物の血中濃度の変動を伴い、後者は血中濃度の変化なしに薬理作用が変化する現象です 。
参考)https://www.jsphcs.jp/wp-content/uploads/2024/10/asc1.pdf
薬物動態学的相互作用は薬物相互作用全体の約40%を占めており、そのほとんどがCYPを介した機序によるものです 。特にCYP3A4で代謝される薬物が最も多いため、必然的に相互作用も多くなる傾向があります 。代表的なCYP3A4基質薬物としては、シクロスポリン、マクロライド系抗生物質、トリアゾラム、カルシウム拮抗薬、カルバマゼピンなどが挙げられます 。
薬物相互作用の吸収段階における一覧
吸収段階での薬物相互作用は、消化管における物理化学的な変化により発生します 。ニューキノロン系抗菌薬と金属カチオンを含む制酸剤の併用は、キレート形成によりニューキノロン系抗菌薬の吸収が著しく低下する代表例です 。
参考)薬物相互作用とは? 種類や実例〜ガイドライン・覚え方・検索ツ…
分子標的薬とプロトンポンプ阻害剤の併用では、胃内pH変化により分子標的薬の吸収が低下することがあります 。また、消化機能異常治療剤により解熱鎮痛剤の吸収が促進され、解熱鎮痛剤の効果が増強される可能性も報告されています 。これらの相互作用は、薬物の溶解性やイオン化度の変化に基づいており、服薬タイミングの調整により回避可能な場合が多いです。
薬物相互作用における代謝段階の詳細一覧
代謝段階での薬物相互作用は、主にシトクロムP450酵素系の阻害や誘導により発生します 。CYP3A4、CYP2C9、CYP2D6、CYP2C19、CYP1A2の5つの分子種が薬物代謝の約90%を担っており、これらの酵素に対する阻害や誘導が臨床的に重要な相互作用を引き起こします 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/50/7/50_654/_pdf
酵素阻害による相互作用では、複数の薬物が同一の代謝酵素を競合することで、親和性が低い薬物の血中濃度が上昇します 。逆に、酵素誘導による相互作用では、代謝酵素の活性が上昇し、基質薬物の血中濃度が低下します 。プロドラッグの場合は、代謝阻害により薬効が減弱することもあるため、個々の薬物特性を考慮した管理が必要です 。
参考)代謝的薬物相互作用
薬物相互作用のトランスポーター関連一覧
トランスポーターを介する薬物相互作用は、近年注目を集めている重要な分野です 。有機アニオントランスポーター(OATP1B1および1B3)は複数のスタチンの肝臓への取り込みを担っており、シクロスポリンがこれらのトランスポーターを阻害することでスタチンの血中濃度が上昇します 。
P-糖蛋白質(P-gp)やBCRP(乳癌耐性蛋白質)も重要なトランスポーターであり、多くの薬物の細胞内外への輸送に関与しています 。これらのトランスポーターの阻害や誘導は、薬物の組織分布や排泄に影響を与え、予期しない薬物濃度変化を引き起こす可能性があります 。
参考)https://www.okiyaku.or.jp/item/3365/large/20230119.pdf
薬物相互作用における薬力学的相互作用の臨床例一覧
薬力学的相互作用は、血中薬物動態の変化を伴わずに薬理作用が変化する現象です 。β遮断薬とβ2刺激薬の併用では、同一レセプターでの拮抗により気管支拡張作用が低下し、喘息の悪化リスクが上昇します 。
参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/contentpage.aspx?diseaseid=1355
スルフォニル尿素系血糖降下薬とβ遮断薬の併用では、異なるレセプターへの作用にも関わらず、エピネフリンの血糖上昇作用をβ遮断薬が阻害することで低血糖作用の増強や低血糖からの回復抑制が起こります 。これらの相互作用は、薬物の薬理学的特性を深く理解することで予測可能であり、適切な監視により安全性を確保できます。
参考)薬物相互作用症例の解析
薬物相互作用における最新の注意喚起薬物一覧
COVID-19治療薬の登場により、新たな薬物相互作用への対応が求められています 。パキロビッドパックは強力なCYP3A4阻害薬であり、多数の併用禁忌薬・併用注意薬が設定されています 。催眠鎮静薬のスボレキサント、トリアゾラム、エスタゾラムなどは併用禁忌とされ、過度の鎮静や呼吸抑制のリスクがあります 。
参考)パキロビッドⓇパック – 経口抗ウイルス剤 ファイザー 新…
ゾコーバ(エンシトレルビル)も複数の薬物相互作用が報告されており、ブプレノルフィンやフェンタニルなどの麻薬性鎮痛薬との併用では血中濃度上昇による重篤な副作用のリスクがあります 。これらの薬剤を使用する際は、専用の薬物相互作用検索ツールを活用し、個々の患者の併用薬を慎重に確認することが必要です 。
参考)薬物相互作用検索ツール