トライコアの効果と脂質改善作用
トライコアによる中性脂肪低下効果の検証
トライコア(フェノフィブラート)は核内受容体PPARα(ペルオキシソーム増殖剤応答性レセプターα)を活性化することで、強力な中性脂肪低下効果を発揮します 。臨床試験では、トライコア106.6mg/日の投与により中性脂肪値が39.7%低下することが確認されており、これは他のフィブラート系薬剤と比較しても優れた成績です 。
血清脂質改善作用として、高脂血症患者の血清総コレステロール及び血清トリグリセライドを有意に低下させ、HDLコレステロールを有意に上昇させる効果が認められています 。この三重の脂質改善作用により、動脈硬化の進行抑制と心血管イベントのリスク軽減が期待されます 。
参考)トライコア錠80mgの効能・副作用|ケアネット医療用医薬品検…
トライコアの作用機序とPPARα活性化
フェノフィブラートの主要な作用機序は、肝細胞及び筋肉細胞における核内受容体PPARαの活性化にあります 。PPARα活性化により、脂肪酸のβ酸化が促進され、VLDL-TG(超低密度リポタンパク質-トリグリセライド)の合成が抑制されます 。
参考)フィブラート系の作用機序
血管内皮のリポタンパクリパーゼ(LPL)活性の亢進により、血中トリグリセライドの分解が促進されます 。さらに、HDLの構成タンパク質であるアポA-ⅠやアポA-Ⅱの転写促進により、HDLコレステロールの増加に寄与します 。これらの作用に加えて、血管平滑筋増殖抑制作用やフィブリノーゲン・CRP抑制による抗炎症作用も、フィブラートの抗動脈硬化作用を担っています 。
トライコア独特の尿酸値改善効果
トライコアは高脂血症治療薬の中で唯一、尿酸値の低下効果を有する薬剤として注目されています 。この尿酸排泄促進作用により、高脂血症と高尿酸血症を合併する患者において、一剤で両方の病態改善が期待できる利点があります 。
参考)高脂血症の薬 トライコア – 医療法人ウェルライフ アイさく…
高脂血症患者では高尿酸血症の合併頻度が高く、メタボリックシンドロームの一因として重要視されています。トライコアによる尿酸値低下作用は、痛風発作の予防や腎機能保護の観点からも臨床的意義が大きいとされています 。
トライコアの重篤な副作用と安全性監視
トライコアの重篤な副作用として、横紋筋融解症が最も注意すべき事象です 。筋肉痛、脱力感、CK上昇、血中ミオグロビン上昇及び尿中ミオグロビン上昇を特徴とし、これに伴って急性腎障害等の重篤な腎障害があらわれることがあります 。
肝障害も重要な副作用として挙げられ、肝炎や黄疸、著しいAST・ALT上昇等を伴う肝機能障害があらわれることがあります 。異常が認められた場合には、減量又は中止等の適切な処置を講じ、処置後少なくとも1ヶ月以内に肝機能検査を実施する必要があります 。
膵炎も頻度不明ながら重篤な副作用として報告されており、上腹部や腰背部の激しい痛み、吐き気、発熱などの症状に注意が必要です 。
参考)トライコア錠80mgの基本情報(作用・副作用・飲み合わせ・添…
トライコアと他のフィブラート系薬剤との比較優位性
新世代フィブラート系薬剤パルモディアとの直接比較試験では、中性脂肪低下効果において差が認められており、パルモディア0.2mg/日で-46.2%、トライコア106.6mg/日で-39.7%という結果が示されています 。
参考)期待のフィブラート系新薬パルモディア。トライコアとの違いを知…
しかし、トライコアは1日1回の食後投与という服薬利便性と、世界80ヶ国以上で使用される豊富な臨床経験を有する点で優位性があります 。日本国内でも20年以上の使用実績があり、安全性プロファイルが確立されています 。
副作用発現頻度の比較では、トライコアで肝機能検査値異常が25.32%、CK上昇が8.48%と報告される一方、パルモディアでは肝機能検査値異常が0.3~1%未満と低頻度であることが示されています 。