フォリスチムの副作用
フォリスチム投与時の卵巣過剰刺激症候群
卵巣過剰刺激症候群(OHSS)は、フォリスチム使用において最も注意すべき副作用です。この症状は、予想よりも多くの卵胞が刺激されることで卵巣が膨れ、尿量減少やお腹・胸に水が溜まる症状が現れます。
参考)フォリスチム®️とは?(副作用について) href=”https://follistim.jp/side-effects/” target=”_blank” rel=”noopener”>https://follistim.jp/side-effects/amp;#8211; f…
フォリスチムを使用した排卵誘発や生殖補助医療(ART)における調節卵巣刺激でのOHSS発生率は4.7%と報告されています。臨床試験では、卵巣過剰刺激症候群が9例(5.9%)、腹部膨満が4例(2.6%)、腹水が3例(1.3%)の発現が確認されました。
参考)医療用医薬品 : フォリスチム (フォリスチム注300IUカ…
OHSSは注射中だけでなく、注射期間終了後、特にhCG製剤注射後や妊娠成立時に急速に悪化しやすく、注射後24時間から2週間は症状に注意が必要です。重症化すると腎不全や血栓症などの合併症を生じ、入院治療が必要となる場合があります。
フォリスチムによる血栓塞栓症のリスク
フォリスチム使用時には、血栓塞栓症という重篤な副作用が起こる可能性があります。血栓塞栓症は血のかたまり(血栓)が血管に詰まる病気で、手足の麻痺やしびれ、しゃべりにくさ、胸の痛み、呼吸困難、足の痛みを伴う腫れなどの症状が現れます。
参考)https://www.pmda.go.jp/drugs/2007/P200700014/53018500_21700AMY00168_B106_2.pdf
特に脳梗塞や肺塞栓を含む血栓塞栓症を伴う重篤な卵巣過剰刺激症候群があらわれることがあるため、医療機関では慎重な監視が必要です。妊娠そのものでも血栓症のリスクは高くなるため、血栓塞栓症の家族歴がある患者や血栓塞栓症発現リスクが高い患者では、投与の可否を慎重に判断する必要があります。
参考)https://organonpro.com/ja-jp/wp-content/uploads/sites/10/2024/06/ppi_follistim_cartridge.pdf
患者自身も急激な症状の変化を感じた際は、放置せずにすぐに担当医師に連絡することが重要です。
フォリスチム治療での多胎妊娠率
フォリスチム治療における多胎妊娠の発生率は29.0%と報告されており、これは通常の妊娠と比較して著しく高い数値です。多胎妊娠は母体への身体的負担が大きく、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などのリスクが増加し、胎児の発育不良にも影響する可能性があります。
現在では多胎妊娠を防ぐため、卵巣の様子を観察しながらフォリスチムを少量ずつ注射する方法や、生殖補助医療において子宮に移植する胚を1つに制限するなどの対策が取られています。
発育卵胞数が多い場合には、治療を中止することもあります。HMG/FSH療法では、できるだけ多胎のリスクを減らすために注射開始日を遅らせ(通常第7日目頃から)、一日おきの注射とする工夫も行われています。
参考)排卵誘発療法 | 当院の不妊治療 | ファティリティクリニッ…
フォリスチムのアレルギー反応と局所副作用
フォリスチム使用時には、アナフィラキシーやアレルギー反応といった過敏症が発現する可能性があります。過去にフォリスチムやその他の卵胞刺激ホルモン製剤でアナフィラキシーやアレルギー反応を経験した方は、使用前に必ず担当医師に相談する必要があります。
また、製造工程でストレプトマイシンやフラジオマイシンという抗生物質が微量に残存している可能性があり、これらの抗生物質にアレルギーがある患者では過敏症を引き起こす可能性があるため、投与を避ける必要があります。
参考)https://www.japic.or.jp/mail_s/pdf/24-01-1-28.pdf
注射部位の局所反応として、注射部疼痛が報告されており、頭痛や腹痛(産婦人科系)なども副作用として挙げられています。これらの症状が現れた場合は、担当医師または薬剤師に相談することが推奨されます。
参考)くすりのしおり : 患者向け情報
フォリスチムの不正出血と内膜への影響
フォリスチム投与時に不正(子宮)出血が副作用として報告されています。国内臨床試験において、不正(子宮)出血は4件(1.7%)の発現が確認されました。
参考)http://image.packageinsert.jp/pdf.php?mode=1amp;yjcode=2413405G1026
不正出血の機序として、卵胞の発育が遅い場合、子宮内膜は不安定になり不正出血につながることが知られています。フォリスチム注射により卵胞ホルモンに変化が起こりますが、投与量がホルモンの破綻を食い止めるレベルに達しない場合、逆に破綻を助長する可能性があります。
参考)「フォリスチム注50®」│【医師監修】ジネコ不妊治療情報
このような不正出血が多量である場合、子宮内膜が破綻しているため、排卵しても妊娠につながらない可能性があります。そのため、出血量が多い場合はフォリスチムの使用を一旦中止し、次の周期を待って治療を再開することが最適な選択とされています。
流産や異所性妊娠(子宮外妊娠)も副作用として報告されており、妊娠予定日もしくは胚移植後2〜3週間経過して異常な下腹部痛や出血がみられた場合は、必ず受診する必要があります。