フロリード d クリーム1の抗菌作用
フロリード d クリーム1のミコナゾール硝酸塩による作用機序
フロリード d クリーム1の有効成分であるミコナゾール硝酸塩は、真菌の細胞膜構成成分であるエルゴステロールの合成を阻害することで抗菌作用を示します 。この薬剤は低濃度では主として膜系(細胞膜並びに細胞壁)に作用して、細胞の膜透過性を変化させることにより抗菌作用を示し、高濃度では細胞の壊死性変化をもたらし殺菌的に作用します 。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00052412.pdf
真菌の細胞膜は人間の細胞膜と構造が異なり、エルゴステロールという成分を含んでいることが特徴です 。ミコナゾール硝酸塩はこの違いを利用して、ヒトの細胞にない成分を攻撃することで、ヒトの細胞ではなく真菌に対して作用し、その増殖を抑えることができるのです 。
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また、ミコナゾール硝酸塩は菌の膜透過性に関係しているエルゴステロールの合成阻害により、菌細胞膜の物質輸送と透過性障壁を阻害し、その結果、高分子物質合成阻害と呼吸阻害を誘発させることにより抗菌作用を示します 。
参考)https://vet.cygni.co.jp/include_html/drug_pdf/gaihi/RK-46629.pdf
フロリード d クリーム1が適応する白癬症の種類と症状
フロリード d クリーム1は、様々な種類の白癬症に対して効果を示します。体部白癬(斑状小水疱性白癬、頑癬)、股部白癬(頑癬)、足部白癬(汗疱状白癬)などの皮膚糸状菌による感染症に適応があります 。
参考)フロリードDクリーム1%
足白癬(水虫)は最も一般的な白癬症の一つで、白癬菌が足の皮膚に感染して起こります 。体部白癬(ゼニタムシ)は体幹や四肢に円形の病変を形成し、股部白癬(インキンタムシ)は鼠径部や臀部に症状が現れます 。
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これらの白癬症は通常、抗真菌剤を含んだ外用薬を塗って治療しますが、爪白癬、頭部白癬や多くの手白癬は市販のOTC医薬品では対処できず、内服や医療機関専用の塗り薬での治療が必要となります 。白癬は他の皮膚疾患との見分けが難しく、正しい治療をしなければ悪化して病気が進行する恐れがあるため、基本的には病院を受診し、直接鏡検という検査を受けて診断を確かめることが重要です 。
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フロリード d クリーム1によるカンジダ症治療の効果範囲
フロリード d クリーム1は、カンジダ菌による様々な皮膚感染症に効果を発揮します。具体的には、指間びらん症、間擦疹(股、脇の下など)、乳児寄生菌性紅斑(おむつかぶれの原因の一つで、カンジダによるもの)、爪囲炎などの皮膚カンジダ症に適応があります 。
皮膚がこすれ合う部分(間擦部)の感染症に対する治療は、抗真菌薬のクリーム、パウダー、溶液などの製剤を皮膚に直接塗って行います 。ミコナゾール、クロトリマゾール、オキシコナゾール、ケトコナゾール、エコナゾール、シクロピロクス、ナイスタチンなどが治療に使用されます 。
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健康な人では、間擦部の感染症は通常、容易に治癒します 。皮膚を乾燥した状態に保つことで感染症が治りやすくなり、再発を予防できるため、皮膚を乾燥させる溶液や外用制汗剤を使用すれば表面を乾燥した状態に保つのに役立ちます 。
赤ちゃんや子供でも、カンジダ菌が原因のおむつ皮膚炎(乳児寄生菌性紅斑)には、フロリード d クリームが有効ですが、通常のおむつかぶれ(刺激によるものなど)には効果がありませんので、自己判断せず、必ず医師の診断を受けてから使用することが大切です 。
フロリード d クリーム1の適切な使用期間と治療継続の重要性
フロリード d クリーム1による真菌症治療では、症状が改善しても医師の指示通り十分な期間薬を使い続けることが最も重要な点の一つです 。かゆみなどの自覚症状が消えたからといって自己判断で治療をやめてしまうと、生き残っていた真菌が再び増殖し、再発を繰り返す原因となります 。
皮膚カンジダ症は1週間から2週間程度で改善することが多く、癜風は2週間から4週間程度の治療で色調の異常は改善されますが、症状に応じて治療期間を判断する必要があります 。白癬(水虫)の場合、症状が消失してからさらに1〜2週間継続して塗布することで再発予防に努めます 。
かゆみや赤みといった症状は治療を開始して比較的早い段階で軽快することが多いですが、症状がなくなったからといって、原因となっている真菌が皮膚から完全にいなくなったわけではありません 。白癬菌などは皮膚の角質層の奥深くに潜んでおり、しぶとく生き残っているため、症状が消えた後も一定期間根気よく治療を続けることが必要です 。
足の裏など角質層が厚い部分では半年から1年以上続けないと完治しないことがあるため、指示された期間の治療を続けることが大切です 。
参考)http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se26/se2655702.html
フロリード d クリーム1使用時の副作用と安全性への配慮
フロリード d クリーム1の使用に際しては、いくつかの副作用や注意点について理解しておく必要があります。主な副作用として、発赤・紅斑、かゆみ、接触皮膚炎、びらん、刺激感、小水疱などが報告されています 。これらの症状に気づいた場合は、担当の医師または薬剤師に相談することが重要です 。
参考)https://med.mochida.co.jp/marker/flo-d-h.doc
使用前には、以前に薬を使用してかゆみ、発疹などのアレルギー症状が出たことがある場合、妊娠または授乳中の場合、他に薬を使っている場合などを医師と薬剤師に必ず伝える必要があります 。手指をきれいに洗ってから使用し、目や口の中に入らないよう注意してください 。
フロリード d クリームに含まれる油脂成分は、コンドーム等の避妊用ラテックスゴム製品の品質を劣化させ、破損する可能性があるため、避妊用ラテックスゴム製品に薬が付かないよう使用する必要があります 。
塗り忘れに気が付いたら、できるだけ早く1回分を塗ってください 。ただし、次の塗布時間が近い場合は忘れた分を抜き、次の塗布時間に1回分を塗ってください 。その際、塗り忘れ分をあわせて2回分塗ってはいけません 。
参考)抗真菌薬「フロリードD(ミコナゾール硝酸塩)」 – 巣鴨千石…
乳幼児、小児の手の届かないところで、直射日光、高温、湿気を避けて保管し、薬が残った場合は保管しないで廃棄することが推奨されています 。眼科用として角膜、結膜には使用しないよう注意が必要です 。
参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/drugdetails.aspx?code=52412