ペリオクリンと歯周炎治療効果の臨床的検証

ペリオクリンによる歯周炎治療の効果

ペリオクリン治療の特徴
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歯周病原性菌への抗菌効果

ポルフィロモナス・ジンジバリスをはじめとする歯周病原性菌に対して強力な抗菌作用を発揮

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局所投与によるピンポイント治療

歯周ポケット内に直接注入することで高濃度の薬剤を患部に届ける

持続放出機能による長時間効果

コントロールドリリース機能により週1回の投与で効果を維持

ペリオクリンの抗菌作用機序と歯周病原性菌への効果

ペリオクリンの主成分であるミノサイクリン塩酸塩は、細菌のタンパク質合成系を阻害することによって抗菌効果を発揮します 。具体的には、aminoacyl tRNAがmRNA・リボソーム複合体と結合するのを妨げることで、細菌の蛋白合成を阻害します 。この作用により、歯周病の主要な原因菌であるポルフィロモナス・ジンジバリス(P. gingivalis)やアクチノバチラス・アクチノミセテムコミタンス(A. actinomycetemcomitans)などに対して優れた抗菌力を示します 。

参考)http://image.packageinsert.jp/pdf.php?mode=1amp;yjcode=2760804M1040

ペリオクリンは歯周ポケット内の歯肉縁下プラーク中細菌に対して高い生育抑制作用を示し、0.1μg/mLの濃度で53%、1μg/mLで97%の生育抑制率を達成しています 。特に歯肉縁下プラーク中の黒色色素産生性バクテロイデスに対してはさらに高い効果を示し、0.1μg/mLで97%、1μg/mL以上では100%の生育抑制率を記録しています 。このような広範囲の抗菌スペクトルにより、ペリオクリンは歯周炎の起炎菌を効果的に抑制することができます 。

参考)https://www.club-sunstar-pro.jp/_var/files/sp-catalog/92/periocline_catalog_2022_08_20220819105927.pdf

ペリオクリンと機械的プラークコントロールの併用療法

ペリオクリンの治療効果を最大限に発揮するためには、スケーリング・ルートプレーニング(SRP)などの機械的プラークコントロールとの併用が不可欠です 。単独での使用ではなく、良好な口腔清掃が確立された後のスケーリング・ルートプレーニングとの併用、あるいは機械的プラークコントロール直後の使用が治療原則として推奨されています 。

参考)https://www.perio.jp/publication/upload_file/jsp_guideline_antimicrobial_therapy.pdf

臨床研究では、スケーリング単独群とスケーリングと同時のペリオクリン投与群を比較した結果、ペリオクリン投与群において疼痛やプロービング深さなどの臨床症状の改善がより認められました 。また、歯肉縁下プラーク細菌の総菌数やTannerella forsythia、Porphyromonas gingivalis、Treponema denticolaの著明な減少が認められており、ペリオクリンの歯周ポケット内投与による歯周病細菌の減少が臨床症状の改善をもたらすことが確認されています 。

参考)https://www.shien.co.jp/media/sample/s3/BK08173.pdf

SPT(歯周病安定期治療)期における研究でも、スケーリングとペリオクリン局所投与の併用療法により、炎症の低下と歯周病関連細菌の減少を含む歯肉縁下細菌叢の多様性の変化が示唆されています 。

参考)60th Annual Meeting in Autumn/…

ペリオクリンのコントロールドリリース機能と投与方法

ペリオクリンは徐々に薬効成分を放出して効果を発揮するコントロールドリリース(CR)機能を採用しており、週1回の投与で十分な効果が得られるように設計されています 。マイクロカプセルタイプの製剤構造により、歯周ポケット内で持続的に薬剤を放出し、長時間にわたって抗菌効果を維持します 。

参考)https://www.club-sunstar-pro.jp/_var/files/sp-catalog/medical_supplies/product_catalog_1167093.pdf

投与方法は、患部歯周ポケット底に薬物が到達するよう注入器の先端部を十分な深さまで挿入し、歯周ポケット内にゆっくりとくまなく軟膏を注入します 。少し溢れ出るくらいまで注入することで、歯周ポケット全体に薬剤が行き渡ります 。投与前にはスケーリングを実施し、ブラッシング等の歯肉縁上プラークコントロールを確実に行うことが重要です 。

参考)ペリオクリン®歯科用軟膏

国内第III相試験では、1週間隔4回投与で84.6%、2週間隔3回投与で80.5%の改善率を示しており、計4回投与で有効であることが確認されています 。歯周ポケット内濃度は投与後168時間(1週間)において0.1μg/mLを維持し、持続的な抗菌効果を発揮します 。

参考)ペリオクリン歯科用軟膏の効能・副作用|ケアネット医療用医薬品…

ペリオクリンの急性歯周膿瘍への適用と臨床効果

ペリオクリンは急性歯周膿瘍の治療においても効果的な治療選択肢として位置づけられています 。急性歯周膿瘍患者99例を対象とした臨床試験では、歯周ポケット内洗浄後にペリオクリンを単回投与した群が、洗浄のみの群と比較して有意な改善を示しました 。特に排膿に対して有意な改善が認められ、7日目の検査では総菌数の有意な減少も確認されています 。
この急性期治療において、ペリオクリンは起炎物質の抑制だけでなく、炎症の軽減にも寄与します。ミノサイクリンは細菌の活動抑制に加えて、歯周組織の炎症を軽減する作用も報告されており、歯肉の腫れや出血が改善し治癒を促進する効果があります 。また、コラゲナーゼ活性阻害作用も認められており、歯周組織の破壊を抑制する追加的な効果も期待されます 。

参考)歯周病治療|LDDS – あきる野市の歯科・歯医者|土日祝日…

歯周病原性菌の検出率についても、ペリオクリン投与群では7日目の検査において歯周病原性菌の3菌種(P. gingivalis、T. forsythia、T. denticola)の検出率が有意に減少しました 。これに対してポケット内洗浄のみの群では検出率の有意な変化は認められず、ペリオクリンの特異的な抗菌効果が明確に示されています。

ペリオクリンの安全性と血中動態における局所治療の利点

ペリオクリンは歯周ポケット内への局所投与により、全身への薬剤暴露を最小限に抑えながら治療効果を発揮する点で優れた安全性プロファイルを示します 。歯周炎患者の歯周ポケット内投与時の血清中濃度測定では、投与前後を通じて極めて低い値(ND〜0.10μg/mL)に留まっており、全身循環への影響が minimal であることが確認されています 。これは経口投与時の血清中濃度(最高0.19μg/mL)と比較しても、局所投与の安全性の高さを示しています 。
市販後の使用成績調査では、3291例中39例(1.19%)に副作用が認められましたが、主な副作用は投与部位の疼痛34件(1.03%)であり、大部分が投与直後に発現する一過性のものでした 。重篤な全身性副作用の報告は極めて少なく、局所的な刺激やアレルギー反応がまれに起こることがある程度です 。
禁忌はテトラサイクリン系抗生物質に対し過敏症の既往歴のある患者のみであり 、幅広い患者に適用可能です。ただし、耐性菌の発現を防ぐため、局所にミノサイクリン耐性菌または非感性菌による感染症が現れた場合には投与を中止する必要があります 。長期使用による耐性菌の発生リスクも考慮し、使用期間を適切に管理することが重要です 。

参考)ペリオクリン歯科用軟膏の効果・効能・副作用

このような安全性の高さから、ペリオクリンは歯周病治療において、全身への影響を懸念することなく効果的な抗菌療法を実施できる有用な治療選択肢として位置づけられています。