第3世代セファロスポリンと内服の基本情報

第3世代セファロスポリンと内服について

第3世代セファロスポリン内服薬の特徴
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主要薬剤

セフィキシム、セフジトレン、セフポドキシム、セフジニル、セフチブテンなど

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抗菌スペクトラム

グラム陽性菌・陰性菌に幅広い抗菌力、β-ラクタマーゼに対する安定性

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使用上の注意

耐性菌出現防止のため適正使用が重要、感受性確認と最小限期間での投与

第3世代セファロスポリン内服薬の種類と特徴

第3世代セファロスポリン系抗菌薬の内服薬には、セフィキシム(セフスパン)、セフジトレン(メイアクト)、セフポドキシム(バナン)、セフジニル(セフゾン)、セフチブテン(セフテム)などがあります 。これらの薬剤は、従来のセファロスポリン系薬剤と比較して、より広範囲な抗菌スペクトラムを持ち、特にグラム陰性菌に対する優れた抗菌力を示します 。
参考)商品一覧 : 第3世代セファロスポリン
セフィキシムは1回50〜100mg(力価)を1日2回経口投与し、重症例では1回200mg(力価)を1日2回投与します 。セフジトレンピボキシルは通常1回100mg(力価)を1日3回食後に経口投与し、重症例では1回200mg(力価)に増量可能です 。これらの薬剤は腸管壁のエステラーゼによって活性体となり抗菌力を発揮する特徴があります 。
参考)https://vet.cygni.co.jp/include_html/drug_pdf/kouseibussitu/JY-12013.pdf
第3世代セファロスポリン系薬剤は、β-ラクタマーゼに対する高い安定性を持つため、ペニシリナーゼ産生のインフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリス、淋菌に対しても有効性が期待できます 。ただし、バイオアベイラビリティ(生体利用率)が比較的低く、セフジトレンでは16%程度とされています 。
参考)感染症TOPICS|教育コンテンツ|飯塚病院 感染症科

第3世代セファロスポリン内服薬の適応症と臨床応用

第3世代セファロスポリン内服薬は、呼吸器感染症、皮膚・軟部組織感染症、尿路感染症、耳鼻科領域感染症など幅広い感染症に適応があります 。具体的には、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、膀胱炎腎盂腎炎中耳炎副鼻腔炎、咽頭・喉頭炎、扁桃炎などに使用されます 。
参考)くすりのしおり : 患者向け情報
セフィキシムやセフチブテンは特にグラム陰性菌に対して優れた活性を示し、大腸菌、セラチア属、インフルエンザ菌に対してより優れた効果が期待できます 。セフポドキシムは、ブドウ球菌またはレンサ球菌による単純性皮膚・軟部組織感染症に有効とされています 。
参考)Table: 第3世代および第4世代セファロスポリン系薬剤の…
MSDマニュアルによると、第3世代セファロスポリン系薬剤は、インフルエンザ菌やAmpC β-ラクタマーゼも基質拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)も産生しない腸内細菌目細菌に対して活性を示します 。また、一部のグラム陽性菌、特にレンサ球菌(ペニシリン感受性が低下している一部の菌株を含む)に対しても活性があります 。

第3世代セファロスポリン内服薬の副作用と安全性

第3世代セファロスポリン内服薬の主要な副作用として、消化器症状(下痢、腹痛、胃部不快感、悪心、嘔吐)、過敏症(発疹、蕁麻疹、発熱、痒み)、菌交代症(カンジダ症)などがあります 。特に注意すべき重大な副作用として、偽膜性大腸炎、ショック・アナフィラキシー、血液障害汎血球減少、血小板減少、無顆粒球症溶血性貧血)が報告されています 。
参考)https://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/shinryo/kansen/data/luncheon_20160511.pdf
偽膜性大腸炎は、抗菌薬によって腸内細菌のバランスが崩れ、クロストリジウム・ディフィシル菌が増殖することで発症します 。特に高齢者では重篤化しやすく、死亡例も報告されているため注意が必要です 。第3世代セファロスポリン薬は広域抗菌薬であるため、下痢などの副作用が起こる可能性があり、体力のない高齢者では特に注意が必要とされています 。
ペニシリン系抗生物質に対して過敏症の既往歴がある患者、本人または両親・兄弟にアレルギー症状を起こしやすい体質を持つ患者、高度の腎障害のある患者などは慎重投与が必要です 。また、セファロスポリン系薬剤はペニシリン系薬剤と構造が似ているため、ペニシリンアレルギーがある患者の一部では交叉反応を示すことがあります 。

第3世代セファロスポリン内服薬と耐性菌対策

第3世代セファロスポリン系抗菌薬の使用により、基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌などの耐性菌が出現する可能性があります 。日本では成人1000人が1日に使う抗菌薬の全体量のうち、セファロスポリン薬が3割を占め、世界で使用率が非常に高いことが問題視されています 。
参考)https://jvma-vet.jp/mag/06506/c3.pdf
薬剤耐性(AMR)対策アクションプランの目標達成に向けて、経口第3世代セファロスポリン系抗菌薬の使用量削減が求められています 。これは、過剰使用により耐性菌の出現を招くためです 。犬における研究では、第3世代セファロスポリン耐性大腸菌の83%がフルオロキノロン系抗菌薬にも耐性を示すことが報告されており、多剤耐性菌の問題が深刻化しています 。
参考)http://www.kankyokansen.org/journal/full/03506/035060247.pdf
適正使用のためには、原則として感受性を確認し、疾病の治療上必要な最小限の期間の投与にとどめることが重要です 。また、「抗微生物薬適正使用の手引き」を参照し、抗菌薬投与の必要性を判断した上で投与することが推奨されています 。一部の専門家は、経口第3世代セファロスポリン薬について「原則使ってはならない」との見解を示しており、他により適切な治療法がある場合は避けるべきとしています 。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00062386.pdf

第3世代セファロスポリン内服薬の薬物動態と相互作用

第3世代セファロスポリン内服薬の薬物動態は薬剤によって異なりますが、一般的に消化管からの吸収率はそれほど高くありません。セフィキシムの血中半減期は137分と比較的長く、腎臓から約20〜25%、肝臓から約3.7〜10%、腸管・その他から約57%が排泄されます 。
参考)セフィキシム (Cefixime):抗菌薬インターネットブッ…
臓器移行性について、セフィキシムは腎・尿路、肝・胆汁への移行は良好ですが、喀痰・気管支分泌液、臍帯血、母乳への移行は不良です 。副鼻腔への移行は限定的で、髄液への移行に関するデータは不十分です 。
相互作用として、ワルファリンとの併用では注意が必要です。セファロスポリン系薬剤は腸内細菌によるビタミンKの産生を抑制することがあるため、ワルファリンの作用が増強される可能性があります 。また、経口摂取が不良な患者や非経口栄養の患者、全身状態の悪い患者では、ビタミンK欠乏症状が現れることがあるため、十分な観察が必要です 。