麦門冬湯の効果とそのメカニズム

麦門冬湯の効果とメカニズム

麦門冬湯の主要な効果
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気道の潤い補給

乾燥した気管支に水分を届け、空咳を改善します

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鎮咳・去痰作用

咳中枢の抑制と痰の排出促進で症状を和らげます

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気管支炎・咽頭炎治療

呼吸器系の炎症を抑制し、根本的な改善を促します

麦門冬湯の鎮咳効果とその科学的根拠

麦門冬湯の鎮咳効果は、複数の科学的研究によってそのメカニズムが解明されています 。主要な作用機序として、咳反射の求心性神経、特にC線維の刺激受容部位に対する抑制効果が確認されています 。また、主成分の麦門冬に含まれるオフィオポゴニンが、咳を誘発する神経の興奮を抑制する働きを持っています 。

参考)https://www.cocorone-clinic.com/column/bakumondoto.html

研究では、ニュートラルエンドペプチダーゼ(NEP)活性の低下を抑制し、咳反射を抑える効果が報告されています 。さらに、気管支炎モデルにおいて機械的刺激や化学的刺激による咳反射を抑制し、サブスタンスPによる咳反射も抑制することが実証されています 。これらの複合的な作用により、特に乾いた咳や長引く咳に対して高い効果を発揮します 。

参考)https://www.kusurinomadoguchi.com/column/articles/bakumontoyu-effect

麦門冬湯の去痰作用と気道クリアランス改善

麦門冬湯の去痰作用は、β1-アドレナリン受容体mRNA量を増加させ、細胞内cAMP量を増加させることで発揮されます 。この作用により、気道クリアランスの低下を抑制し、粘液の過剰分泌を防ぐとともに、粘液輸送速度(MCTV)の低下も抑制します 。

参考)https://on-med.jp/online/303/

肺表面活性物質分泌亢進に基づく気道クリアランス改善作用も確認されており、これにより痰の切れやすさが向上します 。粘液分泌抑制・サーファクタント分泌促進作用により、切れにくい粘りの強い痰が出しやすくなる効果があります 。また、NOによる水チャネルの活性低下に拮抗し、漿液分泌を改善する作用も報告されています 。

参考)https://www.radionikkei.jp/kampotoday/docs/kampo-110713.pdf

麦門冬湯の気管支炎・咽頭炎に対する治療効果

麦門冬湯は気管支炎や咽頭炎の治療において、多面的なアプローチで症状改善を図ります 。気道の炎症を抑制する抗炎症作用により、好中球活性酸素抑制やステロイド様作用を示し、根本的な炎症の軽減に寄与します 。

参考)https://www.kracie.co.jp/ph/k-kampo/teach/detail_6.html

β受容体賦活作用による気管支拡張作用も認められており、気管支炎による気道の狭窄改善に効果を発揮します 。特に風邪後に長引く咳や、気管支喘息の補助療法としても広く用いられています 。咽頭炎に対しては、のどや声帯に潤いを与えて炎症を鎮め、しわがれ声や喉の痛みを改善する効果が期待できます 。

参考)https://yojo.co.jp/media/seki-nodo-hana/18534/

麦門冬湯のドライマウス治療への応用

麦門冬湯はドライマウス(口腔乾燥症)の治療においても第一選択薬として位置づけられています 。滋陰剤の代表方剤として、肺陰虚を滋陰することで呼吸器症状と口腔乾燥症状の両方を改善する効果があります 。

参考)https://higuchidc.com/p1504orientalmedicine53.htm

唾液分泌促進効果が確認されており、シェーグレン症候群などによる口腔乾燥症に対して有効性が報告されています 。この効果は、麦門冬湯が体内の水分バランスを整え、粘膜全体に潤いをもたらす作用によるものと考えられています 。口の渇きを改善することで、食事や会話の質の向上にも貢献します 。

参考)https://www.kusurinomadoguchi.com/column/articles/bakumon-cough-asthma/

麦門冬湯の副作用と服用時の注意点

麦門冬湯の副作用として、まず消化器系の症状が報告されています 。胃部不快感、食欲不振、吐き気などが起こることがあり、これは含まれる半夏による影響と考えられています 。また、胃腸が弱い方や多量に服用した場合には下痢が起こる可能性があります 。

参考)https://mencli.ashitano.clinic/33165

重篤な副作用として、偽アルドステロン症が挙げられます 。これは甘草成分の長期または大量摂取により起こる可能性があり、手足の脱力感、しびれ、血圧上昇、むくみなどの症状が現れます 。まれに間質性肺炎やミオパチー、肝機能障害なども報告されており、長期服用時には定期的な血液検査による監視が重要です 。

参考)https://ubie.app/byoki_qa/clinical-questions/symptom/je366ft3yy3

服用方法については、食前(食事の30分~1時間前)または食間(食後2時間以上経過後)に水やぬるま湯と一緒に服用することが推奨されています 。医師の指示に従って適切な用量・用法を守り、症状の改善が見られない場合や副作用が現れた場合は速やかに医療機関に相談することが大切です 。

参考)https://ubie.app/byoki_qa/clinical-questions/symptom/0yrf7ogwa