サイトメガロウイルス感染経路
サイトメガロウイルス母乳感染の特徴
母乳感染はサイトメガロウイルス(CMV)の主要な感染経路の一つです 。日本人女性の約70%がすでにCMVに感染しており、これらの母親は母乳中にウイルスを排出する可能性があります 。
参考)サイトメガロウイルス(CMV)感染症 – 16. 感染症 -…
CMV既感染女性の多くは授乳中に母乳にCMVを排泄することが近年の研究で明らかになっています 。母乳中のCMV-DNA量は生後2~12週頃に増加する傾向があり、この時期における感染リスクが特に高くなります 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jshowaunivsoc/73/3/73_148/_pdf
健康に生まれた満期産児にとって、母乳からのCMV感染は一般的に無症状の不顕性感染となり、むしろ「自然な予防接種」とも考えられています 。しかし、在胎30週未満で出生した超早産児では、母乳感染により肺炎や敗血症様症状を引き起こす可能性があります 。
参考)母親がサイトメガロウイルス(CMV)に感染している場合、母乳…
⚠️ 超早産児のリスク
- 肺炎や敗血症様症状の発症
- 全身症状の悪化
- 栄養障害と入院期間の延長
サイトメガロウイルス尿や唾液による水平感染
水平感染は感染者から非感染者への直接的な感染経路で、尿や唾液が主要な感染源となります 。感染者は尿中や唾液中に間欠的にサイトメガロウイルスを排出し、これらの体液との接触により感染が成立します 。
参考)サイトメガロウイルス|つむぐクリニック|福岡市城南区の産婦人…
初感染を受けた乳幼児は不顕性感染の形で経過することが多く、その後数年にわたって尿や唾液中にウイルスを排泄し続けます 。このため保育園などの集団生活環境では、子ども同士の密接な接触によって感染が拡大する傾向があります 。
参考)サイトメガロウイルス感染症|国立健康危機管理研究機構 感染症…
特に妊娠中の女性にとって、小さなお子さんの唾液や尿への接触は重要な感染リスクとなります 。典型的な感染パターンとしては、保育園に通う上の子からの感染が挙げられ、以下のような日常的な行為が感染につながる可能性があります :
参考)妊婦さんの感染予防、サイトメガロウイルスの正しい知識をもとう…
📝 主な感染パターン
- 子どもの食べこぼしを口に入れる
- 食べ物や飲み物の共有
- 口と口でのキス
- おむつ替え後の不十分な手洗い
サイトメガロウイルス性的接触による感染
サイトメガロウイルスは性的接触を通じても感染する重要な経路の一つです 。ウイルスは子宮頸管粘液や精液中に排出されるため、性行為によって感染が起こります 。
参考)大人がサイトメガロウイルスに感染する場合の感染経路はどのよう…
成人における性的感染は、思春期以降にCMVの初感染を受ける主要な経路となっています 。この場合、伝染性単核症様の症状を呈することが多く、発熱、肝機能異常、頚部リンパ節腫脹、肝脾腫などが主な症状として現れます 。
性行為による感染では、以下の体液が感染源となります :
- 子宮頸管分泌液
- 精液
- 血液(産道での接触)
💊 Epstein-Barrウイルスとの鑑別:CMVによる伝染性単核症はEBウイルスによるものと似ていますが、CMVでは重度の咽頭痛は引き起こさないという特徴があります 。
サイトメガロウイルス産道感染の機序
産道感染は分娩時に新生児が感染する経路で、産道で子宮頸管粘液や血液に接触することで起こります 。妊婦がCMVに感染している場合、妊娠中に胎児が感染する場合と出産時に新生児に感染する場合があります 。
産道感染の特徴として、妊婦の初感染による胎内感染の確率は40%と高率であるのに対し、再活性化による胎内感染の確率は0.2~2%と比較的低くなっています 。これは初感染時のウイルス量や母体の免疫応答の違いによるものです。
新生児や乳児期の産道感染による症状は、母体からの移行抗体により多くの場合軽症に経過します 。しかし早産児や低出生体重児では、母親からの抗体移行が不十分なため重篤な症状を呈する可能性があります 。
🏥 医療現場での対策:早産児や低出生体重児に対しては、CMV抗体陽性者からの輸血を避けることが重要です 。
サイトメガロウイルス輸血による感染リスク
輸血による感染は医療行為に関連する重要な感染経路です 。感染者の血液を輸血されることで感染が起こり、特に免疫機能が低下している患者では重篤な症状を引き起こす可能性があります 。
参考)https://www.jrc.or.jp/mr/product/information/pdf/info_201308.pdf
日本赤十字社の報告によると、2004年から2013年3月までの間に、輸血用血液製剤によるCMV感染疑い症例が19例報告されています 。輸血による感染が確定した例はありませんが、全ての症例が低出生体重児・新生児・乳児への輸血例でした 。
現在、日本赤十字社は白血球除去した輸血用血液製剤のみを供給していますが、極低出生体重児等への輸血には、CMV抗体陰性血液の使用が推奨されています 。
🩸 輸血感染の特徴
- CMVに汚染された血液の輸血後2~4週間で発熱
- ときに肝炎を併発
- 免疫機能低下患者では重篤化のリスク
臓器移植を受けた人は、移植臓器の拒絶反応を予防するために免疫抑制薬の投与を受けているため、特にCMVに感染しやすい傾向があります 。このため移植医療においては、ドナーとレシピエントの抗体検査が重要な予防策となっています 。