トブラマイシンの副作用と注意点

トブラマイシンの副作用と注意点

トブラマイシンの主な副作用
👂

聴覚・前庭機能障害

耳鳴り、難聴、めまいなど第8脳神経への影響による症状

🫘

腎機能障害

急性腎不全、蛋白尿、血尿などの腎毒性症状

⚠️

その他の副作用

注射部位反応、消化器症状、過敏症反応など

トブラマイシンによる聴覚機能障害の特徴

トブラマイシンはアミノグリコシド系抗菌薬として優れた抗菌効果を示す一方で、第8脳神経への毒性により聴覚機能障害を引き起こす重要な副作用を有しています。眩暈、耳鳴、難聴などの症状が0.1~5%未満の頻度で認められ、これらの症状は投与中止後も不可逆的に持続することが多いため、治療中の慎重な観察が必要です。

参考)https://vet.cygni.co.jp/include_html/drug_pdf/kouseibussitu/JY-00774.pdf

アミノグリコシド系薬剤による聴器毒性には薬剤ごとの特性があり、聴器毒性の強さはネオマイシン>アミカシン、カナマイシン>トブラマイシン、ゲンタマイシン、ストレプトマイシンの順とされています。また前庭毒性についてはストレプトマイシン>ゲンタマイシン>トブラマイシンの順に強いことが報告されており、トブラマイシンは比較的前庭障害が少ないアミノグリコシド系薬剤といえます。

参考)https://www.pmda.go.jp/files/000245253.pdf

最新の研究では、トブラマイシン治療を受けた嚢胞性線維症患者26名中4名(約15%)に前庭毒性による急性めまいが発症し、そのうち2名は不可逆的な両側前庭機能低下、2名は片側迷路機能喪失を経験したという症例報告があります。この研究は、適切なガイドラインに従った治療でも重篤な前庭毒性が発症する可能性を示しており、医療従事者への重要な警告となっています。

参考)https://ejhp.bmj.com/content/ejhpharm/early/2021/03/21/ejhpharm-2020-002588.full.pdf

トブラマイシンによる腎機能障害のメカニズム

トブラマイシンによる腎障害は急性腎不全をはじめとする重篤な腎機能障害を引き起こす可能性があり、その発現頻度は0.1%未満とされています。主な症状としてBUN上昇、クレアチニン上昇などの腎機能検査値異常のほか、蛋白尿、血尿、尿円柱、電解質異常(特にカリウム)、浮腫などが認められます。

参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00048522.pdf

アミノグリコシド系薬剤は主として腎臓から排泄されるため、高齢者や既存の腎機能障害を有する患者では薬物の血中濃度が高く持続し、腎障害がさらに悪化するおそれがあります。そのため、これらの患者群では投与量の調節や投与間隔の延長、定期的な腎機能検査による慎重な監視が必要です。

参考)https://www.pmda.go.jp/drugs/2012/P201200121/30024200_22400AMX01384_B101_5.pdf

腎毒性の危険因子には、頻回または高用量での投与、高い血中薬物濃度、長期間の治療(特に3日超)、高齢、既存の腎疾患、バンコマイシンやアムホテリシンBなどの腎毒性薬剤との併用などがあります。これらの因子が重なることで腎障害のリスクは相乗的に増加するため、投与前のリスク評価と投与中のモニタリングが重要です。

参考)アミノグリコシド系 – 13. 感染性疾患 – MSDマニュ…

トブラマイシン投与時の神経系副作用

トブラマイシンは中枢神経系および末梢神経系に対しても様々な副作用を示します。頻度0.1~5%未満で認められる症状として、耳痛、耳閉塞感、口唇・四肢等のしびれ感があり、0.1%未満では頭痛、頭重感、譫妄、見当識障害等の中枢神経症状が報告されています。

参考)http://www.j-dolph.co.jp/images/product/tb90/DIH27-8.pdf

特に注目すべきは神経筋遮断作用による呼吸抑制のリスクで、重症筋無力症患者や筋弛緩薬使用中の患者では呼吸麻痺を引き起こす可能性があります。この作用は用量依存的であり、高用量投与時や腎機能低下による薬物蓄積時に特に危険性が高まります。

参考)https://www.j-dolph.co.jp/images/product/tb90/TB_202012.pdf

動物実験では、トブラマイシンが耳鳴りや聴覚過敏(ハイパーアキュシス)を引き起こすことが確認されており、これらの症状は臨床的にも重要な問題となっています。また、音響暴露との相乗作用により、単独暴露よりも強い聴覚障害を引き起こすことが報告されており、騒音環境下での使用には特別な注意が必要です。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8440845/

トブラマイシン点眼薬の局所副作用

トブラマイシン点眼薬使用時の副作用として、局所的な眼症状が主体となります。承認時の安全性評価では377例中13例(3.4%)に副作用が認められ、再審査終了時には11,747例中163例(1.39%)で副作用が確認されています。

参考)https://vet.cygni.co.jp/include_html/drug_pdf/kankaku/JY-01032.pdf

最も頻度の高い副作用は眼刺激(1.0~1.5%未満)で、次いで結膜充血(0.5~1.0%未満)が報告されています。その他、0.1~0.5%未満の頻度で眼瞼腫脹・眼瞼発赤、眼そう痒、結膜浮腫、眼違和感が認められ、頻度不明では結膜腫脹や刺激痛が生じることがあります。

参考)トブラシン点眼液0.3%の効能・副作用|ケアネット医療用医薬…

過敏症反応として0.1~0.5%未満の頻度で発疹が生じることがあり、眼瞼の腫脹・発赤、結膜の腫脹・充血、そう痒感等の症状が現れた場合には直ちに使用を中止する必要があります。点眼薬は全身への影響は限定的ですが、長期間の連用は避けるべきとされています。

トブラマイシン吸入薬の呼吸器系副作用

吸入薬として使用されるトブラマイシン(トービイ吸入液)は、嚢胞性線維症患者の緑膿菌感染治療に用いられますが、特有の呼吸器系副作用を示します。5%以上の高頻度で認められる副作用として、ラ音、発声障害、鼻炎、肺機能低下、咳嗽、喀血、喀痰増加があります。

参考)トービイ吸入液300mgの効能・副作用|ケアネット医療用医薬…

1~5%未満の頻度では変色痰、気管支痙攣、喘息、呼吸困難が報告されており、これらの症状は吸入直後から治療期間中を通じて観察される可能性があります。興味深いことに、喀痰量の減少という治療効果とは相反して、患者の呼吸困難や喘鳴などの自覚症状が増悪することがあると報告されています。

参考)https://is.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/043010041j.pdf

吸入薬による全身症状として、5%以上の頻度で味覚異常、胸痛、無力症、咽頭炎が認められ、1~5%未満では頭痛、浮動性めまい、筋肉痛、背部痛、喉頭炎、けん怠感、発熱、疼痛、腹痛、悪心、嘔吐、食欲減退等が報告されています。これらの症状は全身への薬物暴露が比較的少ない吸入投与でも生じうることを示しており、患者の注意深い観察が必要です。