レボノルゲストレルの効果
レボノルゲストレルの排卵抑制効果
レボノルゲストレルの主要な作用機序は排卵の抑制または遅延によるものです 。有効成分である黄体ホルモンが脳下垂体に働きかけ、排卵に必要な黄体形成ホルモン(LH)の分泌を一時的に抑制します 。特に排卵直前のLHサージを抑える効果が高く、これにより卵胞の成熟や卵子の放出が阻止され、受精の機会がなくなります 。
参考)https://neoclinic-w.com/diagnosis/emergency/norlevo
国際大規模臨床試験であるWHO2002試験では、レボノルゲストレル1.5mg1回投与の妊娠阻止率は82%[70.9%~88.7%]という良好な成績が得られました 。また、日本国内で実施された第Ⅲ相臨床試験では、63例中1例のみの妊娠で妊娠阻止率は81.0%を示しました 。
参考)https://www.pmda.go.jp/drugs/2011/P201100047/39014900_22300AMX00483000_K101_1.pdf
レボノルゲストレルの服用後5日~7日間は効果が続き、その間は排卵が抑制され避妊効果が継続されます 。この持続効果により、性行為後の適切な時期に服用することで高い避妊効果を発揮します。
参考)https://fit.clinic/med/pill/levonorgestrel/
レボノルゲストレルの子宮内膜への効果
レボノルゲストレルの第二の作用機序として、子宮内膜の増殖阻害による着床阻止効果があります 。黄体ホルモンの作用により、受精卵が着床するために必要な子宮内膜の肥厚化を防ぎます 。
参考)https://personalcareclinic.jp/blog/levonorgestrel-mechanism-of-action/
性行為後に受精が成立してしまった場合でも、黄体ホルモンの働きによって子宮内膜の増殖を抑制し、体温上昇を防ぐことで着床を阻害します 。この二重の作用機序により、排卵前後どちらのタイミングでも妊娠確率を下げることができます 。
参考)https://mederi.jp/magazine/pills/pills56/
さらに、頸管粘液の粘稠化による精子侵入阻止という第三の作用機序も関与していると考えられています 。これらの複合的な作用により、レボノルゲストレルは確実な避妊効果を発揮します。
レボノルゲストレルの服用タイミング効果
レボノルゲストレルの避妊効果は服用タイミングによって大きく左右されます 。性行為から24時間以内の服用では約95-98%の高い避妊効果が期待できますが、48時間以内では約85-90%、72時間以内では約80-85%と時間経過とともに効果が低下します 。
参考)https://pairlife-clinic.com/after-pill/levonorgestrel/
WHO2002試験では、性交後72時間以内の群では妊娠率が1-2%台であったのに対し、73時間以降の群では2-3%台と若干高くなる傾向が見られました 。このため、できるだけ早期の服用が推奨されています 。
レボノルゲストレルは服用後2~3時間で血中濃度が最高値に達し、薬効が現れ始めます 。服用後2時間以内に嘔吐した場合は薬剤が十分に吸収されていない可能性があるため、再服用を検討する必要があります 。
レボノルゲストレルの臨床試験データ
レボノルゲストレルの有効性は複数の大規模臨床試験で検証されています。WHO1998試験では、従来の標準療法であったYuzpe法と比較して、レボノルゲストレル群の妊娠率は1.1%でYuzpe法の3.2%より有意に低い結果を示しました 。
国内第Ⅲ相臨床試験(075-02試験)では、性交後72時間以内にレボノルゲストレル1.5mgを1回経口投与した結果、解析対象例63例中妊娠例は1例のみで、妊娠阻止率は81.0%でした 。この結果は海外試験成績と一致しており、日本人女性においても同様の有効性が確認されています。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/medical_interview/IF00004078.pdf
副作用発現頻度は72.3%(47例/65例)で、主な副作用は消退出血46.2%、不正子宮出血13.8%、頭痛12.3%、悪心9.2%、倦怠感7.7%、傾眠6.2%等でした 。重篤な副作用の報告はなく、安全性プロファイルも良好です。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/medical_interview/IF00008112.pdf
レボノルゲストレルの黄体ホルモン活性
レボノルゲストレルは第2世代の合成プロゲスチンで、天然のプロゲステロンと比較して5.3倍の強いプロゲステロン活性を有しています 。この高いプロゲステロン活性により、少量の投与で確実な避妊効果を発揮することが可能です。
参考)https://mirrazatsurukamekai.jp/blog/20241108.html
黄体ホルモン濃度の急激な上昇により視床下部へのネガティブフィードバックが働き、LHサージの消失または遅延が起こります 。このホルモン動態の変化が排卵抑制の主要なメカニズムとなっています 。
参考)https://ph-lab.m3.com/categories/clinical/series/featured/articles/183
レボノルゲストレルはエストロゲン成分を含まないため、血栓症のリスクが低く、禁忌となる疾患も限定的です 。これにより、多くの女性に安全に使用できる緊急避妊薬として位置づけられています。
レボノルゲストレルの臨床試験結果の詳細データ
厚生労働省による緊急避妊薬の承認審査資料