接触性皮膚炎は何型アレルギーなのか

接触性皮膚炎とIV型アレルギー

接触性皮膚炎は何型アレルギーか
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IV型(遅延型)アレルギー

アレルギー性接触皮膚炎の主要な分類

48時間がピーク

原因物質に接触後、24-72時間で反応が現れる

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T細胞介在性反応

感作Tリンパ球による免疫反応が関与

接触性皮膚炎におけるアレルギー反応のタイプ

アレルギー性接触皮膚炎IV型(遅延型)アレルギーに分類される皮膚疾患です 。この反応は、皮膚に接触した原因物質に対して体の免疫システムが反応を起こすことで発生し、T細胞を主体とした細胞性免疫反応によって引き起こされます 。

参考)https://www.maruho.co.jp/medical/articles/eczemadermatitis/epidemiology/contact.html

IV型アレルギーの特徴として、感作Tリンパ球が主役となり、原因物質に接触してから反応が現れるまでに数時間から数日を要することが挙げられます 。反応のピークは通常48時間後となり、ツベルクリン反応もこの反応メカニズムを利用した検査です 。

参考)https://www.sakura-kodomo.clinic/allergic_dermatitis/

I型アレルギーとの区別も重要で、花粉症や食物アレルギーなどの即時型(I型)アレルギーは15-30分で発現するのに対し、IV型アレルギーは接触後48時間が反応のピークとなる遅延型反応です 。

参考)https://www.minghsiu-derma.com/%E3%83%88%E3%83%83%E3%83%97%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8/%E4%BF%9D%E9%99%BA%E8%A8%BA%E7%99%82/%E6%8E%A5%E8%A7%A6%E6%80%A7%E7%9A%AE%E8%86%9A%E7%82%8E

接触性皮膚炎における反応メカニズムの詳細

アレルギー性接触皮膚炎の発症には感作相と惹起相という2つの段階があります 。感作相では、分子量1,000以下のハプテンと呼ばれる化学物質が皮膚表面から表皮内を通過し、タンパク質と結合してハプテン-タンパク結合物を形成します 。

参考)https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/14-%E7%9A%AE%E8%86%9A%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%9A%AE%E8%86%9A%E7%82%8E/%E6%8E%A5%E8%A7%A6%E7%9A%AE%E8%86%9A%E7%82%8E

このハプテン-タンパク結合物は、皮膚樹状細胞(ランゲルハンス細胞、真皮樹状細胞)によって捕獲され、所属リンパ節に遊走して抗原情報をTリンパ球に伝達します 。この過程で感作リンパ球が誘導されることにより感作が成立します 。
惹起相では、感作が成立した個体に再び接触アレルゲンが接触後、表皮細胞より種々のサイトカインやケモカインの産生が見られ、肥満細胞の脱顆粒、血管の拡張と内皮細胞の活性化が起こります 。活性化されたエフェクターTリンパ球が表皮に向かい遊走し、TNF-αにより直接表皮細胞が障害され、海綿状態を主とした湿疹性の組織反応が形成されます 。

接触性皮膚炎のパッチテスト診断方法

アレルギー性接触皮膚炎の診断にはパッチテストが最も有用な検査法として活用されています 。この検査は4型アレルギー(遅延型アレルギー)の診断に必要な検査であり、接触皮膚炎(かぶれ)を起こすタイプのアレルギー反応を確認できます 。

参考)https://patchtest.jp

パッチテストの手順として、原因と考えられる物質を背中や二の腕内側の正常な皮膚に貼付し、48時間貼り付けたままにします 。判定は2日目(48時間後)と3日目(72時間後)に行い、可能であれば1週間後にも判定を実施します 。

参考)https://www.tamaki-skinclinic.or.jp/patchtest/

検査期間中は貼付部位を水で濡らさないようにし、ステロイド剤を内服中の場合は正確な判定ができないため、可能なら検査の3日前から終了まで内服を中止する必要があります 。現在日本ではジャパニーズスタンダードアレルゲン2015(JSA2015)として24種類のアレルゲンでの検査が標準的に行われています 。

接触性皮膚炎の治療ガイドラインと対処法

接触皮膚炎の治療では、原因を確定しその原因との接触を断つことが根治につながる最も重要な対処法です 。限局性接触皮膚炎ではステロイド外用薬と保湿剤の外用が推奨され、全身性の場合にはプレドニゾロン内服も考慮されます 。

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/61/2/61_KJ00007978206/_pdf

日常品や化粧品が原因として疑われる場合には代替品の推奨などが必要となり、限局性の場合はステロイド内服薬は重症時に限られ、抗ヒスタミン薬は補助的療法として用いられます 。
接触皮膚炎は皮膚科医が診療する頻度の高い疾患であり、適切な診断と治療により根治可能な疾患です 。しかし原因が明らかにされていない場合や適切な防御方法がとられていない場合には難治となることが多く、パッチテストによる原因の確定が重要な診療技術となっています 。

接触性皮膚炎における新たな病態理解と予防対策

近年の研究により、接触性皮膚炎の病態理解が進歩し、自然免疫系の役割も重要であることが明らかになってきました 。従来はIV型アレルギー反応の感作相でのみ自然免疫が関与するとされていましたが、エフェクター相においても自然免疫系が重要な役割を果たすことが判明しています 。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6854274/

また、神経系との相互作用も注目されており、感覚神経や神経ペプチドの放出が炎症の増幅や持続に関与することが報告されています 。このような新しい知見により、従来考えられていたよりも複雑な免疫学的メカニズムが接触性皮膚炎の病態に関与していることが理解されています 。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11940366/

予防対策として、職業性接触皮膚炎では作業内容の変更や適切な保護具の使用が重要であり、一般的な接触皮膚炎では原因物質の特定と回避が基本となります 。特にアトピー素因を持つ人では皮膚のバリア機能が低下していることが多く、より注意深い対策が必要とされています 。

参考)https://hc.mochida.co.jp/skincare/atopic/atopic24.html