カスポファンギンの副作用
カスポファンギンの肝機能障害リスクと監視
カスポファンギン(商品名:カンサイダス)の最も注意すべき副作用は肝機能障害です 。国内第II相非盲検試験では、投与を受けた小児患者の50.0%に副作用が認められ、その主なものはALT増加(25.0%)、AST増加(20.0%)、肝機能異常(15.0%)でした 。
参考)https://kobe-kishida-clinic.com/respiratory-system/respiratory-medicine/caspofungin-acetate/
中等度肝機能障害患者を対象とした研究では、Child-Pugh分類B群(スコア7-9点)において、AST増加、ALT増加、ALP増加が有意に高い発現率を示しました 。これは、カスポファンギンが肝臓で代謝されるため、既存の肝機能低下が副作用の発現に影響することを示しています 。
参考)https://www.chemotherapy.or.jp/journal/jjc/06504/065040597.pdf
定期的な肝機能検査として、AST(GOT)、ALT(GPT)、ALP、総ビリルビンの監視が推奨されます 。特に投与開始時にChild-Pughスコアを評価し、中等度肝機能障害患者では投与2日目以降35mgへの用量調整を検討することが重要です 。
カスポファンギンのアナフィラキシー反応とその対策
カスポファンギンによるアナフィラキシー反応は頻度不明とされているものの、重篤な副作用として注意が必要です 。症状には発疹、顔面腫脹、血管浮腫、そう痒症、熱感、気管支痙攣、呼吸困難、潮紅などが含まれます 。
参考)https://www.carenet.com/drugs/category/antifungals/6179402D2026
アナフィラキシー反応は特に初回投与時や再投与時に発生しやすく、投与開始後は注意深い観察が必要です 。過去に他のエキノカンジン系抗真菌薬でアレルギー反応を示した患者では交差反応のリスクがあるため、使用を避けるべきです 。
軽度の皮疹では経過観察、蕁麻疹には抗ヒスタミン薬投与、呼吸困難では酸素投与・気管支拡張薬、アナフィラキシーにはエピネフリン投与といった段階的な対応が重要です 。投与は約1時間かけて緩徐に点滴静注することが推奨され、急速静注は避けるべきです 。
カスポファンギンの重篤皮膚反応と早期発見
2017年の添付文書改訂により、カスポファンギンの重大な副作用として中毒性表皮壊死融解症(TEN)と皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)が追加されました 。これらは稀ではあるものの、生命に関わる重篤な皮膚反応です 。
参考)https://www.pmda.go.jp/files/000217836.pdf
国内外の症例集積により、直近3年度では皮膚粘膜眼症候群が1例報告されており、海外でも類似症例が確認されています 。これらの皮膚反応は投与開始から数日から数週間で発症する可能性があり、初期症状として発熱、皮疹、口腔内病変などが現れることがあります 。
参考)https://www.msdconnect.jp/wp-content/uploads/sites/5/2021/02/revision_201704_r_cancidas_inf.pdf
医療従事者は投与中の患者に対し、皮膚症状の変化を注意深く観察し、異常が認められた場合には速やかに投与を中止し、適切な処置を行うことが重要です 。患者に対しても、皮疹や口腔内の異常、発熱などの症状が現れた場合は直ちに医療機関を受診するよう指導することが必要です 。
カスポファンギンの一般的副作用と頻度
カスポファンギンの一般的な副作用として、発熱(10-20%)、悪心・嘔吐(5-10%)、頭痛(5-10%)、皮疹(3-5%)、注射部位反応(3-5%)が報告されています 。これらの症状は多くの場合軽度から中等度であり、治療の継続に支障をきたすことは稀です 。
その他の副作用として、高血圧、静脈炎、寒気、発熱などが報告されており 、眼症状として眼そう痒症(1-5%未満)も認められます 。胃腸障害では悪心、腹部圧痛、下痢、血便排泄、下部消化管出血、口の感覚鈍麻などが1-5%未満の頻度で発現します 。
参考)https://www.rad-ar.or.jp/siori/search/result?n=33026
これらの一般的な副作用は多くの場合一過性であり、対症療法により管理可能です 。ただし、症状が持続する場合や悪化する場合には、投与量の調整や中止を検討することが必要です 。患者の状態を総合的に判断し、リスク・ベネフィットを慎重に評価することが重要です 。
カスポファンギン使用時の特殊集団での注意点
肝機能障害患者では、カスポファンギンの薬物動態が変化し副作用のリスクが増加します 。軽度肝機能障害患者(Child-Pughスコア5-6)では、AUCが約55%増加することが報告されており 、用量調整が必要な場合があります 。
参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/drugdetails.aspx?code=60341
小児患者においては、成人と類似した安全性プロファイルを示しますが、より注意深い監視が必要です 。3ヶ月未満の小児患者を対象とした試験では、25mg/m²の投与で良好な忍容性が確認されています 。新生児や乳児では、成人とは異なる薬物動態を示すため、個別の用量調整が重要です 。
参考)https://www.pmda.go.jp/drugs/2014/P201400169/170050000_22400AMX00036_B100_2.pdf
腎機能障害患者では、カスポファンギンは主に肝臓で代謝されるため、腎機能による用量調整は通常不要ですが、全身状態の評価は必要です 。高齢者では、一般的に薬物に対する感受性が高いため、副作用の発現により注意を払う必要があります 。妊娠・授乳中の使用については、安全性が確立されていないため、リスク・ベネフィットを慎重に評価する必要があります 。