心内膜炎ガイドライン診断基準
心内膜炎のデューク診断基準
感染性心内膜炎の診断には改訂デューク基準が国際的に標準として用いられています 。この診断基準は大基準と小基準に分類され、体系的な評価を可能にします。
大基準は血液培養での特異的病原体の検出と心エコーでの心内膜病変の確認から構成されています 。血液培養では12時間以上の間隔で採取した2つの検体で心内膜炎に典型的な微生物が陽性となることが重要です。
2023年には新たなデューク-ISCVID診断基準が発表され、微生物学的検査法の進歩や疫学的変化を反映した改訂が行われました 。これにより従来の診断精度がさらに向上しています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10681650/
心内膜炎の血液培養検査法
血液培養は感染性心内膜炎診断の中核をなす検査であり、適切な検体採取が治療成功の鍵となります 。理想的には6時間以上の間隔を空けて3回の血液培養を実施します。
各検体は異なる静脈穿刺部位から20mL採取し、既存カテーテルからの採取は避けます 。感染性心内膜炎では持続的菌血症を呈するため、発熱時に限定せず採取可能です。
適切に採取された血液培養では、未治療患者の99%で少なくとも1回の培養が陽性となります 。培養結果は抗菌薬選択の重要な指針となるため、治療開始前の採取が推奨されます。
心内膜炎の抗菌薬治療期間
感染性心内膜炎の抗菌薬治療は原因菌と重症度に応じて一般的に4-6週間の長期投与が必要です 。疣贅内は血流が乏しく抗菌薬が浸透しにくいため、通常より高用量での投与が行われます。
参考)https://maruoka.or.jp/cardiovascular/cardiovascular-disease/infective-endocarditis/
人工弁置換術後の症例では6-8週間、自己弁の場合は4-6週間の治療期間が推奨されています 。抗菌薬は4-8時間毎の点滴投与で、他の感染症と比較して頻回投与が特徴的です。
参考)https://maruyamahosp.jp/column/1774/
原因菌別では、レンサ球菌にはペニシリンG、MRSAにはバンコマイシンが第一選択となり、薬剤感受性結果に基づく適切な選択が重要です 。治療開始後72時間で効果判定を行い、1週間以内の解熱が治療成功の指標となります 。
心内膜炎の外科治療適応
感染性心内膜炎では内科的治療と並行して外科治療の適応を常に検討する必要があります 。日本循環器学会ガイドライン2017年版では、明確な外科治療適応が示されています。
参考)https://jscvs.or.jp/surgery/2_8_syujutu_sinnaimakuen/
緊急手術の適応は急性心不全、弁周囲膿瘍、心内構築の破壊が挙げられます 。また塞栓症の可能性が高い大きな可動性疣贅も早期手術の対象となります。
人工弁感染、特に早期人工弁心内膜炎(術後2ヶ月以内)では外科治療が強く推奨されます 。適切なタイミングでの外科治療により、感染性心内膜炎の予後を大幅に改善できることが報告されています 。
参考)https://kompas.hosp.keio.ac.jp/disease/000197/
心内膜炎のガイドライン更新内容
2023年ESCガイドラインでは心内膜炎管理において重要な改訂が行われました 。特に外来静注抗菌療法(OPAT)や経口心内膜炎治療に関する新たな推奨が追加されています。
参考)https://www.tcross.co.jp/meeting/esc/5964
心内膜炎チームの重要性が強調され、多職種連携による包括的管理体制の構築が推奨されました 。これにより診断から治療、予防まで一貫した質の高い医療提供が可能となります。
日本循環器学会の2017年改訂版ガイドラインでは、予防的抗菌薬投与の適応拡大や新規抗菌薬の使用指針が明確化されました 。チーム医療の必要性と専門病院への紹介タイミングも詳細に規定されています。
参考)https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00653/
日本循環器学会 感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017年改訂版)の詳細な治療指針と診断基準
ESC 2023年版心内膜炎管理ガイドラインにおける外来治療と新診断基準の解説

慶應義塾大学病院による感染性心内膜炎の包括的診療指針と最新治療戦略