性器ヘルペスとは症状や原因と治療
性器ヘルペスとは何か
性器ヘルペスとは、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)または2型(HSV-2)を病原体とする性感染症である 。この疾患は、ウイルス感染によって性器やその周辺に水疱性病変や浅い潰瘍が形成される特徴がある 。
参考)https://mymc.jp/clinicblog/144599/
単純ヘルペスウイルスは一度感染すると体内から完全に除去することができず、主に腰仙髄神経節などに潜伏感染する 。このため感染者は長年にわたって再発を繰り返すという特徴的な経過を示す 。
参考)https://seisinkai.com/insurance/disease12.html
2019年の全国統計では、性器ヘルペスは約9,400件が報告されており、20代後半にピークを示した後60代後半まで幅広い年齢層で認められる 。男性では淋菌感染症、性器クラミジア感染症に次いで3番目に多く、女性では性器クラミジア感染症に次いで2番目に多い性感染症とされている 。
参考)https://kitsukawa-clinic.jp/health_inf/disease-condtions/herpes/symptom.html
性器ヘルペスの原因と感染経路
性器ヘルペスの原因は単純ヘルペスウイルスの感染である 。従来、HSV-1は主に口唇やその周囲に、HSV-2は主に性器に感染するとされていたが、現在では口唇ヘルペス感染者とのオーラルセックスによりHSV-1が性器に感染することも多い 。
参考)https://www.aozoracl.com/genital_herpes
主な感染経路は性行為やオーラルセックスであるが、感染力が非常に強いため、お風呂やトイレ、コップや箸の共用などからも感染する場合がある 。また、一見正常に見える皮膚や粘膜からの伝播や、無症状の時期でも分泌液にウイルスが含まれている場合には感染が成立する 。
妊娠中の感染では産道感染により新生児単純ヘルペス感染症を引き起こす危険性があり、皮膚病変から脳炎や肝障害などの全身型まで様々な症状を呈する可能性がある 。ウイルスが付着したタオルや便座等を介した間接的な感染も報告されている 。
性器ヘルペスの症状と潜伏期間
性器ヘルペスの潜伏期間は感染から2〜10日程度である 。初感染時には症状が最も重篤で、外陰部に多数の水疱性病変や浅い潰瘍病変を伴う激しい痛みが出現する 。潰瘍は左右対称にできることが多く、これは「kissing ulcer」と呼ばれる特徴的な所見である 。
参考)https://www.shinjyuku-ekimae-clinic.info/hinyoukika/herupesu_seiki.html
初感染時の症状として、性器や肛門周辺にかゆみやヒリヒリとした違和感(前駆症状)が生じ、その後赤みのある小丘疹が出現し数日以内に痛みを伴う水疱に変化する 。水疱は破れて潰瘍となり強い痛みを伴い、歩行時や排尿時に痛みが悪化することもある 。
症状が重篤な場合には38℃以上の発熱、頭痛、倦怠感などの全身症状を伴うことがあり 、鼠径部リンパ節の腫脹や疼痛も認められる 。初感染から2〜4週間で自然治癒するが、その後も様々な誘因により再発を繰り返す 。
性器ヘルペスの診断と検査法
性器ヘルペスの診断は臨床症状の観察とウイルス検査によって行われる 。主な診断方法として、視診による臨床症状の確認、抗原検査、血液検査がある 。
参考)https://www.mycity-clinic.com/general-outpatient/venereal-disease/genital_herpes
症状がある場合には皮膚擦過検査による抗原検査が実施され、約15分で結果が判明するが、HSV-1型と2型の区別はつかない 。無症状の場合や過去の感染歴を調べる場合には血液検査による抗体検査が行われ、感染機会から1ヶ月以上経過で検査可能となる 。
抗体検査では現在HSV-1型と2型を区別して結果を得ることができ、1型・2型ともに1ヶ月経過で検査可能だが、3ヶ月以上経過していることが理想的とされている 。特に1型については6ヶ月以上経過が必要な場合もある 。
イムノクロマト法を用いた抗原検出キットによる検査は比較的迅速に結果が確認できるため、急性期診断に有用である 。
性器ヘルペスの治療法と抗ウイルス薬
性器ヘルペスの治療は主に抗ウイルス薬を用いた症状の軽減と再発予防を目的としている 。現在のところHSVを完全に排除する治療法は存在しないが、抗ウイルス薬によって症状を管理することが可能である 。
主な治療薬としてアシクロビル(ゾビラックス)、バラシクロビル(バルトレックス)、ファムシクロビル(ファムビル)が用いられ、初感染では5〜10日間、再発時では5日程度の内服が行われる 。これらの薬剤はウイルスの複製を抑制し、症状期間の短縮と再発頻度の減少をもたらす 。
再発抑制療法では、再発頻度が高い場合(年6回以上)に抗ウイルス薬を長期間毎日服用する方法が採用される 。バルトレックスを1日1錠、半年から1年間継続することで、ヘルペスウイルスの増殖を抑制し再発を予防する 。
PIT療法(Patient Initiated Therapy)では、再発の初期症状が出現した時に患者自身の判断で抗ウイルス薬を服用する治療法も選択される 。