前立腺炎症状と男性患者の診断治療
前立腺炎の男性特有症状と分類
前立腺炎は男性特有の前立腺に起こる炎症性疾患で、NIH(アメリカ国立衛生研究所)分類により4つのカテゴリーに分けられています。急性細菌性前立腺炎(カテゴリーⅠ)では38℃以上の高熱と排尿時の激しい痛み、頻尿、排尿障害が急激に出現します。慢性細菌性前立腺炎(カテゴリーⅡ)では発熱はなく、排尿時痛も軽度ですが、尿意頻発と下腹部や会陰部(陰嚢と肛門の間)に持続的な鈍痛や重苦しい感じが認められます。
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慢性前立腺炎(カテゴリーⅢ)は最も頻度が高く、炎症性(Ⅲa)と非炎症性(Ⅲb)に分類され、主な症状として会陰部、腰、陰茎、精巣に痛みが生じ、排尿や射精、排便時にも痛みを伴うことがあります。無症候性炎症性前立腺炎(カテゴリーⅣ)では前立腺組織に炎症が証明されても自覚症状が全くありません。
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症状の多くは膀胱および骨盤部の筋肉、特に会陰部の筋肉のけいれんに起因し、陰茎、精巣、腰部にまで放散する痛みが特徴的です。
前立腺炎の原因と発症機序
急性細菌性前立腺炎の主要な原因は大腸菌やブドウ球菌などの細菌感染で、通常は尿道から細菌が前立腺に侵入し感染が拡大することで発症します。原因微生物の約60%がE.coliで、他のグラム陰性桿菌とグラム陽性球菌がそれぞれ20%を占めています。
参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/contentpage.aspx?diseaseid=451
慢性前立腺炎の原因は複雑で、前立腺周囲の血流障害、排尿障害による前立腺内への尿の逆流、骨盤周辺や下半身の知覚過敏、副腎ホルモンや性ホルモンの分泌異常、自己免疫反応などが関与していると考えられています。デスクワークなどの長時間座位、自転車やバイクによる会陰部への圧迫、ストレスや疲労、過度の飲酒、喫煙、冷えなどが症状を悪化させる要因となります。
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クラミジアやマイコプラズマなどの病原体感染の可能性もあり、何らかの精神的ストレスが影響する場合もあります。
参考)前立腺炎について
前立腺炎の診断方法と検査体系
前立腺炎の診断は症状、身体所見、尿検査と尿培養検査の結果に基づいて総合的に判断されます。直腸診は必須検査で、肛門から指を挿入して前立腺を触診し、急性前立腺炎では前立腺が著明に腫大し、圧迫を加えると激痛が生じます。
参考)前立腺炎の診断はどのように行う?自覚症状と診断方法について解…
尿検査では炎症を示す白血球や感染を示す細菌の有無を確認し、尿培養検査により尿路感染の存在を判定します。前立腺マッサージ後の前立腺液の培養から感染が判明した場合は、明らかに前立腺由来の感染と診断できます。
血液検査では炎症マーカー(白血球数、CRP)の測定を行い、急性細菌性前立腺炎では これらの値が上昇します。超音波検査により前立腺の腫大や構造的異常を評価し、必要に応じてクラミジア検査なども実施されます。
前立腺炎の治療法と薬物療法
急性細菌性前立腺炎では適切な抗菌薬による治療が主体となり、培養結果に基づいた薬剤感受性試験により効果的な抗生物質を選択します。レボフロキサシンやテトラサイクリンなどが一般的に使用され、治療期間は通常2~4週間です。前立腺肥大症治療薬であるα1ブロッカー(ドキサゾシン、テラゾシン、タムスロシン)の併用も有効とされています。
参考)急性前立腺炎
慢性前立腺炎では原因が明確でないため完治に導く治療法はありませんが、症状緩和を目的とした対症療法が行われます。セルニチンポーレンエキス(植物由来の抗炎症薬)が最もよく処方され、漢方薬(竜胆瀉肝湯、桂枝茯苓丸、牛車腎気丸など)も使用されます。
参考)前立腺炎の治療について
神経性疼痛に対してはプレガバリンや抗うつ薬が有効な場合があり、鎮痛薬や抗炎症薬により痛みと腫れの軽減も図られます。新しい治療法として低強度体外衝撃波治療(LI-ESWT)も注目されており、根本的な改善効果が期待されています。
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前立腺炎の予防法と生活管理指導
前立腺炎の予防には生活習慣の改善が重要で、長時間の座位を避けることが基本となります。デスクワークや運転時には1~2時間ごとに立ち上がり、軽いストレッチを行うことで骨盤内の血流を促進させます。自転車やバイクによる長時間の会陰部圧迫も避けるべきです。
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適度な運動(ウォーキング、ストレッチ)を日常に取り入れ、十分な水分摂取により尿の流れを良くし、膀胱内の細菌を洗い流すことが感染予防につながります。刺激の強い香辛料や過度の飲酒を控え、便秘予防のため食物繊維を十分摂取することも重要です。
冷房対策として腹部や腰の保温を心がけ、ストレスを溜めず十分な睡眠をとることで自律神経バランスを整え免疫力を維持します。お風呂でしっかり温まることで血流改善効果も期待できます。規則正しい排尿習慣を身につけ、尿意を我慢しすぎないことで膀胱への負担を軽減できます。