躁状態を落ち着かせる対処法
躁状態の初期サインを見極める方法
躁状態を効果的に落ち着かせるための第一歩は、早期発見です 。軽躁状態の前触れとして、朝起きた際に急に体が楽になったり、根拠なく物事がうまくいきそうと感じたりすることがあります 。また、周囲の人から「最近変わった」と指摘されることも重要なサインです 。
医療従事者として注目すべき点は、患者自身が症状の変化に気づけているかどうかです 。本人が自分の気分の状態を把握することが、その後の対処を左右する重要な要素となります 。睡眠時間の変化や、普段と異なる高揚感などの身体的・心理的変化を記録することで、パターンの把握が可能になります 。
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知恵袋でよく見られる質問「躁状態になっているのか分からない」という悩みに対して、周囲の人々の観察も重要な判断材料となります 。家族や友人からの客観的な指摘は、本人では気づきにくい変化を知らせてくれる貴重な情報源です 。
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躁状態における生活リズムの調整法
躁状態を落ち着かせるために最も重要なのは、規則正しい生活リズムの維持です 。起床時には朝日を浴びて体内時計をリセットし、規則正しい食事時間を保つことで、乱れた生体リズムを整えることができます 。
特に睡眠に関しては、躁状態では「眠らなくても元気が続く」状態になりがちですが、これが症状の悪化につながります 。就寝時間を一定に保ち、寝室環境を整える(アロマや白湯の活用)ことが推奨されます 。携帯電話やテレビなどの画面を見ない時間を設けることも、刺激を減らす重要な対策です 。
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一日の生活リズムを整えるのが難しい場合は、夜のルーティンを作ることから始めるのが効果的です 。特に夜を活動的に過ごさないよう、落ち着いて生活するように心がけることが大切です 。徹夜は特に好ましくなく、一晩の徹夜でも躁状態を引き起こす可能性があります 。
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躁状態時の刺激制限と活動管理
躁状態では刺激に対して過敏になっているため、外部からの刺激を意識的に減らすことが重要です 。買い物や外出は必要最低限に留め、人混みや騒がしい場所は避けるようにしましょう 。特に買い物は躁状態では衝動的な浪費につながりやすいため、家族に協力してもらい、クレジットカードや現金の管理をお願いすることも効果的です 。
活動制限については、刺激的な活動を6時間までとする厳格なルールを設けることが推奨されます 。その他の時間は横になったり、座ってゆったり過ごし、リラックスできる音楽を低音量で聴いたり、丁寧にお茶を淹れて時間をかけて飲んだりと、刺激の少ない活動にすることが大切です 。
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運動に関しては、躁状態では「エネルギーを消費すれば通常モードに戻るのでは」との発想から激しい運動を行いがちですが、これは逆効果です 。躁状態では刺激が刺激を呼び、より状態が悪化するおそれがあるため、激しい運動は中止し、軽い散歩も最小限にとどめることが必要です 。
躁状態における薬物療法の知識
躁状態の治療には主に薬物療法が用いられ、第一選択薬としてリチウム(炭酸リチウム)が使用されます 。リチウムは躁状態の治療において最も推奨される薬剤ですが、効果が出るまでに時間がかかるという特徴があります 。
即効性を重視する場合は、オランザピン、アリピプラゾール、クエチアピン、リスペリドンなどの非定型抗精神病薬が処方されることがあります 。実際、治療効果が出るまでに、リチウムはオランザピンより10日ほど遅れるという報告があります 。
バルプロ酸やカルバマゼピンなどの気分安定薬も使用され、多くの場合、躁状態は1〜2ヶ月の間に改善します 。中等度以上の躁状態では、リチウムと非定型抗精神病薬の併用が最も推奨される治療法とされています 。副作用として手指の振戦、記憶障害、体重増加などがあり、血中濃度の定期的な測定が必要です 。
参考)https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/iinkai/katsudou/data/guideline_sokyoku2020.pdf
躁状態患者への家族の対応法
家族が躁状態の患者に対応する際は、まず躁うつ状態を本人と家族で共通認識することが重要です 。病気のことを正しく理解し、穏やかな気持ちで接することが攻撃的な言動を和らげるために大切になります 。
躁状態の人は暴言を吐くことがありますが、これを根に持たないことが大切です 。躁状態でもその時のことは覚えているため、その後の家族関係にしこりを残すことになります 。患者が入院を拒否しても、「病気を治すために入院してください」と本人を説得することが必要な場合もあります 。
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具体的な対処法として、攻撃的な言動に直面した際は、その場を離れる・逃げる、怒りが収まるまでそっとしておく、医療機関の利用を考えるという3つの対応が推奨されます 。また、双極性障害の気分の波を穏やかにするためには、規則正しい生活を送り、軽い運動などで適度にストレスを発散することが大切です 。