心筋症の種類と特発性心筋症の分類診断

心筋症の種類と分類

心筋症の主要分類
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拡張型心筋症

左心室の拡大と収縮機能低下が特徴

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肥大型心筋症

心筋の肥厚により拡張機能が障害

拘束型心筋症

心室拡張期の充満障害が主体

心筋症の基本的定義と種類の概要

心筋症は心臓の筋肉の病気で、心筋に障害を与えて心臓のポンプ機能が障害される疾患群です。心筋症は大きく特発性心筋症と特定心筋症(二次性心筋症)に分類され、特発性心筋症には主に3つの病型があります。世界保健機関(WHO)の国際疾病分類でも、心筋症は重要な循環器疾患として位置づけられています。

心筋症の主要な種類として、拡張型心筋症(DCM)、肥大型心筋症(HCM)、拘束型心筋症(RCM)、不整脈原性右室心筋症(ARVC)があります。これらの疾患はそれぞれ異なる病態を示し、診断方法や治療方針も大きく異なるため、正確な分類が重要です。心筋症は特定疾患の難病指定を受けており、医療費の補助制度も整備されています。

参考)心筋症|主な病気・疾患について|ご利用の皆様へ|飯塚病院 循…

心筋症の拡張型心筋症の病態と診断

拡張型心筋症は特発性心筋症の中で最も代表的な疾患で、左室駆出率低下と左室内腔拡大を特徴とし、多くの場合進行性です。左心室の収縮力が落ち、左心室の壁が薄くなり中の容積が大きくなって、心臓のポンプ機能が低下する病態を示します。症状としては動悸、息切れ、むくみ、疲れやすいなどの心不全症状が出現します。

拡張型心筋症の診断は、心筋症を合併する別の疾患(弁膜症や高血圧など)の可能性を排除することで確定診断を下します。診断に不可欠な検査として心エコー、心電図、胸部レントゲンがあり、近年は心臓MRIも実施されることが多くなっています。心臓カテーテル検査や冠動脈CT検査で心臓の機能低下の原因となる冠動脈疾患がないことを確認することも重要です。

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心筋症の肥大型心筋症の分類と閉塞性病態

肥大型心筋症は左室または両心室の肥大を特徴とし、肥大は通常心室中隔を含む非対称性肥大を示します。左室流出路狭窄の有無により閉塞性肥大型心筋症(HOCM)と非閉塞性肥大型心筋症(HNCM)に分けられ、心尖部の肥厚が特に著しい例は心尖部肥大型として扱われます。国立循環器病研究センターの研究により、日本人に多い心尖部肥大型心筋症は他のタイプより予後が良いことが明らかになっています。

閉塞性肥大型心筋症では、厚くなった心筋により心臓から血液を送り出す出口付近が非常に狭くなり、安静時または運動などの生理的な誘発により30mmHg以上の圧較差を認める場合と定義されます。一方、非閉塞性肥大型心筋症では安静時および生理的な誘発時に30mmHg以上の圧較差を認めません。治療法として経皮的心室中隔焼灼術(PTSMA)や心室中隔切除術などの適応となる場合があります。

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心筋症の拘束型心筋症と不整脈原性右室心筋症の特徴

拘束型心筋症は心臓の拡張が高度に障害される疾患で、左心室の拡張に問題があり、肥大型と違って肥大・拡張が見られないという特徴があります。この疾患は比較的稀な病型ですが、心室の充満障害により右心不全症状が前面に出やすく、診断が困難な場合があります。病理学的には心内膜の線維化や石灰化が認められることが多く、心臓MRI検査が診断に有用です。

不整脈原性右室心筋症は右室心筋が局所的に脂肪変性・線維化し、右室の拡大や異常を起こす疾患です。この疾患は若年者の運動中の突然死の原因となることがあり、不整脈の管理が重要となります。診断には心エコー検査、心臓MRI検査、電気生理学的検査が行われ、植え込み型除細動器(ICD)の適応となることが多いです。

参考)拡張型心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症とは?

心筋症の特定心筋症と遺伝的要因の理解

特定心筋症(二次性心筋症)は全身疾患の結果として心臓に病気が起こるもので、心サルコイドーシス、心アミロイドーシス、ファブリー病などが含まれます。心サルコイドーシスは炎症性の細胞が心臓の中に形成される状態で、胸痛、息切れ、不整脈、心拡大、心不全などの多様な症状を示します。心アミロイドーシスは心臓にアミロイドと呼ばれる異常なたんぱく質の線維が沈着し、拡張障害による心不全の約1割を占めることが分かってきています。

肥大型心筋症における遺伝的要因として、心筋βミオシン重鎖、αトロポミオシン、心筋トロポニンTなどの心筋収縮蛋白遺伝子の変異が関与し、常染色体優性遺伝を示すことが知られています。特にMYH7遺伝子のバリアントは予後不良と関連があるとされ、重症心不全に至る詳しい臨床経過が大阪大学の研究で報告されています。遺伝子診断の進歩により、家族内でのスクリーニングや予後予測が可能となってきており、個別化医療の展開が期待されています。

参考)http://www.cardiology.med.osaka-u.ac.jp/?page_id=37976