免疫療法費用と保険適用対象

免疫療法費用の現状

免疫療法の費用概要
💰

保険診療対象

免疫チェックポイント阻害薬、光免疫療法など

💸

自由診療対象

免疫細胞療法、複合免疫療法など

⚖️

高額療養費制度

保険診療の患者負担軽減制度

免疫チェックポイント阻害薬の費用構造

免疫チェックポイント阻害薬の費用は、薬価の変遷と共に大きく変動している 。オプジーボニボルマブ)は承認当初の2014年では年間3,800万円という高額な薬価が設定されていたが、適応がんが拡大するに伴い、医療財政への影響を考慮して段階的に薬価が引き下げられた 。現在では年間約1,090万円程度まで削減されている。

参考)https://www.semanticscholar.org/paper/89aef43fd81d88b0e0426f32326ebcf0a050a577

キイトルーダ(ペムブロリズマブ)との比較では、オプジーボが体重に応じた投与量設定であるのに対し、キイトルーダは固定用量であることから、患者の体重により薬剤費に差が生じる 。体重40kgの患者では年間1,144万円、60kgでは年間1,729万円となるオプジーボに対し、キイトルーダは年間1,427万円で一定である。日本人の平均体重を考慮すると、キイトルーダの方が薬剤費を抑えられるケースが多い。

参考)オプジーボvsキイトルーダ 免疫チェックポイント阻害薬 市場…

自由診療による免疫細胞療法の価格設定

免疫細胞療法は自由診療に分類されるため、公的保険の適用外となり、費用は全額患者負担となる 。高度活性化NK細胞療法プラス4種複合免疫療法では、6回投与(1クール)で約264万円の費用がかかる 。また、ネオアンチゲンペプチドワクチン療法では、遺伝子解析費用198万円とワクチン5回接種240万円を合計した約438万円が必要となる 。

参考)がん免疫療法の治療費用・料金表

6種複合免疫療法の治療費は最低でも約166万円かかり、保険適用外のため治療費は全額自己負担となる 。さらに、がん保険の先進医療特約も適用されないため、経済的負担は大きい。これらの治療法は効果が証明されていない部分もあり、高額な治療費に対する疑問も存在する。

参考)6種複合免疫療法の治療費を解説 ー保険適用はされる?

保険適用条件と対象疾患の限定性

免疫療法の保険適用は、厚生労働省による承認を受けた治療法に限られている 。光免疫療法は2020年に承認され、2021年1月から限られた条件下で保険適用となったが、現時点では「切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部がん」のみが対象となっている 。

参考)光免疫療法とは?保険は適用されるの?光免疫療法のメリットや対…

免疫チェックポイント阻害薬についても、がんの種類や治療ラインによって適応が制限されている 。オプジーボの場合、メラノーマ、非小細胞肺がん、腎細胞がん、ホジキンリンパ腫など、特定のがん種にのみ保険適用が認められている 。このように、保険診療で受けられる免疫療法は、治療法や対象疾患が厳格に限定されている現状がある。

参考)高額と言われるオプジーボの治療費、実際はいくらかかる?

高額療養費制度の経済効果分析

保険診療における免疫療法では、高額療養費制度により患者の自己負担が軽減される 。年収や年齢により異なるが、多くの患者では年間50〜100万円程度の負担に抑えることができる。これは、薬価が年間1,000万円を超える高額な治療であっても、実質的な患者負担は大幅に軽減されることを意味している。

参考)免疫チェックポイント阻害剤の費用

CAR-T療法のような超高額な治療では、1回の治療で約5,000万円の費用がかかるが、高額療養費制度により患者の自己負担は月額上限内に収まる 。しかし、これらの治療費は国の医療経済に大きな影響を与えるため、より安価な治療法の開発が急務となっている。特にユニバーサルCAR-T療法の開発により、コスト削減への期待が高まっている。

参考)6-2. 実際にかかる平均的な費用と概要|一般社団法人日本造…

免疫療法の将来的な費用削減戦略

現在の免疫療法開発では、治療効果の向上と同時に費用削減への取り組みが進められている 。次世代のがん免疫療法では、AI技術を活用した副作用予測や治療プロセスの簡略化により、治療コストの削減が期待されている 。

参考)次世代のがん治療法の開発を目指して ― 複合的がん免疫療法の…

名古屋大学では、比較的安価な方法として、ウイルスベクターを使わない遺伝子改変によってCAR-T細胞を作る方法を開発し、2018年から臨床試験を開始している 。このような技術革新により、従来の高額な治療法に対する代替手段が提供される可能性がある。

参考)がんと免疫「CAR-T療法」血液がんの実績と他がん種への期待…

費用対効果の観点からは、スギ花粉症に対する免疫療法の研究では、維持療法の長期継続により初期療法よりも経済的になることが示されている 。このように、短期的な高額投資であっても、長期的な視点では費用対効果が改善される可能性がある。

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/56/11/56_KJ00004785037/_pdf

複合的がん免疫療法の研究開発では、患者ごとにオーダーメイドで行う個別化治療を目指し、治療効果の最大化と同時にコスト効率の改善も検討されている 。これらの技術進歩により、免疫療法の費用対効果は今後大幅に改善されることが期待される。