インターロイキン一覧
インターロイキンは、主に免疫に関与する細胞から分泌される重要なサイトカインの一群です。現在までに30種類以上が同定されており、それぞれが異なる機能を持ちながら免疫系の調節に重要な役割を果たしています。
参考)インターロイキンとは?免疫に関わるサイトカインについて解説
インターロイキンは白血球が産生する分泌分子群で、リンパ球や単球、マクロファージなどから産生されます。これらの分子は細胞間の情報伝達を促進し、免疫細胞の活性化や調節を行うだけでなく、自己免疫疾患や炎症性疾患、腫瘍などの生理・病理過程の調節に広く関与しています。
医療従事者にとって重要なのは、これらのインターロイキンが疾患の診断マーカーや治療標的として活用されている点です。特に関節リウマチやがん治療において、複数のインターロイキンが治療薬として大きなシェアを占めています。
インターロイキン分類の基本構造
インターロイキンは構造的な相同性に基づいて、IL-1ファミリー、IL-2ファミリー、IL-6ファミリー、IL-10ファミリー、IL-12ファミリー、IL-17ファミリーなどのタンパク質ファミリーに分類されています。
各ファミリーには特徴的な受容体構造があり、これによってシグナル伝達経路が異なります。例えば、クラスⅠ受容体にはIL-2、IL-3、IL-6、IL-12などが含まれ、クラスⅡ受容体にはIFN、IL-10、IL-22などが含まれます。
参考)http://www.hakatara.net/images/no10/10-2.pdf
受容体の型による分類は以下の通りです。
- クラスⅠ受容体:IL-2、IL-3、IL-6、IL-12、G-CSF
- クラスⅡ受容体:IFN、IL-10、IL-22
- IL-1受容体ファミリー:IL-1、IL-18
- TNF/Fas受容体
- TGF-β受容体
- チロシンキナーゼ型受容体
- ケモカイン受容体
この分類により、インターロイキンの作用機序や治療標的としての特性を理解することができます。
インターロイキン機能の詳細一覧
主要なインターロイキンの機能について詳細に解説します。IL-1(αおよびβ)は、B細胞、樹状細胞、内皮細胞、マクロファージ、単球、およびナチュラルキラー細胞によって産生される炎症性サイトカインです。
参考)免疫系を構成する分子 – 12. 免疫学;アレルギー疾患 -…
IL-1の主な作用は、T細胞の活性化を共刺激し、B細胞の増殖および成熟を促進します。また、NK細胞の細胞傷害活性を亢進させ、マクロファージによる他のサイトカイン産生を誘導します。
IL-2はT細胞から分泌され、T細胞自身の増殖と分化を促進する作用を持っています。がんの免疫療法に使用されるインターロイキンとして特に重要です。
IL-4はアレルギー反応で重要な役割を担い、B細胞の増殖、T細胞と肥満細胞の分化に関与します。IL-5はB細胞に働きかけ、IgA分泌を促進し、好酸球とも関係があります。
IL-6は炎症、免疫疾患の発症に関係し、T細胞やマクロファージによって産生されます。関節リウマチ患者の血流中や滑液中に高濃度に存在し、病態の活動性と相関することが知られています。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/144/4/144_172/_pdf
IL-8は好中球の浸潤を伴う炎症疾患、関節リウマチ、痛風、喘息発作などで重要な役割を果たします。
インターロイキン種類の医療応用現状
現在、複数のインターロイキンが医療現場で治療薬として活用されています。IL-2は悪性黒色腫や腎細胞がんの治療に使用され、免疫系を活性化してがん細胞を攻撃させます。
IL-6阻害薬は関節リウマチ治療において重要な位置を占めており、トシリズマブなどの抗IL-6受容体抗体が臨床で使用されています。IL-6は関節破壊、パンヌス形成、急性期タンパク産生などRA患者に見られる多くの症状を説明できることから、治療標的として非常に有効です。
インターロイキン阻害薬として、ステラーラ(ウステキヌマブ)などのIL-12/23阻害薬も乾癬や炎症性腸疾患の治療に使用されています。
可溶性IL-2受容体(sIL-2R)は悪性リンパ腫の診断補助や治療効果判定に用いられ、血球貪食症候群の診断指標としても重要です。
参考)https://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/190.html
また、IL-1受容体拮抗薬であるアナキンラは、IL-1受容体拮抗分子欠損症(DIRA)の治療において唯一効果のある治療法とされています。
インターロイキン異常と関連疾患
インターロイキンの産生異常や機能異常は、様々な疾患の原因となります。IL-1受容体拮抗分子欠損症は、IL-1RN遺伝子の機能喪失型変異により、IL-1シグナルの抑制機構が障害され、過剰な炎症が生じる稀な自己炎症性疾患です。
参考)インターロイキンⅠ受容体拮抗分子欠損症 概要 – 小児慢性特…
この疾患では膿疱症、骨髄炎、骨膜炎が主症状となり、常染色体劣性遺伝形式をとります。全世界でも10例程度の報告しかない非常に稀な疾患ですが、アナキンラによる治療で症状のコントロールが可能です。
IL-6の過剰産生は関節リウマチだけでなく、多くの自己免疫疾患や炎症性疾患に関与しています。IL-6濃度と病態の活動性が相関することから、疾患活動性のモニタリングに有用です。
IL-17は炎症性サイトカインの産生を誘導しますが、一方でがん細胞の血管新生誘導や腫瘍細胞の生存促進にも作用することが報告されており、がんの進行にも関与する可能性があります。
血球貪食症候群では可溶性IL-2受容体が著明に高値を示し、血球減少の鑑別診断において重要な指標となります。また、各種感染症やウイルス感染、自己免疫疾患でもsIL-2Rの上昇が見られます。
インターロイキン欠乏症の臨床的意義
インターロイキンの欠乏や機能不全は、免疫不全状態を引き起こす可能性があります。特に原発性免疫不全症候群では、特定のインターロイキンの産生異常や受容体異常が関与することがあります。
IL-7は免疫細胞の生存、分化、恒常性の維持に関与し、B細胞、T細胞、NK細胞の発達に重要な役割を果たします。IL-7の欠乏は重篤な免疫不全を引き起こす可能性があります。
IL-10は抗炎症作用を持つサイトカインで、Th1サイトカインの産生を阻害する作用があります。IL-10の機能異常は慢性炎症の持続や自己免疫疾患の発症に関与する可能性があります。
IL-12はNK細胞を刺激し、分化を誘導する重要なサイトカインです。IL-12の欠乏は細胞性免疫の低下を引き起こし、特に細胞内寄生菌に対する感受性が高まります。
IL-15は末梢血単球と上皮細胞から分泌され、キラーT細胞の活性化とB細胞の増殖・分化誘導に関与します。IL-15の異常は免疫監視機能の低下につながる可能性があります。
これらの欠乏症の理解は、適切な診断と治療法の選択において重要であり、将来的にはインターロイキン補充療法の開発も期待されています。現在の医療技術では限定的な応用にとどまっていますが、細胞工学や基礎研究の進歩により、より安全で効果的な治療法の開発が進められています。