保険診療と自由診療の同日併用について

保険診療と自由診療の同日併用

保険診療と自由診療の同日併用の基本知識
📋

混合診療の禁止原則

同一患者の同一治療過程において保険診療と自由診療の併用は原則禁止

⚖️

法的根拠と療養担当規則

健康保険法86条と療養担当規則に基づく医療機関の義務と制限事項

🏥

例外的な併用制度

保険外併用療養費制度における先進医療と選定療養の特例措置

保険診療と自由診療の同日併用が禁止される理由

保険診療と自由診療を同日に同一医療機関で受けることは、健康保険法と療養担当規則により厳格に禁止されています。この規制は「混合診療の禁止」として知られ、患者の経済的公平性と保険財政の維持を目的としています。

参考)[7] 保険外の患者負担について

同日に両方の診療を受けた場合、本来保険適用される部分も含めて全額が自由診療扱いとなり、患者は治療費の全額を自己負担しなければなりません。例えば、風邪の診療(保険診療)と美容施術(自由診療)を同日に受けると、風邪の診療費も保険適用外となってしまいます。

参考)自由診療|かとう皮フ科クリニック|滋賀県栗東市の皮膚科

この制度の背景には、保険制度の公平性を保つという重要な理念があります。同一医療機関内で保険診療の基本診療料(初診料、再診料)は算定できず、自費診療の診察料に含まれると解釈されます。

参考)B01.美容医療における医師法・薬機法の実務知識と規制解説 …

💡 重要なポイント:別日であっても、同一疾患に対して保険診療と自由診療を行うことは法的に禁止されています。

参考)保険診療と自由診療の違いとは?保険が適用される条件を解説

保険診療における療養担当規則の法的根拠

療養担当規則は健康保険法第70条第1項および第72条に基づき、保険医療機関と保険医が療養の給付や健康保険の診療にあたる際の一定のルールを定めた厚生労働省令です。この規則は保険診療の適正な実施を確保し、健康保険事業の健全な運営を維持することを目的としています。

参考)【Ihref=”https://www.ikedasomeya.com/insight/9519″ target=”_blank” rel=”noopener”>https://www.ikedasomeya.com/insight/9519amp;S インサイト】療養担当規則における経済上の利益提供等…

健康保険法第86条は、保険外併用療養費制度について規定しており、評価療養や選定療養に該当しない場合については保険給付が行われないことを明確に定めています。この条項は、混合診療禁止の反対解釈の根拠として重要な役割を果たしています。

参考)https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/committee2/131119/item1-2.pdf

療養担当規則における経済上の利益提供の禁止(第2条の4の2)も、保険診療の公正性を保つ重要な規定です。保険医療機関は患者が自由に選択できるものである必要があり、金銭的な誘引によって患者の選択が歪められることを防ぐ目的があります。
📊 法的構造:混合診療禁止には明示的な法律規定は存在せず、健康保険法第86条の反対解釈と療養担当規則によって導かれています。

参考)http://www.jmari.med.or.jp/download/RP015/RP015-3.pdf

保険診療における先進医療と保険外併用療養費制度

保険外併用療養費制度は、厚生労働大臣が定める「評価療養」「患者申出療養」「選定療養」に限り、例外的に混合診療を認める制度です。この制度により、保険診療部分については通常の保険給付を受けながら、特別な医療サービス部分のみを全額自己負担することが可能になります。

参考)保険診療と自由診療を併用できるとき

先進医療は評価療養の代表例で、将来的な保険収載を見据えた高度な医療技術です。厚生労働省が定めた基準を満たした医療機関でのみ実施可能で、先進医療の技術費は全額自己負担となりますが、一般の治療と共通する部分は保険適用されます。

参考)差額負担の医療を受けるとき | カゴメ健康保険組合

選定療養には差額ベッド代、200床以上の病院での紹介状なしの受診、歯科での金合金使用などが含まれます。これらは患者の選択による特別なサービスで、保険導入を前提としない療養として位置づけられています。

参考)差額負担の医療を受けるとき

🏥 実務上の注意点:2024年10月からは、後発医薬品のある先発医薬品の選定についても選定療養の対象となり、差額の1/4が自己負担となります。

参考)長期収載品の選定療養費について|奈良県立医科大学附属病院

保険診療と自由診療の疾患別対応と切り替え制約

同一疾患に対する保険診療から自由診療への切り替えは、極めて厳格な制限があります。一度保険診療で診療を開始した疾患について、後から自由診療に変更すると、初診にさかのぼって全てが自由診療扱いとなる場合があります。
別々の疾患であっても、同日に同一医療機関で保険診療と自由診療を受けることは原則として認められていません。ただし、健康診断(自由診療)で病気が発見され、その治療を保険診療で行うケースのように、予防から治療への移行は例外的に認められる場合があります。
美容医療分野では特に注意が必要で、保険診療の皮膚疾患治療と自由診療の美容施術を同日に行うことは混合診療に該当します。美容医療は基本的に保険適用外であり、同一治療過程での併用は厳格に禁止されています。
⚠️ 臨床での実践:医療機関は事前に患者に対し、保険診療と自由診療の区別を明確に説明し、同意書の取得が重要です。

参考)X

保険診療制度における医療機関の義務と患者への影響

医療機関は療養担当規則により、患者から療養の給付を求められた場合、保険証の確認と適切な診療の提供が義務づけられています。混合診療を意図的に行った場合は法律違反となり、保険医療機関の指定取消しなどの行政処分の対象となる可能性があります。

参考)混合診療の禁止について

患者への経済的影響も深刻で、混合診療となった場合は高額療養費制度や各種給付金の利用ができなくなります。保険診療で本来3割負担となる部分も全額自己負担となるため、予想外の経済的負担が発生するリスクがあります。

参考)自由診療とは?保険診療との違いを解説│記事│オンライン診療・…

医療機関側には適切な情報提供義務があり、保険診療と自由診療の適用範囲、費用負担の違いを患者に十分説明する必要があります。特に美容医療や先進医療を提供する医療機関では、混合診療のリスクについて事前の説明と同意取得が不可欠です。
📝 実務対応:医療機関は保険診療と自由診療を明確に分離し、患者が適切な選択をできるよう情報提供体制を整備することが重要です。